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見送られた全国学力・学習状況調査をどう生かす? 
教育zine編集部
2011/9/29 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

 文部科学省は9月15日、「平成23年度 全国学力・学習状況調査の問題冊子等の配布について」を公表しました。これは、東日本大震災の影響により、5月26日に発表された「平成23年度全国学力・学習状況調査について」(文部科学副大臣通知)

  • 今年度は、従前の全国学力・学習状況調査としての調査の実施を見送ること
  • 一方で、各教育委員会及び学校等における教育に関する検証改善サイクルの継続を支援するため、希望する教育委員会及び学校等に対して、国が作成した問題冊子等を9月下旬に配布すること

を受けたものです。

問題冊子等の配布状況は?

 問題冊子等は、9月26日〜30日までの間に配布されるとのことですが、配布を希望する学校の割合(希望率)は、以下の通りです(平成23年度は9月1日現在)。

配布希望率
小学校 中学校 小・中全体
平成23年度 77.6% 73.5% 76.2%
(参考:平成22年度) (72.8%) (75.0%) (73.5%)

 問題冊子等を調査として活用する予定の10道県(北海道・石川・福井・長野・和歌山・徳島・高知・福岡・佐賀・沖縄)に配慮し、問題の公表は10月17日を予定しており、また、問題冊子等の活用状況の把握のために、10月以降にアンケートによる情報収集を実施するそうです。

問題の活用状況は?

 学校現場での問題の活用状況としては、国立教育政策研究所が公表している「平成22年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」(PDF)によれば、小学校で98%、中学校で95%の学校が何らかの形(指導計画に反映、具体的な教育指導の改善に活用、調査対象学年・教科だけでなく学校全体で活用、調査問題を授業の中で活用、指導計画等の検討にあたり調査結果を参考にした)で調査の結果を活用しており、21年度から大きな変化は見られないとしています。これは、22年度から抽出調査になったとはいえ、今年度の配布希望状況からもわかるように、利用率の高さ・関心の高さを示しているものと考えられます。

 来年の24年度調査は、「理科」を追加した抽出調査及び希望利用方式となることを以前の教育ニュースでもお伝えした通りです。児童生徒や学校の負担増を懸念する意見に配慮し、3年に一度程度とする方針のようですが、この理科の実施状況次第で、「社会」や「英語」といった教科まで拡充するかどうかを改めて検討するとのこと。「数年に一度はきめ細かい調査を実施することを検討する必要」があるという指針も踏まえると、調査方式の改善・開発も課題といえそうです。

調査のさらなる活用を目指して

 当面、平成22年度調査と同様の調査方式を継続するとしている学力調査。8月17日には、全国的な学力調査に関する専門家会議についての概要が示されました。設置の趣旨は、以下の通りです。

 全国的な学力調査の結果を活用して、教育及び教育施策の成果や課題等を検証し、その改善を図るため、調査の実施方法や結果の専門的な分析及び活用の推進方策等について、専門家による検討を行う。

 この会議の下にワーキンググループを設置し、平成25年3月31日まで長期的な取り組みをすることで、学力調査のさらなる活用を見込んでいます。結果をどう見るか、ではなく、結果をどう使うか。今後数年間の取り組み方に、学力調査本来の意義が問われているように思います。

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