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大学入試のこれまでとこれから―試行錯誤の入試史
教育zine編集部菊地
2015/1/31 掲載

 1月17日・18日に平成27年度大学入試センター試験が行われ、約50万人の受験者が挑みました。
 センター試験といえば、これに代わる新しいテストの導入が提言され、話題の渦中にあります。今回は、大学入試の変遷と今後についてまとめました。

一期校・二期校時代
 一期校・二期校とは、1949年〜1978年まで実施されていた入試制度における国立大学の区分です。この頃は、現在のセンター試験にあたる試験は存在せず、各大学が、独自の入学試験を設けていました。
 大学は文部科学省により「一期校」と「二期校」の2つに分けられ、3月上旬に一期校の試験、3月下旬に二期校の試験が実施されました。受験のチャンスを2度設け、大学進学者の間口を広げることが目的でした。
 しかし、各大学独自の入試では、高校教育の範疇を超えた難問が出題されることがしばしばあったといわれています。また、一期校が本命、二期校が滑り止めとなりがちになり、大学の序列化を招いているとの批判が上がりました。

共通一次試験時代
 そんな問題点を解決しようと考え出されたのが、現在のセンター試験の前身となる「大学共通第一次学力試験」です。1979年から実施されました。
 一期校と二期校の区分は廃止。各大学が独自で設ける試験に先立ち,すべての国立大学で、同日に同一問題で試験が行われました。的確に基礎学力をはかる良問を厳選し、共通試験と大学独自の試験の2段階受験とすることで、一発勝負で偏った、従来の入試からの脱却を目指したのです。
 しかし、共通一次試験で失敗すると、各大学の二次試験までたどり着くことなく足切りとなってしまいました。これが受験戦争を更に加熱させたといわれ、改善が求められるようになります。

大学入試センター試験
 その後、共通一次試験を改善する形で1990年から導入されたのが、現在の「大学入試センター試験」です。
 共通一次試験との違いは、各大学が利用教科・科目数を自由に設定できる点、
私立大学も加わった点です。試験を課す側も受ける側も、流動的に試験の結果を利用できるようになったのです。
 しかし近年では、センター試験だけで入学できる大学が増えるなど、「センター試験さえクリアすればよい」という様相を呈し始めました。真の学力を養うための高校教育に、悪い影響を与えているとの意見が上がっています。

大学入試のこれから
 この現状を受け、2013年、教育再生実行会議は、センター試験に代わる「達成度テスト(仮)」の導入を提言。入試を「基礎レベル」と「発展レベル」に分けるしくみですが、特徴的なのは「基礎レベル」の試験です。
 文部科学省の「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)案」によると、

・高校2・3年生を対象に、年2〜3回の実施を検討
・外部試験や検定、各種コンクール等による評価の活用を検討

とあります。
 受験するのは3年生だけという常識を覆し、日々の生徒の努力を評価していこうという考えがみてとれます。たった一度、本番の試験さえできればよいという入試制度の問題点を根本から解決しようとしているのです。
 現在、平成33年度入試からの実施を目指して議論が進んでいます。今後どう具体化されていくか、注目です。

 こうしてみると、大学入試がさまざまな試行錯誤をくり返して来たことがわかります。現在、大学の卒業要件の改革も進められていますから、大学入試、ひいては日本の教育がこれからどう変わっていくのか、状況を見守っていきたいと思います。

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