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小中学校で、道徳が教科化? その課題と現状は
教育zine編集部花岡
2013/11/30 掲載

 11日、文部科学省(以下、文科省)の有識者会議にて、小中学校の道徳を教科化する報告案がまとめられました。どうやら、文科省は2015年度にも教科化する考えのようです。

なぜ、道徳が教科化されようとしているのか

 ご存じの通り、道徳教育は現在、学習指導要領で週1回の授業が義務づけられています。しかし、現場では実際のところ教科として位置づけられていないことからか、国語や算数などの他教科の補習に充てられることもあるようで、道徳教育として機能していない、などと指摘されているようです。このようなことを改善する目的で、道徳を他の“教科”と同様の扱いにするべく、今回の案があがりました。

 とはいっても、国語や算数などの“教科”とは少し異なるのが、今回の道徳の教科化案です。“教科”とは一般的に、免許を持った専門の教員(中学以上)が、教科書を用いて指導し、数値などによる評価を行うことが必要とされています。道徳においては、教えるのは今までと同様担任教師としますが、数値による成績評価は不適切とされ、記述による評価を検討しているようです。さらに、人の心に関する道徳というものに1つの決まった検定教科書がなじむのかという疑問も残っているようです。このように、通常の教科とは異なる枠組みになるため「特別の教科」(仮称)と位置づけられるとのことです。

道徳教育とは

 そもそも、道徳教育とはどういうことを勉強するものなのでしょうか。学習指導要領 第3章 道徳では、小中学校において指導する道徳の内容を、以下のように述べています。

1.「主として自分自身に関すること」
2.「主として他の人とのかかわりに関すること」
3.「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」
4.「主として集団や社会とのかかわりに関すること」

 少し抽象的でわかりにくいので、それぞれどういうことなのか、具体的に見てみましょう。
 
 1では主に、「望ましい生活習慣を身に付け」たり、「着実にやり抜く強い意志をもつ」こと、「自主的に考え、その結果に責任をもつ」こと、また「理想の実現を目指して自己の人生を切り拓いていく」ことなどが求められています。

 2では主に、「時と場に応じた適切な言動をとる」こと、「思いやりの心をもつ」こと、「友達の尊さを理解し、互いに励まし合い、高め合う」ことなどが求められています。

 3では主に、「かけがえのない自他の生命を尊重する」こと、「美しいものに感動する豊かな心をもち」、「人間として生きることに喜びを見いだす」ことなどが求められています。

 そして、4では主に、「差別や偏見のない社会」を実現すること、「協力してよりよい校風を樹立する」こと、「郷土の発展に努める」こと、「世界の平和と人類の幸福に貢献する」ことなどが求められています。

 なかなかどれも、当たり前といえば当たり前のことを言っているようですが、これを体系的に「教室で先生が教える」というのは、難しいことのように感じてしまいます。これらのことを学ぶ材料の1つとして、現在では、文科省より配布されている「心のノート」というものがあります。道徳が教科化され、検定教科書が発刊されるとしても、(検定作業に)まだ数年かかるため暫くはこの「心のノート」が教科書替わりとなる予定だそうです。

 では「心のノート」では、どのような切り口で上記のことを教えようとしているのでしょうか。

心のノート

 心のノートは、小学校の低中高学年用、中学校用の4種類ありますが、その中の中学校用について見ていきます。

 その中身は、例えば、今一番楽しいこと・感動したこと・目標にしたい人・自分の改めたいところ・将来の夢などの自我像を記入したり、昨年と比べて環境や暮らしがどう変わったか・またその心の変化を記入したり、友達のよいところを考え記入したり、と1つのテーマについて考え自分の言葉で記述する要素が沢山詰まっています。その他に、まわりの意見に流される自分がいないかどうか、物事を深く考えない自分がいないかどうかを考えさせたり、日常生活でのT.P.Oのずれた場面を考えさせたりとテーマは多岐にわたっています。また、人生や思いやり、かけがえのない生命などをテーマにした詩が掲載されていたりもします。

 単に、これらを読んだり、書き込んだり、先生からこうするように、と言われているだけでは、本来求められている「道徳」を学ぶのには、やや不足を感じてしまうように感じます。実際現場では、この「心のノート」だけを使っているわけではありません。では、実際どんな授業が行われているのか、見てみたいと思います。

道徳の授業例

 ここでは、新聞を活用するNIE(Newspaper In Education)と呼ばれる教育法を用いた道徳の授業例を2件ご紹介します。

 1件目は、宮城県の中学1年の授業。アフリカにて、学校にも行けず家族のために水運びをする少女の写真を生徒に見てもらい、この写真に対して、生徒たちに「どう思うか」を語ってもらう。色々な返答がある中「今学校に行ける環境がありがたい」という声も出てきます。しかし、ただこれで終わりではなく、更にこのテーマを通して、家族や友人に対して感謝の気持ちを伝えるカードを書く、というところまで発展させる授業のようです。

 2件目は、長崎県の小学4年の授業。電車とホームの間に落ちてしまった女性が、乗客や駅員の協力のもと、無事に助け出されたという新聞記事を児童に見てもらい、なぜ女性を助けたのかを考えてもらう。この問いを通して「命の尊さ」を考える、という授業のようです。

 どちらも蔑ろにはできない深いテーマであり、こういうことを考え続けるのは、小中学生に限らず大切なことと思います。

 道徳というのは、数学のように答えが1つに決まっているようなものではなく、100人いたら100通りの考えが出てくるような、とても繊細なものだと思います。だからこそ、ある程度の指針を掲げる必要もあり、かつ1つの概念に縛られない柔軟な教科書が求められるのかもしれません。先生は生徒に、何かに対して感じたことを教えることはできても、生徒自身が感じる心を教科書通りに教え育てることは、なかなかデリケートな問題のように、私は感じます。今後、この話がどう動くのか気になるところです。

特集 「特別の教科 道徳」
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