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最新! いまどきの自由研究−ICT化による変化
教育zine編集部城野
2014/8/31 掲載

 夏休みの宿題といえば、自由研究。その名の通り、特定の教科に縛られず、自分の好きな事柄について調べたりまとめたり・・・と個人の興味や関心、個性が出る宿題の1つと言えるでしょう。観察や実験、身近のものを使った工作、調べ学習には新聞の記事を集めたり、図書館の本を調べたり・・・とご自身の経験がよみがえる方もいらっしゃるかもしれません。
 電子黒板やタブレット端末の導入など、近年教育現場でのICT(Information and Communication Technology)化が進む中、夏休みの自由研究にもその傾向がみられます。最先端技術に触れる小学生向けのワークショップが年々増えており、この夏も人気を集めました。実際に開催された企業訪問型のワークショップをいくつかご紹介しましょう。

◆ものづくり教室Qremo(クレモ)主催 「サマーラボ2014」
 「3Dプリンタでオリジナルフィギアをつくろう!」では、自分が描いたキャラクターが、ロープ状のプラスチック樹脂が溶けて重なり、立体になっていく様子を見ることができます。ipadを用いてキャラクターを3Dモデリングで作成し、3Dプリンタでフィギアとして作成するという「デジタルものづくり」。同教室では、はんだづけを用いた電子工作コース、レーザーカッターを使用したコースや、更には体験したものづくりをレポートにまとめるコースも開校しています。

◆富士通×近畿日本ツーリストグループのコラボレーション企画「夏休みに親子でパソコンを作って学ぶ!自分だけのパソコン組み立て体験!」
 既に今年で三回目となったこの企画は、富士通株式会社の技術者指導のもと、最新モデルのパソコンを親子で一緒に組み立てるというものです。わかりやすい解説を受けながら、普段は見ることのできないパソコンの中のつくりを知ることができると参加者からも好評です。受講を終えると修了証をもらえ、作成したパソコンは実際に持ち帰り使用することができ、さらには富士通株式会社で販売しているパソコンと同じサポートを受けることもできます。

 このような普段なかなか体験できない技術に「触れる」ワークショップのほかに、ICTそのものについて「考える」ワークショップも開催されました。

◆株式会社クレオテック主催「ICTを活用した新サービスを考えよう!」
 小中学生がICTを使った新たなサービスを企画するプロジェクト体験型のワークショップです。ICTって何だろう?と学ぶところからスタートし、具体的なサービス案を考え、そのニーズを調査します。チームで意見を出し合い、企画を練り、最終的にプレゼンまで行うという3日間のプログラムで構成されており、「どんなサービスがあると良いか?」という視点から、技術を活用する仕組みを創り出す体験ができます。このようなワークショップへの参加を通じ、視野を広げることができると良いなと思います。

 これまでご紹介したようなワークショップは、1つの明確なテーマが設定されており、そのテーマに沿って技術を体験したり、深く掘り下げて考える機会を得ることができます。一方で、自由研究でぶつかる壁の1つは、このテーマ設定にあるのではないかとも感じます。自らが興味を持っていることに対し自由研究のテーマを設定できることが望ましいですが、興味のある事柄とテーマの設定とをうまく結び付けることは簡単ではないようにも思います。インターネットがテレビや新聞と並ぶメディアとなって存在する今、一般企業が展開する自由研究お助けサイトが年々増えており、こうしたサイトをうまく活用することもICT活用の1つとなり得るでしょう。
 これらのサイトは、それぞれの企業の特色を生かしたアイデアが豊富で、自由研究へのヒントが満載です。特長としては、一度に得られる情報が多く、選択肢が多いことにあります。また、自宅で手軽に取り組めるものが多く取り上げられているので、何を調べて良いかわからないといった子が、「興味をもつ」ことや、あるいは「興味のあることに気付く」きっかけづくりに役立てられるのではないでしょうか。具体的にいくつかご紹介致しましょう。

◆キャノン株式会社特設サイト キャノンサイエンスラボキッズ
 カメラメーカーCANONのホームページには、多種多様な実験に関する豊富な情報がわかりやすく掲載されています。実験の目的から準備するもの、着眼点、まとめ方まで多くの写真とともに紹介されていて、注目すべきは、デジタルカメラを使った実験が数多く紹介されている点です。デジタルカメラは今や当たり前のもとなりましたが、こうした技術を用いて身近な実験を手軽に体験することができることができます。

◆サントリー特設サイト 水育キッズ
 飲料水メーカーのサントリーのホームページでは、水に関する実験が豊富に掲載されています。表面張力を利用したものや浮力を利用したものなど、水を通したさまざまな物理現象の実験が紹介されており、それぞれに関するテーマがレベル別に分類されていることが特長の1つです。実験結果から、「なぜそうなるのか」、「さらに実験をしてみると…」と1つの事象について深く掘り下げて考察することもできます。

 実際に、小学生の保護者を対象にしたアンケートで「自由研究の課題に何を参考にしたか」と尋ねたところ、インターネットを使って調べた情報(27.3%)という回答がもっとも多かったという結果が出ています。
 自由研究のテーマや内容、その取り組む手段は、科学技術の発達、インターネットの普及とともに大きく変化しつつありますが、普段の学習から離れ、自らが設定したテーマに沿って探求心を持ち学ぶことにその本来の意味があるのではないでしょうか。ワークショップへの参加が、そのきっかけの1つになるのではないかと思います。また、多くの情報が手軽に手に入るからこそ、自分にとって有用な情報を取捨選択し、興味・関心を深めることに役立てて欲しいと思います。

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