教育ニュース
文科省の報道発表から研究会参加ルポまで、知っておきたい色々なジャンルの教育情報&ニュースが読めます。
センター試験廃止に? 教育再生実行会議
教育zine編集部高柳
2013/6/30 掲載

 冬の風物詩になっていた「センター試験」が廃止されようとしています。

 6月6日、政府の教育再生実行会議で、大学入試センター試験の廃止と、新たな統一試験である「到達度テスト」(仮称)の導入についての議論がなされました。「到達度テスト」は、高校2年生から年に2〜3回実施され、その時点での到達度をはかるとともに、成績データを大学入試に活用することを想定しているそうです。従来の「一発勝負型」のセンター試験に代わり、学生の真の学力をつけるためのものとしての導入・実施が期待されます。

 「到達度テスト」は5年後をメドに導入を検討しているようで、「国際社会に通用するグローバルな人材を育てる」のがその狙いなのだとか。官邸のHPには、教育再生会議のページがあり、会議資料などが開示されていますが、この会議資料の中で興味深い資料があります。「中央教育審議会高大接続特別部会の審議状況等について(PDF)」の4ページめ、「高校における学習時間の減少のグラフ」です。

 これは高校生の学校外における平日の学習時間についての調査結果です。偏差値の高低に関わらず、H2年からH18年の間に学校外における平日の学習時間は年々減少しており、特に中間層(偏差値50〜55)の勉強時間は、H2年とH18年ではおよそ半分にまで減少していることがわかります。今年のセンター試験の国語の平均点が過去最低の5割を切った、と当時世間を賑わせたのは記憶に新しいですが、それもそのはず、今の高校生は勉強をしていないのです。

 こういった状況から、今回の到達度テスト案は、年2〜3回の統一テストを通じて高校生の勉強時間を増やし、学力の向上を狙う意図もあるのだと推測されます。確かに学力低下が叫ばれる昨今の状況下では、一理ある案です。

 センター試験のような一発勝負型の入試では、受験シーズンに知識だけを語呂合わせで詰め込むような無闇な勉強になりがちです。しかし「到達度テスト」とはその名の通り、ある時点での到達度を計るテストですので、その都度目標を持って勉強できます。年数回ごとの受験によって、勉強でもっとも基本的でもっとも大切な、知識を「積み重ねていく」ことが可能になりそうです。

 しかし、高校教育と大学入試の改革だけで、果たして学力向上と、「国際社会に通用するグローバルな人材の育成」の目的は達成されるのでしょうか。

 教育再生会議が提示する資料の中にもうひとつ、興味深い資料があります。日米の大学1年生を対象にした、1週間あたりの学校の授業以外での学修時間についての調査結果とその比較です。(5ページめ)

 アメリカではほぼ6割の学生が、1週間に11時間以上、授業に関連する学修をしています。しかし驚くべきことに、日本の大学生で11時間以上も学修しているのは全体の1.5割程度しかおらず、しかも全体の1割は、授業に関連する学修が「0時間」と回答しています。(アメリカで0時間と回答した生徒はわずか0.3%)日本の大学生も、いかに勉強していないかがよくわかります。

 “海外の大学では入学してから卒業するまでが大変、しかし日本の大学は、入学することが大変”とはよくいわれることです。つまり、学力低下の原因として、勉強せずとも卒業できてしまう、日本の大学にも問題はあるのではないでしょうか。仮に10年後、到達度テストが定着し、高校生が積み重ねの勉強をするようになったとしても、大学での教育が今のままでは、せっかくの到達度テスト制度も無駄になってしまいます。

 確かに今の大学入試制度は決して完璧とは言えません。このことについて議論することは大いに意義のあることですし、これからの国力を高める人材の確保は国として最重要課題ではあります。しかし、高校生をいかに勉強させるか、大学生になるにふさわしい学力を身に着けさせるか、の議論と並行して、大学の教育制度にももっと深く切り込む必要があるのではないでしょうか。

コメントの受付は終了しました。