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再発を防ぐために―給食における食物アレルギー対策
教育zine編集部木下
2013/8/31 掲載

 東京都調布市の小学校で、昨年12月、食物アレルギーをもつ女子児童が給食を食べたあとにショック症状を起こして死亡する事故が起こりました。この事故を受けて、国や自治体は再発防止のための本格的な対策に乗り出しています。

食物アレルギーとは

 平成16年の文部科学省の調査では、小中高校生の有病率は2.6%。約33万人がなんらかの食物アレルギーを抱えているそうです。食物アレルギーとは、栄養分の中の特定の成分に対して身体が免疫反応を起こすというアレルギー症状の一つです。症状を起こす原因となる食品をアレルゲンといい、ごくわずかな量のアレルゲンでも反応を起こしてしまう恐れがあります。主な症状に、皮膚症状(蕁麻疹、湿疹)、消化器症状(下痢、嘔吐、便秘)、呼吸器症状(咳、喘鳴)などがあり、これらの症状が慢性的に、あるいは急性反応として表れます。

 特に注意が必要なのは、アナフィラキシーショックと呼ばれる症状です。この症状は食物を摂取後、数分〜30分で症状が表れ、反応が全身に及び、呼吸器や血液循環に重い症状が表れます。呼吸困難や意識障害を引き起こし、命の危険にさらされるケースも多く、迅速な対応が必要なのです。

 また、食物アレルギーであるかが簡単にわかる検査方法はなく、一人一人原因となる食品が異なることが厄介です。大人になってから発症するケースや、一人で数種類の食物にアレルギーをもつこともあります。

国の対策

 調布市での事故を受けて、文部科学省は、5月に「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置しました。7月29日には中間まとめが発表されています。この中間まとめでは、主に以下のような指針が示されました。

  • アレルギーをもつ子が他の子と同様に給食を楽しむことを目指す。
  • 学校、調理場の能力や環境に応じて対応給食を提供。
  • ガイドラインに基づくマニュアル作り。
  • 研修の実施。
  • 情報の共有(職員、保護者、学校医・主治医などの人間間と、幼保小中の学校間。)

 国では、今後会議を重ね、2014年3月に最終報告を取りまとめる予定です。また、全国の小中学校から500校を抽出し、給食でのアレルギーに対する対策などの実態を調査するそうです。

自治体での対策

 各地方自治体では、独自の対策を行っています。

 神奈川県では、教員に対して研修を実施。アナフィラキシーショックを起こした際に使用する「エピペン」(注射薬)の実技や、専門医による講義を行っています。一方、長崎県佐世保市の給食センターでは、アレルギー対策のための専用の調理室を設けています。この調理室でアレルギー物質を除いた給食をつくり、提供しているそうです。

 このように主な対策としては、原因となる食材を取り除く除去食や代替食、弁当の持参、そして教師に向けた講習などがあります。しかし、対策は自治体や学校により様々で差があるのが現状です。給食・食事は毎日欠かすことのできないものであり、児童生徒の実態把握や対策が十分でないと、命にかかわる事故につながってしまいます。

再発を防ぐために

 事故のあった調布市の教育委員会では、調布市食物アレルギー事故再発防止検討結果報告書を作成しています。その中で、今後の対策として、主に以下の事柄を挙げています。

  • 知識を正しく身に付ける。
  • 組織的な体制をつくる。(給食に関連する部署だけでなく、教師や保護者も連携。)
  • 確認漏れを防ぐ。原材料や献立の段階で、栄養士・調理員・保護者・教師のチェックを通すなど。
  • 施設や献立の見直し。

 事故を繰り返さないためには、正しい知識の習得、該当児童生徒への個々人の対応を検討など情報の共有と、複数の目によるチェックが欠かせません。
 しかし、実際に食事をする場である「教室」におけるチェック体制が最も重要です。いわば最後の砦となるのが教室なのです。ここで事故を防ぐためには、教師だけでなく、児童生徒の理解も必要です。そのために、日ごろから教師や児童生徒の知識を深めると同時にアレルギーをもつ子が給食の場を楽しめるように日常生活の中で教師や周りの児童生徒が一体となって協力する、そんな環境づくりが必要ではないでしょうか。

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