- 「特別の教科 道徳」の授業づくり
- 道徳
a先生
新学期が始まりました。道徳の教科化に向けて移行期間である今、授業開きに際してどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
加藤先生からのアドバイス
道徳教育は、教育活動全体で行う部分と、週1時間の授業で行う「道徳の時間」に分かれていました。教科になるということは、この週1時間の「道徳の時間」が、領域ではなくなるということです。「道徳科」になるわけですね。
教科となる以上、学習内容の定着が求められるわけですが、道徳の場合これがくせ者です。「価値の押しつけ」になってしまわないように、なおかつ、きちんと指導が通るようにしなければなりません。
そのために、「何を学んだのかを子ども自身がはっきりと言うことができる」ことをねらいとした授業設定が求められます。
解説
これまでの道徳授業は「何を言ってもよい」「多様な価値観を認める」ということを前提に、学習内容がはっきりしませんでした。教科ではなかった時代はそれでもなんとかやり過ごすことができましたが、これからは「何を学んだのか」を、指導者も学習者も明確に言えるようにする必要があります。
とは言っても、「1つの答えを全員で共通理解する」「無理矢理押しつける」「訓練して定着させる」「テストで定着度を確かめる」という性格のものではありません。
「今日は○○について話し合って、今までの考え方が180度変わった」
「親切というのは、○○ということがわかった」
というように、「○○について考えた」というような、子ども自らが学びを語ることができるようにするゴール設定が必要です。そのような授業にチャレンジするときの4つのポイントをお伝えします。
道徳科としての授業ポイント
@導入で、内容項目の本質的なことを問う
A授業内で、内容項目の「お決まりパターン的解釈」を一度崩す
B内容項目を子ども自身の言葉で再構築させる
C終末で、導入と同じ問いをして、どのくらい自分の解釈で言えるようになったかを自己評価させる
では、具体的場面でみていきましょう。
「正直・誠実、明朗」の内容項目の授業をイメージしながら説明します。
(「 」は教師の投げかけ・は子どもの反応)
@「正直という言葉は知っていますね。正直ってよいことですか」
・うん、もちろんよいことです。
「正直に言うって、どんなことを言うことでしょう」
・本当のことを言うこと。
・いけないことをしたときに「ごめんなさい」ってあやまること。
A「そうですね。よく知っていますね。でも、それだけなのかなあ。例えば、逆上がりができない子がいたとしますよ。その子に『きみ、鉄棒は上手ではないね』と言うことが、正直なこと、よいことなのですか」
・本当のことを言っているから、よいこと。
・いや、よくないんじゃないかな…。
・あれ?どういうこと???
B「では、今日のお話を読み、考えていきましょう」
(ここの詳しい展開・留意事項は次回説明します)
C「今日勉強したことで、『初めて気づいたこと』『いいなあと思ったこと』『これからやってみたいなあと思ったこと』を道徳ノートに書き、発表してください」
このような展開をすると、1年生の子どもでも次のようなまとめができるようになります。
今日は「正直」ってどういうことかについて考えました。はじめ私は「本当のことを言うこと」だと思っていました。けれど、授業をして、正直にはよい正直と悪い正直があることに気がつきました。自分のよい心に正直になって、友だちに話しかけられるようになるといいなあと思いました。正直をつかって友だちにやさしくできるやり方がわかったので、今日の帰りにいっしょに帰る○○さんに、(正直を)つかってみたいです。
子どもって面白いなあ、すごいなあと思うことは、いいと思ったらすぐに行動に移す素直さと実行力があるということです。授業できちんと考えさせれば、その成果は子ども自身が自らの行動で示してくれます。楽しみですね。「特別の教科 道徳」を子どもと一緒に楽しみましょう!
- 「何を言ってもいいよ」「そんな考え方もあるね」では終わらせない。
- 「何を学んだのか」を子どもの言葉ではっきりと書かせたり、言わせたりする。
- 教科になるからといって、価値の押しつけを「強化」しない。