教育ニュース
文科省の報道発表から研究会参加ルポまで、知っておきたい色々なジャンルの教育情報&ニュースが読めます。
PISA好成績の一翼を担う? 全国学力テスト
教育zine編集部藤森
2014/4/30 掲載

PISAと日本の全国学力テスト

 1日、2012年に世界65か国を対象に実施された国際学習到達度調査(PISA)における「問題解決能力」の調査結果が公表されました。
 PISAは、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野において15歳児の能力をはかる学力調査です。今回は、2003年以来となる「問題解決能力」調査も実施され、44か国がコンピュータを使用した調査に参加しました。
 日本は、読解力8位→4位、数学的リテラシー9位→7位、科学的リテラシー5位→4位と前回の2009年調査から全分野で順位が上昇、問題解決能力においても2位に入るなど、喜ばしい結果となりました。
 そもそも2000年のPISAでは、日本は数学的リテラシーで1位、科学的リテラシーで2位に入るなど国際的に優位な立場に立っていました。しかしその喜びもつかの間、3年後のPISAでは大きく順位を落とし(=PISAショック)、当時の教育政策を見直すきっかけとなったわけです。

 学力向上にむけ様々な対策を講じた日本ですが、その一環として2007年から導入されたのが、ご存知「全国学力・学習到達度調(=全国学力テスト)」です。
 全国学力テストは、学校現場が生徒の学力を把握し、その具体的な対策を講じるきっかけとなりました。出題される問題も、PISAで問われるような身近な題材に絡めた知識応用問題が多く、PISAの模擬試験といった側面も持ちあわせているようです。
 全国学力テストを開始したH19〜H25の経年変化(「平成25年度全国学力・学習状況調査の結果」より)に目を向けてみると、全国の平均正答率に対してそれを大きく下回る都道府県数が減少し、全国平均との開きが小さくなっていることがわかります。
 そうした学力の底上げを受けてか、2012のPISAでは、順位の上昇に加えて、習熟度レベル下位層の割合の減少及び上位層の割合の増加が確認されました。このことからも、「全国学力テスト」が学力向上に一定の効果をもたらしたといってよいのではないでしょうか。

更なる学力向上をめざして? 「全国学力テスト」実施要領の変化

 国際学力調査とともに、毎年注目を集める「全国学力テスト」ですが、今年度も全国の小中学校で22日に一斉に実施され、約224万人の児童・生徒が数学と国語の問題に挑戦しました。
 なお、実施要領の見直しに伴い、今年度からは、教育委員会や各学校の判断に応じて成績の公表が可能となりました。これによって、実施要領における「調査結果の取扱いに関する配慮事項」が大幅に書き換えられたわけですが、ここでは注目すべきポイントを2点ご紹介したいと思います。

平成26年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領より 

  • 調査結果の公表を行う教育委員会又は学校においては、単に平均正答数や平均正答率などの数値のみの公表は行わず、調査結果について分析を行い、その分析結果を併せて公表すること。さらに、調査結果の分析を踏まえた今後の改善方策も速やかに示すこと。
  • (〜中略〜)平均正答数や平均正答率などの数値について一覧での公表やそれらの数値により順位を付した公表などは行わないこと。

 これを見ると、一言で「結果の公表」と言っても、多くの制約があることが分かります。
 分析や改善方策の提示が必要ということはあまり取り上げられていませんが、単なる情報公開で終わらず、「調査→分析→改善方策の検討→実行」という一連の行動が伴うようにとの、文科省の意図が含まれているように思います。 
 また、調査結果を公にすることによって、学校のレベルが露呈したり、学校間の行き過ぎた競争なされたりすることを懸念する声もありますが、文科省は上記のような公表ルールを設けるなどして、その点をクリアにしているようです。しかし、結果公表を受けて実際現場にどのような影響が出るかは、未知といっていいでしょう。
 
 この新たな取り組みによって、学力テストの結果に対する各地域・各学校の意識がより強くなることを期待したいものですが、図らずも次にPISAが行われるのは2015年。そのとき対象となる15歳児は、今回学力テストを受けた小学6年生にあたります。
 PISA2015では、こうした日本の取り組みに対する一定の成果現れるのではないでしょうか。

コメントの受付は終了しました。