「協働的な学び」を実現する算数授業のつくり方
個別最適な学びと一体的に充実させていくために、協働的な学びを、その定義や効果、学習環境など、様々な視点から掘り下げていきます。
「協働的な学び」を実現する算数授業のつくり方(8)
「個別最適な学び」と「協働的な学び」において大切な、教科の特質に応じた「学び方」
東京学芸大学附属小金井小学校加固 希支男
2023/1/25 掲載

 「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、子どもを主語にした学びである以上、子どもが学びを進めていかなければなりません。そのためには、「学び方」を学ぶ必要があります。最初から「自分で学習を進めましょう」と言っても、子どもは何をすればよいかわからないでしょう。また、間違った「学び方」を学んでしまっては意味がありません。ひたすらドリル学習をしている子どもが、いくら主体的に学習していたとしても、それは知識偏重の学びになってしまいます。
 「学び方」を学ぶというのは、学習計画を立てるとか、話し合い方を学ぶということだけではありません。教科を学習するのであれば、むしろ、各教科の特質に応じた「学び方」を学ぶことが大事です。国語には国語の特質に応じた「学び方」があり、算数には算数の特質に応じた「学び方」があるのです。

教科の特質に応じた「学び方」の大切さ

 教科の特質に応じて、各教科で養うべき力というのは異なります。教科によって養うべき力が異なるということは、教科によって「学び方」が異なるということです。
 算数で養うべき力は「既習事項や様々な考え方を使って、新しい知識を創造する力」だと考えていますが、この力を養うための「学び方」とはどんなものでしょうか。

算数の教科の特質に応じた「学び方」

 算数で養うべき「既習事項や様々な考え方を使って、新しい知識を創造する力」を育てるためには、主に以下の2つの「学び方」を身につけることが重要だと考えています。

@問題解決学習
A統合的・発展的に考える

 以下、それぞれについて述べていきます。

@問題解決学習

 問題解決学習とは、既習事項を使いながら問題を解決し、その過程で新しい知識を子ども自らが発見してく学習です。
 実は、算数の教科書というのは、問題解決学習の流れに沿ってつくられています。算数の教科書は、「@問題(課題)提示→A解き方の説明→Bまとめ→C練習問題」という流れに基づいて紙面が構成されていることが多いのです。算数の学習において、自分で学習を進める際、この問題解決学習の「学び方」を知っていれば、個別学習のときも、まわりの人と一緒に学習を進めるときも、子ども自身で学習を進めることができるようになります。
 しかし、最初から、個別学習で問題解決学習の「学び方」をしながら学習する子どもの姿を期待するのは難しいです。一斉授業において、何度も問題解決学習の流れを全員で経験し、「算数とは、こうやって学んでいくのだ」という「学び方」を身につけて、はじめて子どもはできるようになるのです。
 先述のように、算数の教科書というのは、問題解決学習が自然とできるような紙面構成になっています。ですから、教科書の紙面を使いながら、「算数というのは、@問題(課題)提示→A解き方の説明→Bまとめ→C練習問題という流れで学習することで、新しい知識を自分で発見することができるんだよ」ということを教えるのも大切です。
 算数の教科書は、知識を得るためだけのものではなく、「学び方」を学ぶ参考書でもあるのです。

A統合的・発展的に考える

 問題解決学習という「学び方」を学んだとしても、流し方だけ身につけても意味がありません。どんなに学習の流し方を身につけたとしても、算数で養うべき「既習事項や様々な考え方を使って、新しい知識を創造する力」を養うことにはつながらないからです。この力を養うためには、統合的・発展的に考える必要があります。
 学習指導要領の解説(算数編)に、数学的な考え方は、「『目的に応じて数、式、図、表、グラフ等を活用しつつ、根拠を基に筋道を立てて考え、問題解決の過程を振り返るなどして既習の知識及び技能等を関連付けながら、統合的・発展的に考えること』であると考えられる」(文部科学省、2017)と示されている通り、統合的・発展的に考えることというのは、数学的な考え方の1つです。そして、この統合的・発展的に考えることは、学習内容の系統性が強い算数という教科の特質そのものなのです。

 発展という言葉は聞き慣れていますし、想像がつくと思います。しかし、統合という言葉はあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
 中島(1981)は、統合という言葉の意味について、以下のように述べています。

 「統合」は、はじめは、教育内容として、一つの分野における数学的な内容はもちろん、ほかの分野のものについても、ばらばらな形でなく、よく整理され関連とまとまりのあるものとして学習されるようにしたいということ

 要するに、バラバラに見えるものの中から共通点を見つけ出し、重要な考え方を見つけ出すということです。これは、算数において、とてもよく行う活動です。教科書で言えば「まとめ」の部分を導き出すために行っているのが、統合的に考えるというです。

