教育マグマ日記
明治図書出版教育書編集部の樋口雅子編集長が、日々の雑感を赤裸々に綴ります。
”名乗らない”フック
明治図書出版編集長樋口 雅子
2014/5/19 掲載

「きっかけは、卒業した学生が就職した企業から、“動物に触ったことも、土をいじったこともない、そんな卒業生を出していいのか”という一言からだった。帯広畜産大学の小池教授は、学生に豚舎の当番をさせると、学生が変わっていった。学生は、豚に名前を付ければ豚の世話にも身が入るはずと。教授は、あれほど命名するなといっておいたのに、“やれやれ”と溜息をついた。名前をつけると別れがつらくなる〜と」

最近読んだ読売新聞の教育欄。
たしかに、豚ちゃんの場合は、人間様、つまり自分たちの口に入るのですから、ロマンある別れとは無縁の世界。半年で出荷される豚―学生にとっては、つらさが倍増することでしょう。
この記事を読んでいて、ふと、有田和正先生に関連した水面下の事件?を思い出しました。
半年ぐらい前ですが、「社会科教育」誌あてに、
「私は、退職してから新任指導を担当している。
有田先生の実践を紹介し、それをもとに研究授業をした若手が、校内研でボロクソ叩かれたのだと泣きながら訴えてきた。
私が紹介した有田実践のどこが問題なのか、有田先生に直接お聞きしたいので、紹介の労をとってくれないか」
という訴え。私は、
・加療中の有田先生に個人的な問い合わせは見合わせて欲しい。
・私的な問題としてではなく、名乗り上げていただければ、誌上紹介して、論争問題に出来るのだが…」
と返信したところ、自分が名乗れば、若手の名前も特定出来るので出せないーと。確かに、そういうことになるでしょうが、だとしたら、最初から、<ご自分の主張の正当性を有田先生からお墨付きをもらいたかっただけ〜>
ガクってきたことを思い出しました。
ところが、マ逆の事例が、ある民間教育団体の機関誌にありました。
「新人育成教員から、“教師の資質なし”と言われたこと。臨時保護者会を開き、校長が担任交代を保護者に報告したが、その保護者会には出させてもらえなかったーという報告を聞き、気づけなかった申し分けなさと、制度がうまく運用されていない怒りと危機感がこみあげてきた」
と、勤務校を明記し、実名入りで書かれていた経験8年目の先生がおられました。前の事例がご自分の正当性保証が動機のひとつ?だったのに比べ、後者の先生は、自分の不甲斐なさにも触れている点、いさぎよい知性を感じさせます。
「豚でも、名前を付けると魂が入るようだから、人間にとって、名乗るかどうかが人品をはかるモノサシよね?」
という私に、
「ネット時代、自分は安全地帯にいて、人の心を刺激する釣り針を垂らして引っかかる獲物に悦に入るーという人種は増えている。だから、こっちも、釣り針がどう仕込まれているかを探すのは、国語の問題を解くのに似た楽しさだーって、人気ブロガーのHagexがいってる…」
友人の新情報でした。

コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • みちのく仙台の伊達男
    • 2014/5/22 9:08:21
     自分の実践を、ぼろくそに言ってくれる先輩ほどありがたいことはありません。
     それだけ真剣に、時間を取って考えた上での発言なのですから。
     自分も、採用5年目に市の研究会で授業をしたときに、当時の研究会副会長から
    「最初の15分は、どんな授業になるのか、本当にわくわくして見ていました。
     ここ最近見ない授業になるそうだと思ったのですが、後半の30分は全くだめ
     でしたね」
     と、冷静に判断されました。なにくそと思いましたが、あとで授業記録を見れば
    まったくその通りでした。自分の独りよがりな授業は、誰かに判断してもらうこ
    とが大事です。ありがたい先輩たちではないでしょうか。
     今は、新任を何かとちやほやし、休まないように気を配り、はれ物に触るように
    対応しています。叩かれ強くない教員が多くなり、保護者からの一言ですぐにだ
    めになる教員が多いのも実態です。
     ここは、2年間のインターン制度でも取り入れるしかないのでしょうかね。
     自分の正当性を、他者にゆだねるのねえ・・・
    • 2
    • 総一郎
    • 2014/5/25 23:03:08
     どのような実践であれ、それを考えた授業者本人と切り離すことはできません。明治図書の雑誌で紹介されている授業方法も同じだと思います。そのまま別の人の授業に使うことはできません。
     様々な授業の方法を学ぶことは、それを考えた方々の授業の見方・子供の見方を学ぶことです。その上で、いくつもの授業方法を参考に(時にはほとんど同じ展開になることもありますが)自分の力を問い直し、目の前の学習者の実態を勘案して、自分の授業を作っていくことが大切だと思います。編集意図とは異なるのかもしれませんが、明治図書の雑誌も、私はそのようにして読んできました。(CMのつもりはありません)新任指導の方に必要だったのは、実践事例をどのように自分の授業にしていくかを教えることだったのではないでしょうか。
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