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今年の全国学力テスト どのような特徴があった?
教育zine編集部菊地
2013/9/30 掲載

 2013年度の「全国学力・学習状況調査」の結果が、8月27日に公表された。今回の調査方法と結果にはどんな特徴があったのか、あらためて考えてみたい。

調査方法ー全員調査の意図と注意点

 今回は4年ぶりの全員調査であった。
 民主党政権下で事業仕分けの対象となり、抽出調査とされていたこの調査だったが、自民党政権に戻ったことで、来年度以降も全員調査を続ける方針だ。
 全員調査にかかる費用は約60億円ともいわれ、各メディアでは否定派も多い。それでも文部科学省(以下、文科省)が全員調査を推し進める意図はどこにあるのだろうか。

 この調査で毎年好成績を残しているのが、秋田県・福井県である。
 文科省が発表している、両県の教育委員会・学校等に関する研究結果では、好成績の要因として、次の点を挙げている。(一部を抜粋)

  1. 教員の授業力向上に対する教育行政の積極的で計画的な指導や支援
  2. 学校の外部の組織・団体の積極的な働きかけと研究活動の推進
  3. 学校における管理職と教員の協力関係と教員全員の共通理解に基づく熱心な学習指導

 抽出調査では、当然ながら全学校に対して結果が出るわけではないため、仮に上記の点に問題のある学校があったとしても、その発見は困難である。
 一方、全員調査では成績優秀校・不振校が明確に分かるため、より有効な対策が可能になる。

 ただし、注意すべき点がある。成績のふるわない学校やその教員を批判したり、優劣をつけるようになってはならないと思う。
 ご存知の方も多いであろうが、今年度の学力調査で、「成績の悪かった学校の校長名を公表したい」と要望した県があった。今回は、文科省から県知事への忠告により、成績上位校の校長名の公表へと方向転換されたが、このように各学校、または個人レベルでの批判がされるようになってしまうと、過度の競争激化・人権侵害を招きかねない。
 このようなリスクを充分考慮した上で、今後も文科省・各教育委員会の慎重な対応を願いたい。

結果ー学力向上は実現したか

 文科省は、今回の結果に対し、最低平均正答率と全国平均との差は縮小傾向にあり、全体的な学力の底上げが実現したと、結論付けている。

 国立教育政策研究所発表の全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料では、高知県の改善の例が挙げられている。
 同県では、21年度までの調査では小学校・中学校の成績ともに全国平均を下回る結果となっていたが、今回は、小学校では全国平均を上回る、中学校では全国平均との差が縮まるという改善がみられた。
 ただし、もっとも注目すべきは、それを実現させた取り組みである。HPでは、それを次のように述べている。

  • 授業や家庭学習で活用できる教材(単元テスト・学習シート)の作成・配布
  • 放課後対策を充実し、補充学習を実施
  • 高知県版学力調査の実施(小4・5、中1・2)による授業改善等の効果の検証

 当然ながら、目指すべきは日本全国の児童生徒の学力の向上であり、成績不振県だけをターゲットとしているわけではない。
 今回の結果はゴールではない。上記のような有効な取り組みを共有し、全国津々浦々まで広めていくことが重要である。

 2007年から実施されている全国学力・学習状況調査であるが、調査方法や公開方法についての議論が絶えず、まだまだ実験段階であるともいえよう。日本の学力向上という第一の目的を忘れずに、長い目で行く末を見守っていきたい。

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