今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(5)
文学教材の指導技術
初読後、一文で物語のあらすじを書かせる/昔話を例に出して三要素(設定)の重要性を認識させる
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2021/10/5 掲載

子どもの読みを把握し、ズレを明確にするには?

これまでの国語授業

文学(物語)の第一時で、とりあえず初発の感想を書かせる

 文学の授業の最初は、何をするでしょうか。
 指導書や指導案に目を通すと、多くの場合、「初発の感想」を書かせるようです。
 私も、同様にしていたことがありますし、もちろん悪いことではありません。 
 しかし、初発の感想をその後の授業に上手く生かせている、という授業を拝見することは残念ながら、あまりありません。
 書かせたはいいものの、その後全く使われなかったり、結局教師が問いを出したりしている授業がほとんどです。漫然と初発の感想を書かせていた頃の私も同じでした。
 「今日は物語の第一時か。とりあえず初発の感想を書かせるか……」という感じで、「とりあえず」書かせてしまっている先生もいるのではないでしょうか。

 そもそも文学の第一時においては、どのようなことをしておきたいでしょう。
 私は、「子どもの読みを把握すること」と、「子ども同士の読みのズレを生み課題意識を醸成しておくこと」が、重要だと思います(説明文も同様かもしれません)。

 そのように考えたとき、「初発の感想」は改善の余地があります。
 「感想を書いて」と言って書かせると、多くの子は考えたことをつらつらと思うままに書いていきます。それはそれでいいのですが、その後の授業に生かすには少し扱いが難しくなってきます。ある子は思ったことを書いて、ある子は疑問を書いて、ある子は自分が読み取ったことを書いて……となるので、焦点が絞りづらいのです。そうすると、子ども同士で感想を聞き合っても、なかなかかみ合いません。

 そこで、初読後は、一文で感想を書かせてみましょう。
 「○○が××して△△になったお話。」という型を示して、書かせるだけです。
 もちろん書いていく中で、「が」が「は」になっても、「になった」が「した」になってもいいです。重要なのは「一文」というところです。そうすると、焦点が絞れて、教師は子どもの読みを把握しやすいですし、子ども同士でもお互いの読みのズレを把握しやすいのです。例えば、「大造じいさんとガン」では、大造じいさんと残雪が「ライバルになったお話」とする子もいれば「仲良くなった」と表現する子もいます。「この二つは一緒?」と聞くと必ず子どもは「違う」と言います。そこから、「二人はどのような関係になっていったといえるのか」という課題意識が子どもたちの中に芽生えてきます。

国語科指導技術・ニューノーマル

初読後、一文で物語のあらすじを書かせる

ここがポイント!

  • 一文で書かせることで、子どもも教師も焦点化できる。

※東京国語教育探究の会代表・石丸憲一先生のご実践を参考にしています。

「設定」の重要性に気づかせるには?

 文学教材の授業の順序は、私の中では大体決まっていて、第一時が先に挙げた「初発のあらすじ」を扱います。第二時が「物語の設定の確認」です。(ちなみに第三時に「問いを出し合う」時間を取ります。その話はまたの機会に……)

 「設定の確認」は、地味ですが非常に重要です。
 「物語の設定」とは、簡単に言えば、「人・時・場」の三要素です。

これまでの国語授業

「人」「時」「場」の三要素を伝える

 「人」とは「登場人物」のことで、物語の中心となります。登場人物も、その中で役割として中心人物、対人物・脇役などに分かれていきますが、それは学年に応じて指導していけばよいでしょう。とにかく「誰が出てきて、誰が物語の中で重要な役か」ということを押さえることが大切です。物語は基本的には人物を中心に繰り広げられるので最重要です。
 「時」とは「時代・季節・時間」などのことです。これも非常に重要で、特に時代を読み違えていると、一気にイメージがガラッと変わってしまうことがあります。
 「場」とは「物語が繰り広げられている場」のことです。これも、読み違えていると、物語全体の読みが変わってしまうことがあるので注意が必要です。

 これら三つは、物語が進んでいく上でのいわば「大前提」です。まずは子どもたちにこの「大前提」を正確につかむように意識づけることが重要です。一人ひとりがイメージを膨らませて、それぞれ個性的な読みをするのは素晴らしいことだと思いますし、私もそういう授業をしたいですが、この設定を読み違えているようでは話になりません。

 まずは子どもたちに、この設定の重要性を認識させましょう。
 そのために私は、昔話を活用します。
 例えば「『桃太郎』は最初、どんな文から始まりますか」と問います。するとほとんどの子が言えます。「むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました」ですね。そうしたら、「それ、物語の設定がすべて入っていない?」と尋ねます。すると、「ほんとだ!」と子どもは驚きます。そこで、「ですよね。物語の重要な基礎だから、最初に言っているんですね。その後はどう続きますか?」と尋ねると、また、ほとんどの子が言えます。「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」。「これ、設定の『時』はいつでしたか? 『むかし、むかし』だよね。だから、川へ洗濯に行ったんですよね。もし、最近の話だったら川に洗濯に行かないよね。そうしたら……?」と聞きます。すると子どもは「桃太郎と出会わない!」と答えます。「そう、『設定』は、読者を物語の世界に誘い込むためのもので、作者がよーく考えて書いているんですよ」と説明します。
 これで多くの子が、設定の重要性を理解し、大切に読もうとします。

国語科指導技術・ニューノーマル

昔話を例に出して三要素(設定)の重要性を認識させる

ここがポイント!

  • 子どもたちが共通に持つスキーマを用いることで、重要性を強くインプットさせる。

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

(構成:林)
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