QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり
教科化時代が来た! 新しい道徳授業の創り方を解説します。
QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり(16)
特別の教科 道徳の評価(3)
筑波大学附属小学校教諭加藤 宣行
2016/9/16 掲載
  • 「特別の教科 道徳」の授業づくり
  • 道徳

A先生

 道徳の評価について、次第にわかってきました。その上で、3つおたずねします。
 @「大くくり」「一定のまとまりの中で」評価するとはどういうことですか?
 A「多面的・多角的な思考の中で」どのように道徳的価値の理解を深めているかを評価せよとのことですが、そもそも「多面的・多角的」ってどういう観点ですか?
 B指導要録の行動の記録欄との違いは何ですか?

加藤先生からのアドバイス

 もっともな疑問ですね。改めて言葉の定義と、道徳での評価の特性について考えてみましょう。

解説

1 「大くくり」「一定のまとまりの中で」の評価

 これは、時間的な広がりと、内容の構造的な深まりという2つの観点で考えることができます。
 まず、時間的な広がり。つまり一単位時間内では見取れないものを複数時間扱いの中で見取ったり、学期ごとや年間を通して変容を捉えたりするものです。いわゆるプロセス評価ですね。
 次に、内容の構造的な深まり。これは、人を一内容項目で見るのではなく、人間のよさを構成しているのは内容項目の総体であるというとらえ方です。例えば、お年寄りに席を譲るという行動は、思いやりの心から生まれるものですが、それを行うためには勇気も必要でしょうし、礼儀正しさも要求されるかもしれません。そう考えると、内容項目は単体で成り立っているのではないということに気づきます。

 ただし、これらのことは、道徳の授業の中で何を学んだかという、一単位時間内の評価がきちんとなされる授業があってこそ成り立ちます。まずは一時間一時間の授業をしっかりと行いましょう。
 

2 「多面的・多角的」とは

 これは、はっきり申し上げて2つの間に明確な線引きはありません。便宜的な区別はいろいろ可能でしょうが、要するに「様々な観点から」ということです。具体的には、道徳性の向上を図るための観点として、次の3点を挙げたいと思います。
@その行為行動は他律的か自律的か
A「そうは言ってもできない」という「人間的な弱さ」は否定されるべきか
B教材に書かれていない世界をいかにみるか(みせるか)

@例えば、「きまりを守る」という行動規制も、「罰金から逃れるため」に行うのと「相手も自分も心地よさを得られるから」行うのとでは、その価値が全く違ってきます。
A「人間の弱さ」を全て否定してしまうと、誰もついて来れなくなります。「すごい人だね、だけど自分には無理」という思考回路が働いてしまったら、素晴らしい教材も台無しです。そうならないような、多様な読みが必要です。
B例えば、「この登場人物が今このようにいられるために、まわりにどんな人がいたか想像してごらん」と投げかけます。子どもたちは「きっと…」「ああ、ならばこういう人も…」というように、書かれていない世界にどんどん想像力を働かせていくことでしょう。

3 指導要録の行動の記録との違い

 指導要録の行動の記録の項目は、「基本的な生活習慣」等、確かに道徳の内容項目と合致するものが多いですね。行動は目に見える形で残された事実ですから、「何をしたか」「できるようになったか」という結果です。教師がとらえた事実を記録しているにすぎません。
 ただ、先に2−@でも述べたように、「きまりを守る」ことは、他律的にもできますし、自律的にも行うことができます。行動の記録はそのような「もとの心」までは言及しません。ですから、道徳の所見で、「そのような行為行動を生むもとにある心がどのように育ったか」を評価することが大切です。そうしないと、表面を取り繕うような行動を奨励することになってしまいます。

  • 毎時間の道徳授業をしっかりと行い、そのうえで「何を学んだか」「何を自らの生活に生かそうとしたか」「できるようになったことを受けて、何を感じたか」を評価しましょう。
  • 細かい文言の定義に惑わされず、子どもたちを育てる評価をしましょう。
  • 所見を書く以上、子どもたちを見取る手立てをきちんと取り、前向きな評価をしましょう。

加藤 宣行かとう のぶゆき

東京生まれ。
神奈川県津久井地区公立小学校教諭を経て、現在、筑波大学附属小学校(道徳部)教諭。
筑波大学・淑徳大学講師。

(構成:茅野)
特集 「特別の教科 道徳」
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