「協働的な学び」を実現する算数授業のつくり方
個別最適な学びと一体的に充実させていくために、協働的な学びを、その定義や効果、学習環境など、様々な視点から掘り下げていきます。
「協働的な学び」を実現する算数授業のつくり方(7)
「個別最適な学び」と「協働的な学び」における評価A(日常の評価編)
東京学芸大学附属小金井小学校加固 希支男
2022/12/25 掲載

 子どもを評価する際、テストだけでなく、日々の評価の積み重ねが大切だということは、現場の我々はだれもがわかっています。しかし、実際にどんなことをしていけばよいのか迷うのも事実です。
 評価方法について書かれた文献はたくさんありますし、読めば「その通りだ」と思うことばかりです。しかし、評価において最も難しいことは「続けること」です。どんなに有効な評価方法も、続けられなければ理想論に過ぎません。
 そこで、今回は「続けられる評価」について書いていきます。実際に、私が毎日行っている評価方法なので、だれもが真似できるものだと思います。

日常的な評価の方法

 評価を学期末だけ行っていては、子どもの学習や教師の指導の改善に結びつけることはできません。ですから、評価は日常的に行っていく必要があります。しかし、完璧な評価を目指そうとすれば続かなくなってしまいます。完璧な評価を目指すのではなく、続けられる評価を目指すべきです。
 以下、私が実際に日常的に行っている評価方法について述べていきます。専門的なことではないですが、「続けられる評価」としての参考になればと考えています。

@観察

 日常的な評価を行うためには、子どもの学習の様子を観察することが一番です。しかし、ただ漠然と子どもを眺めているだけでは、有意義な観察にはなりません(西岡他、2022)。ですから、各時間の意図的目標を頭に入れ、意図的目標を評価基準として、子どもの様子を見取るのです。そして、「この子どもは意図的目標を達成できているな」と考えられる子どもの名簿に○をつけていきます。
 毎時間全員の学習状況をチェックすることはできませんが、数時間やれば、○が多い子どもとそうでない子どもが見えてきます。○が多い子どもは、教師がよく見取れている子どもであり、○がついていない子どもは、教師が見取れていない子どもである可能性があります。よって、次の学習から、○がついていない子どもの学習の様子に目を向けていくことを意識することができるのです。

A振り返りシート

 私は、毎時間、次のような振り返りのシートを書かせています。この振り返りシートは今年度担任している3年生用に作成したものです。学年によって内容は異なりますが、どの学年でも必ず書かせている内容は、その日の学習で使った一番大切な考え方(主に数学的な見方)を書かせることです。下記の3年生の振り返りシートであれば、「A今日の『着目ポイント』を書こう!」という項目です。ここに、意図的目標に関する言葉が書いてあれば、名簿に○をつけていきます。

画像1

 例えば、下の振り返りシートは、3桁+3桁の筆算の仕方について、個別学習を行った際に子どもが書いたのものの一部です。

画像2

 本時の意図的目標は「既習であるたし算の原理と3位数+3位数の筆算の仕方の共通点を考え、答えを求めることができる」でしたから、既習であるたし算の原理と筆算の仕方の共通点を理解しているかがポイントです。「位をそろえる」というのは筆算の形式ですから、それでは十分に目標を達成しているとは言えず、「位をそろえているということは、単位をそろえていること」ということまで理解させたいものです。ですから、上記の振り返りシートのようなことが書いてあれば、目標を達成していると判断できます。
 意図的目標を想定したら、今度は、振り返りシートに、その日の学習で使った一番大切な考え方(主に数学的な見方)について、どんなことを書いてほしいのかを想定するとよいでしょう。

振り返りシートの各項目の意図

 上の振り返りシートの項目について、それぞれの意図を以下に示しておきます。

「今日の学習でやったことを書きましょう」

→1時間の自分の学習の文脈を要約できるようになるため。

「@今日の学習でできたことをチェックしましょう」

□「着目ポイントは何か?」と考えた

→問題を解いて終わりとせず、大切な考え方について考えながら学習を進められるようになるため。

□友だちといっしょに考えたり、話したりした

→他者の考えを取り入れ、様々な考え方に触れることで、自分では気づけなかったことに気づくことの重要さを理解するため。

□前にやった学習と結びつけ考えた

→算数の学習は系統性が強いため、過去の学習を使えば、新しい知識を自ら創り出すことが可能だということを意識させるため。

「A今日の『着目ポイント』を書こう!」

→本時の学習において働かせた数学的な見方・考え方(特に、数学的な見方)を言語化させるため。この積み重ねが数学的な見方・考え方を働かせる力につながっていくため、最も重要。

「Bその他(思ったこと友達と話したことなど、なんでもいいですよ)」

→観点を限定せず、自分で考えたことや、面白いと思ったことを自由に記述させるため。ここに、「学習の個性化」で行った内容や、素朴な疑問や感想などが書かれることもあり、今後の学習の種となることが書かれることもある。

 教科の特質に応じて、振り返りの仕方も変わってくるはずです。自分で学習計画を立てて、学習計画を基に振り返りを行うことが効果的な教科もあれば、まずは、1時間1時間の学習内容と過去の学習内容を踏まえて振り返ることが効果的な教科(算数はこちらだと考えています)もあります。しかし、どの教科でも重要なのは、問題解決をするために働かせた見方・考え方について振り返させることであることは間違いないでしょう。

【参考文献】
・西岡加名恵・石井英真・田中耕治編(2022)『新しい教育評価 人を育てる評価のために[増補版]』(有斐閣)p.137

加固 希支男かこ きしお

1978年生まれ。立教大学経済学部経済学科を卒業し、2007年まで一般企業での勤務を経験。2008年より杉並区立堀之内小学校教諭、墨田区立第一寺島小学校教諭を経て、2013年より東京学芸大学附属小金井小学校教諭。

(構成:矢口)
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