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財務省と文部科学省の見解から見る少人数学級政策
教育zine編集部木下
2014/12/31 掲載

 財務省は、2015年予算編成で、現在公立小学校1年生で行っている1学級あたりの人数の上限を35人から40人に戻し、クラス数を削減する提案をしました。小学校1年生の35人学級に効果がないと判断したためです。その根拠として、財務省は、小学校の問題行動発生件数における小学校1年生の割合が減少したとはいえないことや、少人数制度によって学力が向上したとはいえない状況を指摘しています。
 また財務省は、1クラスの人数を40人に戻した場合、教員数4000人、約86億円の経費削減につながるとしています。そしてその分の経費を幼児教育の無償化など他の政策に充てるべきと主張しています。
 これに対し、文部科学省をはじめ、各方面から批判が相次ぎました。その結果、財務省は当初の案を撤回する見込みです。

少人数学級をめぐる変遷
 1学級あたりの人数の上限は、義務教育標準法で定められています。公立小学校1年生の1学級の上限が35人となったのは、2011年のことです。1980年に45人から40人に引き下げられて以来の変更でした。さらに、上限人数にこだわることなく、それぞれの地域の実情にあわせて人数を決定することができるという、柔軟な対応が認められています。

少人数学級推進の背景
 少人数教育が推し進められている背景には、教師の負担の増加により、教育の質が保たれなくなるのではという懸念があります。
 新学習指導要領実施による授業時数や指導内容の増加、生徒指導や保護者への対応の増加、特別な配慮が必要な児童生徒の増加などにより、近年の教師の忙しさは増す一方です。教師の1か月あたりの残業時間は、1966年では約8時間ですが、2006年では約42時間と大幅に増加。教師の多忙化をうかがわせます。
 また、日本の1学級あたりの人数は、OECD加盟国に比べて、多いという現状も指摘されています。2010年の調査では、OECD平均が小学校で21.6人、中学校で23.7人なのに対して、日本では小学校で28.0人、中学校で33.0人とどちらも平均を大きく上回っています。1学級あたりの人数が多いということは、教師1人あたりの受け持つ児童生徒の数が多いということ。OECD加盟国の教師よりも日本の教師は、多忙であるといえるかもしれません。

少人数学級の効果とは
 文部科学省は、少人数学級により教師と児童生徒との関わり合いが密になり、指導が行き届くことで、教育の質が向上するとしています。具体的な効果として、以下が挙げられています。

・ひとりひとりの理解度や興味・関心を踏まえたきめ細やかな学習指導
・児童生徒の発言・発表機会が増え授業参加がより積極化
・教室にゆとりが生じ様々な教育活動が可能に
・教員と児童生徒との間の関係がより緊密化
・子どもたちが抱える生徒指導上の課題に即した個別指導の充実
・幼稚園から小学校への円滑な移行により小1プロブレムに対応

 少人数学級により、教師の負担が減ることは大きな意味があります。教師にとっては、子どもたちひとりひとりに注目することができ、より細かな対応ができます。一方、子どもたちにとっても授業や学校生活により積極的にかかわっていくことができることが期待できます。
 しかしながら、上述の効果がはたして本当に発揮されるのか、あるいは発揮されないのかは、丁寧な検証が必要です。1学級の人数を減らしたからといって、それが学力の向上などと直結すると考えるのは安易です。教育の質の向上をなし得るのは制度ではなく、教師の力なのです。制度そのものの整備も大切ですが、それと並行して教師の育成も求められるのではないでしょうか。

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