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情報教育は「何を」「どうやって」教えるか―情報活用能力調査結果より
教育zine編集部中川
2015/3/31 掲載

 今月24日、文部科学省より、「情報活用能力調査」の結果が発表されました。
 これは、コンピュータを活用した情報活用能力を見ることを目的に、小学5年生・中学2年生それぞれ約3300人を対象に、平成25年10月〜平成26年1月にかけて実施された調査です。
 その結果によると、小学生は「情報を整理し,解釈することや受け手の状況に応じて情報発信すること」、中学生は「複数ウェブページの情報を整理・解釈することや,受け手の状況に応じて情報発信すること」、また小中学生ともに、「複数のウェブページから目的に応じて,特定の情報を見つけ出し,関連付けること」が苦手となっています。
 実際に出題された問題や課題について、詳しく見ていくことにしましょう。

情報活用能力とは

 そもそも「情報活用能力」として、どのような力を身に付けることが求められているのでしょうか。
 平成22年10月に文部科学省が作成した「教育の情報化に関する手引」では、情報教育の目標として、以下の3つの観点を挙げ、これらをバランスよく身に付けることが重要だと述べています。

A 情報活用の実践力
 課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情
 報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏
 まえて発信・伝達できる能力

B 情報の科学的な理解
 情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱った
 り,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解

C 情報社会に参画する態度
 社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響
 を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望ま
 しい情報社会の創造に参画しようとする態度

適切な情報収集・判断の方法、情報技術の理解から、情報モラルの育成まで、多岐にわたることが分かります。これらの3つの観点は、現行学習指導要領にも反映されているものです。

実際の問題例を見てみると…

 それでは、今回の調査の実際の問題例を見てみましょう。

 これは特に正答率の低かった、情報手段の活用、必要な情報の収集・読み取りを求められる問題です。(小学生の正答率9.7%)
 この問題を解くには、まず人物の会話から「問題となるごみは、プラスチック製品だがマークがないこと」を読み取った上で、リンク先のホームページから「プラスチック製容器・包装」のページにたどり着き、そこに注意書きとして書かれている「マークがないプラスチック製品はリサイクルできないので、<燃やすごみ>として集めます」という記述に気付き、燃やすごみの収集日を答える必要があります。前提を把握した上で、細かい注意書きにも目を配る必要があり、大人でも難しく感じる人もいるでしょう。
 その他、掲示板やブログのメリット・リスクを問う問題や、不正請求のメールへの対応を問う問題などもあり、より実生活に即した問題が出題されています。
 こうした問題が出題されるということは、これらの問題で問われる力を、普段の授業を通じて身に付けさせたいと考えられている、と言えます。

「情報活用能力」を育てる授業と実態

 こうした情報を活用する力は、現在学校教育のどの授業で教えられることになっているのでしょうか。
 平成20年に告示された学習指導要領では、コンピュータの基本操作・活用と情報モラルについては各教科で(情報モラルについては道徳でも)、情報の収集や発信の仕方については総合的な学習の時間で教えることとなっており、また中学では、情報技術やデジタル作品の制作等について、技術・家庭で教えることになっています。
 しかしながら、例えば中学の技術の教科書を見てみても、先述のような「ホームページから必要な情報を集めるにはどうしたらよいのか」や「ブログやメールでのトラブルに対し、具体的にどのような対応をしたらよいのか」等についての記述は多くなく、教える教員の裁量に委ねられている部分が大きいように思われます。
 また、同時に教員向けに行われた調査では、「情報活用能力を育成する授業を週1回以上行っている教員は、小中合わせて1割以下」という結果となっており、指導に時間をかけられていない現実もうかがえます。
 情報技術は日々進歩しており、どこまで何を教えるべきか判断が難しいところもありますが、教える内容・時間がより具体的に示されること、またそれらの指導を助ける教科書・教材が充実することが、さらなる情報活用能力の育成に不可欠と言えるのではないでしょうか。

 今回の調査は、情報活用能力を見る初の試みです。調査方法や今回の結果をどう活用していくかなど、今後の推移を見守っていきたいと思います。

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