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教育再生実行会議の課題―いじめや体罰による自殺を防げるか
教育zine編集部大矢
2013/1/31 掲載

 昨年12月の衆議院総選挙で自民党が政権与党となり、12月26日には第2次安倍内閣が発足した。自民党の政権公約には“教育再生”が一つの柱として大きく掲げられており、今月15日には、安倍首相率いる「教育再生実行会議」の設置が決まり、24日には有識者15人による初会合が開かれた。

 そんな中、教育に関するニュースで記憶に新しいのは、昨年末、大阪府でバスケットボール部の男子生徒が顧問からの体罰を苦に自殺した問題である。また、2011年滋賀県大津市で男子中学生がいじめにより自殺した問題は、メディアに大きく取り上げられ、議論になった。教育再生実行会議では、これらの問題はどう取り扱われるのか。

いじめ・体罰問題への対策が緊急課題

 安倍首相は「いじめ・体罰に起因して子供の尊い命が絶たれるなどといった痛ましい事案は断じて繰り返してはならない」と発言しており、教育再生実行会議では、これら体罰やいじめの問題が緊急の検討課題として取り上げられ、対策が議論される。自民党はこれらの問題を踏まえ、政権公約でも掲げている「いじめ防止対策基本法」の制定を目指しており、法案の骨子案によると、教諭による体罰もいじめに位置づけられる。骨子案をもとに、教育再生実行会議での議論を反映させた上で、最終案をまとめていく方針である。

いじめの防止・発見・解消の3本柱

 自民党総合政策集によると、いじめ問題に関する具体的な政策として、次のことが挙げられている。

  • いじめや不登校の解決のため、スクールカウンセラーの充実等、問題を早期に発見し、適切に対応できる体制をつくる。
  • いじめを繰り返す児童生徒への出席停止処分や、行為が犯罪に該当する場合は警察に通報する(いじめと犯罪の明確な区別)、道徳教育の徹底など、今すぐできる対策を断行する。
  • 全都道府県や全市区町村において「いじめ防止条約」を制定する、いじめ対策アドバイザーを設置するなど、統合的ないじめ対策を行うとともに、いじめ対策に取り組む自治体を、国が財政面などで協力に支援する。

以上から、いじめの防止・早期発見・解消のための取り組み、の3本柱でいじめ対策が行われていくことが期待される。また、特徴としては、行為が犯罪に該当するいじめに対する強い態度の表れや、自治体への支援を厚くする考えがとってみられる。

いじめによる自殺の現状は

 実際、教育再生実行会議で議論される「いじめ問題」と「児童生徒の自殺」はどのように結びついているのか。ここで、調査結果を見てみよう。昨年9月、文部科学省が発表した平成23年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果によると、平成23年度に自殺した児童生徒の数は200人に上り、前年度よりも28.2%増加しているとある。うち、いじめの問題を原因とするものが4件で全体の2%となっており、全体のうちに占める割合としては少なく見える。しかしながら、自殺の原因不明とされているものが115件で全体の57.5%にも上り、いじめと自殺の関係ははっきりしないというのが現状である。

教育再生実行会議に期待すること

 児童生徒の置かれている状況を知らないままでは、防ぎようがなく、これら自殺した原因が不明とされる57.5%の児童生徒の中には、いじめや体罰の問題が潜んでいるかもしれない。同じ調査の中で、いじめ発見のきっかけについてもまとめられている。多い順に、アンケート調査など学校の取り組みによる発見が28.3%、本人からの訴えが23.4%、そして学級担任による発見が18.1%となっている。この結果から、アンケートなどの積極的な取り組みや、本人が訴えることではじめて、いじめが発覚するケースが多く、周りが気づくことの難しさが伺える。児童生徒が持っていた悩みの原因が、命を絶つ前に少しでもわかっていたならば、解決する方法があったかもしれない。そう考えると、児童生徒の悩みに気づき、周りがいじめを早期に認識するための制度作りが問題解決への第一歩であり、現状として最も大切なことではないかと感じる。

 いじめの早期発見については、先に述べた自民党の総合政策集でも述べられており、教育再生実行会議には、潜在的ないじめや体罰の問題をいち早く発見できるような制度づくりを期待する。教育再生実行会議の設置によって、いじめ問題への取り組みがどのように変わっていくのかをしっかり見守りたい。

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