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新学習指導要領(案)中学校社会科の注目ポイント
教育zine編集部木本
2017/3/10 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

 新しい学習指導要領(案)が公開されました。

 社会科は中教審の答申を踏まえて、「社会的な見方・考え方」が教科横断的に強調されたことをはじめ、多くの変更箇所が見られます。内容に関しては、今改訂においても中学校の地理的分野の改訂幅が(教科書が二重給与された前回の改訂ほどではありませんが)最も大きいといえます。
 今回は、中学校社会科の地理的分野に絞って、主な改訂箇所を見ていきます。

現行版学習指導要領との時間数・項目の比較

 地理的分野は時間数が115単位時間に変更になりました。従来は120単位時間配当だったため、5単位時間少なくなっています(5時間分は歴史的分野へ)。
 この115単位時間で実施する項目は、現行版学習指導要領(以下、現行版)と比較すると以下のようになります。

項目比較図

※項目の移動を示す矢印や備考は、編集部が加筆しています。

大項目は「2つ」から「3つ」へ

 上記のように、冒頭に「世界と日本の地域構成」の大項目が追加され、これに伴って全体が再編成されています。
 ……お気づきの方も多いと思いますが、「世界と日本の地域構成」が冒頭に置かれたこの構成は、現行版の一つ前の、平成10年版学習指導要領(以下、平成10年度版)と同じです。

「時差」の学習は再び第1学年冒頭へ

 平成10年度版で、第1学年の冒頭に位置付けられていた「時差」の学習は、現行版への改訂に伴い、第1学年の終わり〜第2学年の初めの学習時期に変更されました。
 当時、数学の正負の数の学習との関連などから、第1学年冒頭での理解が難しく、地理嫌いを増やす原因になるという声を先生方からお聞きしていました。現行版での変更はそういった問題を解消するための措置であると捉えていましたが、今回は再び第1学年の初めに位置付けられることになりました。
 「時差」の学習は、現在でも生徒のつまずきが多い内容であることはよくお聞きします。今後、改めて指導の工夫が求められる箇所の一つになりそうです。

「世界の様々な地域の調査」はなくなった?

 現行版で位置付けられていた、いわゆる調査単元は「世界の様々な地域の調査」「身近な地域の調査」の2項目ありました。今回の改訂では、「地域調査の手法」「地域の在り方」がそれぞれ大項目「日本の様々な地域」に位置付けられ、いずれも従来の「身近な地域の調査」と同様に学校周辺地域が想定されていると読み取れます。
 あくまで項目上での話になりますが、平成10年度版から続いていた世界の地域調査に関する項目は、今改訂でなくなったといえます(実際には、現行版と同様に、「世界の諸地域」で主題を設けて追究したり、解決したりする学習が行われることになっています)。
 なお、今回の改訂に伴い、今後発行される教科書においては、小学校で一度学習している地形図に関する内容は、「日本の諸地域」の前に明確に位置付けられると考えられます。

「日本の諸地域」の考察の仕方は「7つ」から「5つ」へ

 「日本の諸地域」で用いる考察の仕方について、現行版と新学習指導要領(案)を比較すると、以下のようになります。

◆現行版学習指導要領
  (ア)自然環境 (イ)歴史的背景 (ウ)産業 (エ)環境問題や環境保全 
  (オ)人口や都市・村落 (カ)生活・文化 (キ)他地域との結び付き

※「○○を中核とした考察」の「○○」の部分を列挙

◆新学習指導要領(案)
  (1)自然環境 (2)人口や都市・村落 (3)産業
  (4)交通や通信 (5)その他の事象

※「○○を中核とした考察の仕方」の「○○」の部分を列挙

 内容の取り扱いには「(1)から(4)までの考察の仕方は、少なくとも1度は取り扱うこと」「(5)の考察の仕方は、様々な事象や事柄の中から取り上げる地域に応じた適切なものを適宜設定すること」と記載されています。
 今回、(1)から(4)までの考察の仕方の観点と、1つ前の中項目「日本の地域的特色と地域区分」で扱う内容が一致しているため、ここで学習した内容を踏まえながら主題を追究し、地域的特色をとらえることが目指されていることが読み取れます。
 削除された「歴史的背景」「環境問題や環境保全」「生活・文化」は、残されたものと比較すると、中核として考察したときに、やや地域的特色を見出しづらいものだった、といえそうです。削除されたこれらの内容は、新学習指導要領(案)の随所に散りばめられていることも読み取れます。

 今後、パブリックコメント後の追記・修正はあるのか、中学校学習指導要領解説でどのような具体例などが示されるのかが、引き続き注目されます。

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