- 「特別の教科 道徳」の授業づくり
- 道徳
A先生
最近、道徳ノートの実践報告を聞くようになりました。道徳が教科になるから他の教科と同じように道徳専用のノートを作った方がよいということでしょうか。それとも他の理由があるのでしょうか。
加藤先生からのアドバイス
結論から申し上げますと、道徳ノートは必要です。
教科になるからではなく、ノートの機能を生かすことで、道徳の学習効果がより一層高まるからです。私は十数年来道徳ノートを子どもたちに使わせていますが、様々なメリットを感じています。
解説
ノートの役割は一般的に次のようなものが考えられます。
●記録:学習内容のポイントをきちんと残しておけます。
●蓄積:既習事項の記録と積み重ねることで次へのステップがみえてきます。
●練習:練習とは、書くこと自体の練習だったり見やすくまとめる練習だったりします。
また、繰り返し書くことによる効果もあります。それは、見直しだったり、再確認だったり、自らの考えの整理だったりします。私は「練習問題を解く」という活動も道徳授業の中で行える、行う意味がある場合もあると考えます。
●発表:課題となるテーマについての考えや思ったことを書くことで、授業中に発言できなかったとしても、子どもたちにとっては自分の意見を表現したことになります。これも立派な発表です。
●思考:考えを文字にするという作業は、単に覚え書きというレベルではなく、思考の再構築を促し、新たな発想を生み出したり、「自分の考えていたことはそういうことだったのだ」と再発見があったりする、非常に重要な活動です。
●つなぎ:授業が終わったからといって学習が終わるわけではありません。むしろ、その後の自主的・自覚的な学習にどのようにつなげられるかが重要です。復習、予習という学習活動は、他教科では当たり前のように進められますが、道徳では聞いたことがありません。むしろ、「事前に教材を読ませておくなんて感動が薄れるからダメ」といった意識でしょう。
私は道徳でも宿題を出すべきだと思いますし、あらかじめ教材について考えてきてから授業でさらに考えることもありだと思います。なぜなら、「深く考えるに値する『問題(命題)』が、たった一時間の授業の中でそんなに簡単に解決するはずがない」からです。
こう言ってしまうと、「では、道徳の授業は必要ないのか」ということになってしまいますが、そうではありません。道徳の授業があるからこそ、考える主体である子どもたちが育ち、そのような子どもたちだからこそ、授業が終わっても考え続ける主体となり得るのです。そしてそのような子どもたちには、つなぎとしての記録媒体、つまり道徳ノートが必要になってくるのです。
●評価:教科化に伴い、どのような評価をするのが適切なのかが注目されています。当然のことながら、「評価のための評価」ではいけません。評価と指導は一体であるべきです。ここでも道徳ノートが力を発揮します。子どもたちの記述から、学びの成果、意識の変容、これからの実践意欲の高揚などを見取ることができます。そうすることによって、本時の手立ての有効性や課題を見直すことができます。これらがすべて評価といえます。
深く考える道徳授業をサポートする道徳ノートをつくるワンポイントアドバイス
では、どのようなことに留意してノートを活用させることが大切でしょうか。そのポイントを紹介します。
- 道徳ノートの役割を意識して、子どもたちの自由な発想を開花させるツールとして効果的に活用しましょう。
- 学習のポイントは明確に示し、最低限押さえるべきことはきちんと書かせる練習をさせましょう。
- 授業中だけでなく、授業後も自由に書きこみができるような「自由度のあるつなぐ」使わせ方をしましょう。