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文部科学省は4月28日の報道発表で、「教育の情報化ビジョン」を公表しました。このビジョンは、昨年4月に設置された「学校教育の情報化に関する懇談会」と、その下に設置された「学校教育の情報化に関する懇談会」と「教員支援」「情報活用能力」「デジタル教科書・教材、情報端末」の3つのワーキンググループの議論や、昨今の政府全体の動向などを踏まえて取りまとめられたもので、今後の学校教育(初等中等段階)の情報化に関する総合的な推進方策について検討したものとなっています。
新学習指導要領においても、児童生徒がコンピュータ等情報機器に親しみ、モラルを身につけてそれらを活用できるような配慮が求められています。今回発表された「教育の情報化ビジョン」の中では、それに加えて、教員の校務効率の改善を含めた以下の3点を通じて、教育の質の向上を目指すこととしています。
- 情報教育(子どもたちの情報活用能力の育成)
- 教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、分かりやすく深まる授業の実現等)
- 校務の情報化(教職員が情報通信技術を活用した情報共有によりきめ細かな指導を行うことや、公務の負担軽減等)
1. 情報教育(子どもたちの情報活用能力の育成)
ビジョンでは、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点を相互に関連付けて、バランスよく身に付けさせる必要があるとしています。現在、子どもたちの間にはすでに携帯電話やインターネットが身近な存在となり、活用されています。しかし一方で、インターネット上の犯罪や有害情報による被害、サイト上などでの特定の児童生徒に対する誹謗中傷やいじめが問題になっています。教育の情報化の上では、情報通信技術の使い方を身につけるだけでなく、様々な情報を主体的に収集し判断・処理する能力や、情報手段の特性や活用方法への理解、情報モラルやルールへの態度についても身につけることが求められています。
2. 教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、分かりやすく深まる授業の実現等)
ビジョンでは、デジタル教材・教科書、情報端末・デジタル機器・ネットワーク環境等の活用の可能性や今後の検討・研究の必要性をまとめています。様々な情報通信技術は、動画や音声等を駆使して児童生徒の興味を引き付けることができるなど、期待もありますが、これまでの紙の教科書や教材の良さもあり、どのように役割分担をしていくか、今後の検討が必要とされています。
3. 校務の情報化(教職員が情報通信技術を活用した情報共有によりきめ細かな指導を行うことや、校務の負担軽減等)
「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、2012年3月末時点における公立学校への校務用コンピュータ整備率は、教員1人1台に大きく近づきました。ビジョンでは、校務に関する必要な情報を共有することで校務の負担軽減を図り、その分の時間を子どもたちと向き合う時間などにあてることを述べています。校務支援システム機能の例として、通知表や指導要録などの校務文書の共有や二次利用、会議や研修に関する情報の関係者間の共有、家庭や地域への情報発信、休暇、出張等の服務に関する電子申請と電子決済等があげられています。
3月に起きた東日本大震災では、震災後に多くのデマや噂が飛び交い、ガソリンや食料品、水の買い占め等が起きるなど、被災地以外でも多くの混乱が起きました。多くの情報を適切に収集・判断し発信・伝達することの大切さを改めて感じた方も多かったのではないかと思います。
上に挙げた3点についても、情報化社会の動向を受けて学校が変革を求められており、動き出そうとしている方向と捉えることができるのではないでしょうか。様々な機器が発達し、すぐに情報にアクセスできる便利な時代だからこそ、その活用の光と闇に関して、きちんと向き合うことが求められているのですね。