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新しい学習指導要領が公開され、23日には文部科学省から教科書の改善についての報告が発表されました。
教科書は、文部科学大臣によって、2年後に使用されるものが教科用図書検定(以下教科書検定)で審査されます。中学校の教科書においては、2021年から使用される教科書が新指導要領に沿ったものになっていなければならず、2019年に行われる教科書検定から、新指導要領の内容に沿った教科書となっているかの観点で審査されることになります。
新指導要領を受けて作り直された教科書は、どのような内容を含んでおり、新教科書を扱う側は、どのような心づもりをしておけばよいのでしょうか。
今までとこれからの教科書の違い
現在使用されている教科書は、ほとんどが民間の教科書会社によって作られています。これは、民間の会社が作成にあたることで各社の創意工夫がなされ、より児童や生徒のためになる教科書作りが行われることを期待したものです。これまでの指導要領では「何を学ぶか」という学びの内容が改訂の中心であったため、各社内容に創意工夫を重ねてきました。
しかし、次期指導要領では「何を学ぶか」の見直しに加えて「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」まで踏み込んでいます。特に「どのように学ぶか」に重きを置いて学びの質を高める必要があると述べられており、理解し蓄える知識を提示するものではなく、自分なりの咀嚼の仕方を身につけさせるためのものとして、教科書は重要な位置を占めるようになります。そのため、各社学びの手法に違いが出てくることが予想されます。
質の高い学びとは、内容を深く理解し、資質・能力を身につけ、生涯能動的に学び続ける姿勢の根幹となるような学びのことを指します。最近耳にすることの多くなった「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の三つの視点
1.学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」ができているか。
2.子ども同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
3.習得・活用・探求という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。
をもって行われる授業によって、質の高い学びを実現しようとしています。
今後求められる指導の仕方
これらを通して、教科書を最初から最後まで扱うという範囲には収まらない学びが求められていると読み取れます。
また、デジタル教科書も近年注目されてきていますが、文科省ではあくまで教科書検定を経た紙の内容をそのままデジタルに落とし込むことを想定しており、デジタル故にコンテンツが変わるというわけではないことにも注意が必要です。
次期学習指導要領を反映した教科書自体が「主体的・対話的で深い学び」に対応するものになるのはもちろんのことですが、教科書が児童や生徒にとって与えられたものである以上、次につなげる・考えを広げ深める・関連付けるという視点をもって学ぶには、教科書以外の様々な教材との組み合わせが重要になってきます。
関連付けさせる資料を教科書と別途提示するのは容易ではないですが「これを覚えて大人になったとき何の役に立つの?」という疑問を、児童・生徒が抱えなくなる一助になっていくのではないでしょうか。