今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(9)
発表・話し合いの指導技術
原稿からスライドを作成し、それを見ながら発表する/話し合いをみんなで観察する
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2022/2/5 掲載

原稿の丸読みや丸暗記をやめさせるには?

 今月は、「話すこと・聞くこと」の指導技術についてご紹介しようと思います。
 
 まずは、発表についてです。
 ここでいう発表はスピーチなども含みます。発表を指導する際、陥りがちなのは、「原稿を丸読み」「丸暗記」です。

 前者がよくないのはすぐにお分かりいただけると思います。話をする相手の方を全く見ず、原稿をずっと見ながら話すことです。何も指導せずに子ども達に発表させると、十中八九この状態に陥ります。このような状態では、スピーチや発表などとは言い難いです。そもそも、原稿を書くのに時間をかけて、本番ではそれを丸読みするだけでは、その学習で育ったのは「話す力」ではなく、「書く力」である、とさえ言えるでしょう。
 一方、後者は原稿の丸読みを嫌った教師が、「原稿は持たずに話します」と指導した結果、子ども達は原稿を丸暗記して発表に臨む状態のことです。これは、一見、前者に比べれば遥かによさそうです。確かに、前者よりはいいのですが、結局原稿をそのまま機械的に覚えて人前で「再生」しているに過ぎないので、あまり「話す力」が育ったとは言いにくいでしょう。

これまでの国語授業

原稿を書くのに時間をかけて、本番ではそれを丸読みする

 やはり、話の要点を外さないようにしつつ、相手の様子を見て即興的に、一部分を強調したり、繰り返したり、反対に省略したりしていくのが、本当の「話す」力だと思います。

 そこで、発表やスピーチの単元では、原稿を作成させた後、それを教師がチェックしてOKになった子から原稿を読む練習をさせるのではなく、その概要を示すスライドを作成させます。スライドには、もちろん話す言葉をそのまま載せませんよね。箇条書きなどで要点だけ示していくことになります。
 そして、スライドを作成した後は、それを見ながら、相手にも見せて話す練習をさせます。つまり、概要だけを見て、あとは自分の言葉でその間を補いつつ話すようにしていくわけです。

国語科指導技術・ニューノーマル

原稿からスライドを作成し、それを見ながら発表する

 このように指導すると、原稿の丸読みや丸暗記ができなくなり、自分で次に何を話そうか頭を回転させながら、臨機応変に話していく力を伸ばすことができます。

ここがポイント!

  • 子供の思考を動かすためには仕掛けが必要だ!

クラスの話し合いを高めていくには?

 子ども達の話し合いを高めていくために、どのような指導技術を持っているでしょうか。
 「班で話し合いましょう」という指示。特に高学年では、多く使われます。
 しかし、安易に使ってしまうと、全然話し合いが成立していない班が続出します。
 例えば、一人一人がノートに書いたことを読み上げて発表していって、それに対する意見が全く出されず、すぐに終了してしまう班です。こういう班は、大抵ものの3分もしないうちに「先生、終わりました」なんて言ってきます。または一応話し終えたので、おしゃべりをしたり、遊んだりしてしまう班も出てきます。

これまでの国語授業

「班で話し合いましょう」とだけ指示を出す

 これは、どうすれば話し合いが充実するかを子ども達が分かっていないことに起因します。「やり方」が分からないのです。
 『文字化資料・振り返り活動でつくる小学校国語科「話し合い」の授業』(長崎伸仁監修、香月正登・上山伸幸編著、国語教育探究の会著/明治図書)では、子どもたちの話し合いを文字化した資料などから、話し合いの「やり方」(コツ)を、子どもたち自身に発見させていくというユニークな実践等が紹介されています。

 私は、同書の考え方を援用し、代表者の話し合いをみんなで客観的に見て、よいところや課題を出し合い、自分たちの話し合いに生かしていくという活動を考えました。普段話し合いをしていてなかなか気付けないことにも、見ることに専念すれば気付けるものです。話し合いの「やり方」(コツ)に気付いていくと、無意識だった話し合いを意識的に行うようになり、非常に実のあるものになります。

国語科指導技術・ニューノーマル

話し合いをみんなで観察する

 やり方は簡単です。班での話し合いの際に、話し合いの上手な班を一つ選んでみんなの前で話し合いをしてもらうのです。他の子たちはその様子を観察し、「よかったところ」を探します。この活動を入れるだけで、一気に子どもたちの話し合いへの意識が高まります。初めは、教師がメンバーを選抜するとよいでしょう。何も意識しなくとも話し合いが上手な子はいます。その子たちの技を、他の子たちに見つけさせるのです。
「自分の意見を伝えるときに、例を使っていた」
「よく意味が分からなかったときは、もう一度聞き直していた」
「相手の話と自分の経験とを結び付けて、相手の考えが深まるような提案をしていた」
などという技が出されます。これらは、教師が一方的に「こうしようね」と押し付けたものではなく、クラスの友達が使っている技だからこそ、他の子は「自分も使ってみよう」と思えるのです。

ここがポイント!

  • 客観視させることで自己批正を促すことができる。

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

(構成:林)
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