 また、中島(1981)は、統合的・発展的という言葉について、以下のように述べています。

 「統合的」と「発展的」とを並列的によみとらないで、「統合といった観点による発展的な考察」というようによみとることが望ましい。

 統合的と発展的という言葉は並列ではなく順序があり、統合的が前で発展的が後なのです。統合することで発展があるのです。さらにいうと、いくら発展させたとしても、統合が前になければ、発展の価値は低くなってしまうのです。
 5年生の異分母分数のたし算であれば、様々な解法から大切な考え方を統合し、「通分して、単位分数のいくつ分で考える」という共通する考え方を見つけます。そのうえで、「では、他の数値の分数でも、この考え方が使えるのかな?」と、解決した問題を発展させるということです。この「では、他の数値の分数でも、この考え方が使えるのかな?」と考えるところに価値があるのです。ただ問題の数値を変えたり、難しい問題をつくったりするだけでは、あまり価値はないのです。

統合的・発展的に考える子どもの姿

 実際の子どもの様子をもとに、子どもが統合的・発展的に考えながら学習を進める様子を紹介します。本実践は、3年生の暗算の単元で個別学習を行った際のものです。
 最初に教師から提示した問題は、「44+29の暗算の仕方を考えよう」というものでした。まず、頭の中で暗算をして答えを出して、どうやって頭の中で暗算をしたのかを式や言葉でノートに書くように伝えました。
 最初の問題を解いた時点で書かれていたのは、下のような内容でした。

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 1年生のころに学習した、さくらんぼ算を思い出して、きりのいい数に分けることに気づいていました。そして、まわりの人と話し合っていく中で、多くの子どもたちが「さくらんぼ算をして、きりのいい数に分ける」という考え方が共通した大切な数学的な見方であることに気づいていきました。
 この「きりのいい数に分ける」ということが、位ごとに分けていることと同じことだと気づき、「くらいごと算」と命名している子どももいました。

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 また、下のようなことを書いた子どももいました。この子どもは、1年生の繰り上がりのあるたし算の学習との共通点に目を向けています。そして、数が大きくなっても、位ごとに計算することは同じであることに気づいています。既習事項と目の前の学習との共通点を見つけ出している姿であり、統合的に考えていることの表れです。

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 子どもは、次に「さくらんぼ算をして、きりのいい数に分ける(くらいごと算)」という数学的な見方がどんなときに使えるのかを考えていきました。見ていると、問題の発展のさせ方が、子どもによって異なりました。まさに「学習の個性化」が行われている姿でした。
 下のノートを書いた子どもは、「数を変えてみよう」と考え、「23+21」と「18+19」という問題をつくっていました。2桁+2桁のままなのですが、数を変えて問題を発展させているのです。これが、一番シンプルな発展のさせ方でしょう。

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 次のような発展のさせ方をした子どもも多く見られました。これは、桁数を3桁に増やし、さらに、空位まで入れています。

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 このときも、2桁+2桁の暗算で使った「さくらんぼ算をして、きりのいい数に分ける(くらいごと算)」という考え方が使われていることがわかります。また、空位がある場合の計算の仕方も書かれており、自然と概念が豊かになっていることもわかります。

見方・考え方を働かせることが、教科の特質に応じた力を養うことにつながる

 子どもたちが発展させた上の問題を見て、「なんだそんなものか」と思った方もいるかもしれません。確かに、問題としてはだれでも思いつくようなものです。しかし、教師から提示された問題を解いて終わるのではなく、最初に解いた「44+29」という計算で使った考え方を統合して見つけた「さくらんぼ算をして、きりのいい数に分ける(くらいごと算)」という数学的な見方を意識して、子ども自らが問題を発展させたことの価値に目を向けてもらえたらと思っています。
 ここに示した問題は、すべて子どもが自ら発展させて創り出したものです。こういった、子どもが自ら学習を進める経験の積み重ねが、算数で養いたい「既習事項や様々な考え方を使って、新しい知識を創造する力」に結びつくと考えています。

【参考・引用文献】
・文部科学省(2017)『小学校学習指導要領解説 算数編』(日本文教出版)p.23
・中島健三(1981)『算数・数学教育と数学的な考え方』(金子書房)p.40、126

加固 希支男かこ きしお

1978年生まれ。立教大学経済学部経済学科を卒業し、2007年まで一般企業での勤務を経験。2008年より杉並区立堀之内小学校教諭、墨田区立第一寺島小学校教諭を経て、2013年より東京学芸大学附属小金井小学校教諭。

(構成:矢口)
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