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「教育再生3本の矢」提言案発案―英語教育のこれから
教育zine編集部腰塚
2013/3/31 掲載

 23日、自民党の教育再生実行本部が取りまとめた、教育改革の提言案が判明しました。実行本部は、その「3本の矢」として、(1)英語教育の抜本改革 (2)理数系教育の刷新 (3)情報通信技術(ICT)教育を挙げ、改革実現のために、「グローバル人材育成推進法」の策定を提唱しています。
 しかし、28日の同本部会合では、同提言案に異論が相次ぎ、予定していた同日の提言案了承を見送ったそうです。ここでは、3つの提言案のうち、特に賛否両論ある、英語教育の改革について確認してみましょう。

大学受験と卒業にTOEFLを利用―英語教育の抜本改革

 提言案では、「英語教育の抜本改革」としては、大学受験と卒業にTOEFLで一定以上の成績を求めることとしているようです。また、その基準は大学ごとに定めることとするほか、特に国際水準の研究を目指す大学を約30校指定し、TOEFLで7割以上の高得点を卒業条件とすることも盛り込まれているとのこと。

外部検定試験推奨の経緯

 実は、こういった提言は今回が初めてではありません。
 2010年11月に、「外国語能力の向上に関する検討会」が設置され、生徒の外国語能力の向上のため、目標設定のあり方、指導方法、教材のあり方などの方策について、検討が進められてきました。
 そして、2011年7月には、検討会の審議のまとめである「国際共通語としての英語向上のための5つの提言と具体的施策〜英語を学ぶ意欲と使う機会の充実を通じた確かなコミュニケーション能力の育成に向けて〜(PDF)」がとりまとめられました。

 その提言5では、

 大学においては、アドミッション・ポリシーのさらなる明確化を図り公表することが重要であり、それにより、小・中・高等学校と大学を貫く一貫した英語教育が可能となる。
 大学入試における英語試験の多くは、「話すこと」を含めたグローバル社会に通用する英語力を測るものに必ずしもなっていないとの指摘があり、学習指導要領に準拠して「聞くこと」「読むこと」といった受容技能だけでなく、「話すこと」「書くこと」といった発表技能も含めた4技能をバランスよく問うよう、入試問題を改善する必要がある。
 また、一部の大学では、AO入試においてTOEFL、TOEIC等の外部検定試験のスコアを所持していることを条件に外国語の試験を免除している。このような取組をさらに進めることが必要である。

としており、その具体的施策としては、2点を提案しています。

  • 国は、学習指導要領に準拠して「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」を総合的に問うタイプの入試問題の開発・実施を促す。
  • 国は、入学志願者の外国語コミュニケーション能力を適切に評価する観点から、AO入試・一般入試等におけるTOEFL、TOEIC等の外部検定試験の活用を促す。

 実行本部の提言も、こういった経緯を受けてのものとも考えられます。

外部検定試験 入試への利活用の現状

 実は、外部検定試験は、すでに一部の大学の入試で利活用され始めており、多くの高校や大学で、TOEICやTOEFL、英検などの外部検定試験で一定のスコア・資格を取得している生徒・学生に対して、優遇措置をとっています。

 英検公式ホームページによると、2012年度入試で英検による優遇措置をとった4年制大学は240校、短期大学は92校(※「公表可」としている学校のみ)にものぼっています。
 TOEICについても、TOEICテスト公式ホームページによると、2012年の入試では、4年制大学で290校、短期大学で80校が、AO入試や推薦入試等でTOEICを活用しています。
 TOEFLは、文部科学省が2012年6月に発表した「大学改革実行プラン(PDF)」で大学入試の改革に向けたTOEFLテストの活用・促進が謳われたことなどからも、教育現場における重要性が高まっていることがわかります。

外部検定試験 入試への利活用のこれから

 今回、受験生の英語力を測る指標としてTOEFLが選ばれたのは、英検は「実用的な英語技能の試験」、TOEICは「ビジネス英語の実力測定」という側面がある一方で、TOEFLは、英語圏(特に北米)の大学への留学・研究を希望する、英語を母国語としない外国人を主な対象とした英語能力測定テストであり、「(大学の)授業を英語で受けられるだけの能力があるかどうかを判定する」ことができるからかもしれません。

 一方で、28日の同本部会合で出された反対意見の理由は、TOEFLが、アメリカの非営利団体が運営している試験であることであるとの報道もあります。また、TOEIC導入推進派からも、「入試では(必須条件ではなく)選択肢にするべきだ」との声もあがっているようです。

 賛否両論ある、大学入試への外部検定試験の導入。実現までには、政府の教育再生実行会議との調整など、まだまだ課題は残されています。しかし、残りの「2本の矢」を含め、「教育改革」は、夏の参院選の公約にも反映されると見られるので、この先の同行に注目していくべき話題のひとつであることには違いありません。

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