今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(6)
文学教材の指導技術〈2〉
「〜と書いてあるから、何?」とつっこむ/初読で問いを出させず、内容の大体を押さえてから出させる
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2021/11/5 掲載

理由付けを引き出すには?

 文学の授業において、叙述を根拠に考えさせることは非常に重要です。
 限られた時数の中で、子ども達の読む力、言葉の力を高めていくには、「何となくこう思う」というような曖昧な読みをできるだけ排し、「ここにこう書いてあるから、こう思う」という確かな読みを積み重ねていきたいものです。
 このような考えは、一般に広く知れ渡り、子どもが意見を言った後、教師が「どこに書いてあるの?」「それはどこから分かるの?」などと問い返し、本文に返すような指導は多く行われています。
 その成果か、年度初めであっても、多くの子どもは意見を言う際、「〇ページに〜〜と書いてある」ということを根拠として示します。年度初めにそれができるということは、これまでの先生方の指導が根付いている証拠です。「根拠」を示すのは、全国的に根付いてきていると言えるでしょう。

これまでの国語授業

「どこに書いてある?」と問い返す

 そこで、さらにワンステップ上を目指しましょう。それは、「理由付け」をきちんと話させることです。具体的には、子どもが「根拠」を言い終えて満足しているところに、「〜と書いてあるから、何なの?」と重ねてつっこむだけです。

国語科指導技術・ニューノーマル

「〜と書いてあるから、何?」とつっこむ

 「理由付け」と「根拠」は異なります。
 根拠は、データなど客観的な事実がそれにあたります。物語の授業においては、「叙述」に他なりません。
 一方、理由付けは、その根拠が、なぜ自分の主張を支えるのか、を分かりやすく、自分なりに説明することです。

 例えば、「ごんは兵十に対して親しみの気持ちを抱いていたと思う」というのは「主張」ですね。それに対して、「おれと同じ一人ぼっち」という叙述は「根拠」に当たります。そして、「ただの『一人ぼっち』じゃなくて、『おれと同じ』という言葉をわざわざつけているので、『同じ』ということを強調していると思うから」などというのが「理由付け」に当たります。
 この例を見てお分かりいただけると思いますが、思考力、表現力が伸ばせるのは、「理由付け」について考えさせ、話させるときなのです。もちろん、「根拠」を見つけてそれを自分の「主張」と繋げるだけでも、「根拠」すらないときと比べれば遥かに論理的ですし、読む力や言葉の力も高まります。しかし、より高度な論理性、多様な説明、その子らしさが出てくるのは、「理由付け」について話させるときなのです。積極的に「理由」を話させましょう。

ここがポイント!

  • 「理由付け」まで迫るから、思考力、表現力が伸びる。

子どもから深い問いを出させるには?

これまでの国語授業

初発の感想を書かせるときに、問いを出させる

 「できるだけ子どもから出てきた問いを中心に授業を進めたい」という思いは、恐らくほとんどの先生がお持ちでしょう。それと同時に、「子どもからつまらない問いばかりが出され、深い問いが出されない」という苦い経験・思いをされている先生も多いことと思います。私もそうでした。初読後、「初発の感想」と称して「疑問を書いてみてね」と書かせると、「読めば書いてある簡単すぎる問い」が多く出されたり、逆に「話し合ってもらちが明かないような問い」が出されたりすることが多々ありました。

 そういう経験を積み重ねると、「子どもに問いを出させても無駄だから……」と子どもに問いを出させること自体をやめてしまおうか、と思った時期もあります。しかし、そうすると、私が受け持った子ども達は、物語を読んで自分なりに問いをもって読み、考えるという貴重な経験をしないで育つことになります。これでは、本当の「読む楽しみ」を知らずに育つようなものですし、本当の意味で「自立した読者」になど育ちようがありません。やはり、自分なりに問いをもたせる機会を全員に与えることは非常に重要です。

 それでは、どうしたらよいか、と考えに考え、行き着いたのが、単元の途中で問いを出させるということです。
 それまでの私は、「初読後に問いを出させるものだ、そしてそれをもとに単元を進めていくものだ」という固定観念がありました。しかし、冷静になってよく考えてみると、初読で深い問いが出せるような子は、もう「ほとんど読めている子」ではないでしょうか。大人である私だって何度も読み込み、話し合いたい問いを考えるのに、子どもには初読一回でそれを求めるのは、元々無理があったのではないか、と考えるようになったのです。

国語科指導技術・ニューノーマル

初読で問いを出させず、内容の大体を押さえてから出させる

 そこで、最初の2〜3時間は設定や内容の大体を、ある程度教師主導で押さえることにしました。そうすると、全員の基礎と、物語への共通認識を固めることができました。それから問いを出させると、低学年であっても、物語の核心をつくような深い問いが出されるようになりました。
 ぜひやってみてください。きっと教師がびっくりするような問いも出てきますよ。

ここがポイント!

  • 子どもだって、何度も読み込んでからの方が深い問いを出しやすい。

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

(構成:林)
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