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少子化対策の効果は? 不足する産科医と保育園
kyoikujin
2007/8/24 掲載

 22日、人口動態統計速報(上半期)が発表され、出生数は前年より減り、婚姻数も減少傾向にあることがわかった。少子化は年金問題とも絡む重要な課題であるため、さまざまな対策も講じられてきているが、激務による産婦人科医・産院の不足、都市部の保育園の不足による待機児童の問題など、不安を覚える情報も多いのが実情だ。

 厚生労働省が22日に発表した人口動態統計速報(上半期)によると、今年上半期(1〜6月)の出生数は54万6541人と、前年の同じ時期に比べ、0.5%減で、2714人減っている。昨年は人口の増減の指標となる合計特殊出生率が6年ぶりに上昇したが、今年はまた減少する可能性が出てきた。そもそも、昨年増えたと言われる1.32という数字も、低下が始まる1971年には2.16あったもので、現在の人口を維持するには2.08が必要と言われていることから考えると、減少傾向にはどめがかかっているとは言いにくい。

 少子化については、金銭面を含めた子育て負担の敬遠、共働き・介護が必要な家庭などでの子育ての困難さ、婚姻数の減少、晩婚化などがその要因とされている。その危機感から政府も児童手当制度や子育て支援税制について検討を行い、子育ての経済的負担を軽減させる措置の検討を進めてきた。しかし、金銭的な面での問題だけでなく、大きな問題としてあげられているのが「産院・産婦人科医の不足」と「保育園の不足」だ。

激務と高いリスクがネック? 避けられる産婦人科医

 「産婦人科医の不足」は日中・夜間を問わない激務、そして重い責任と高い訴訟リスクが主な原因とされている。子どもを産もうにも、取り上げてくれる医院が減ってきているのだから、産む方の不安が募ることになる。産婦人科医1人あたりの子どもの数はあまり変わらないとの調査結果もあるが、産婦人科医の仕事は出産だけではなく、婦人科系のがん・不妊治療などへとひろがってきており、分娩をとりやめ、婦人科とする医院も増えてきているようだ。その結果、「産院」が減っており、手が足りていない現状がある。
 ある大臣が「産婦人科医が減っているのは出生数が減って医療ニーズが低減した反映」と発言し、各方面の反発を買っていたことは記憶に新しいが、少ない産婦人科医の負担は増しており、厳しい現場の再認識が必要であろう。

23,338人の待機児童を生む保育園不足

 “待機児童”と呼ばれる保育園に入園できない子どもを生んでいるのが主に都市部での「保育園の不足」だ。共働きや家族の介護が必要な家庭では子どもが育てにくいため、保育園に預けることになるが、その需要が保育園の数を大きく上回るため、大量の“待ち”が生まれている。そのような状況から、「子どもを生んでも育てられない」という不安があることは、紛れもない事実であろう。自治体の運営だけでは限界があるとの判断から、2000年に国が認可保育園への企業参入を認め間口を広げたが、その参入条件の厳しさからか、全国的に新規参入事業者は極めて少ない。
 2006年4月現在で、全国の待機児童は23,338人。2001年からは政府が保育定員の増加を中心として「待機児童ゼロ運動」を進めているが、“働きたいが、現状では難しいので専業主婦をしている”という層が潜在的にあるため、新しい保育園ができるとすぐ定員が埋まってしまうことが多いようだ。待機児童の数については、調査で国が把握している数より実際はかなり多いとされている。
 逆に“定員割れ”を起こしている幼稚園への救済と、待機児童数の削減をという流れから、政府は2006年10月から「認定子ども園」という保育園と幼稚園、両方の機能を合わせた施設への一体化を制度の中に加えた。かねてより主張されている“幼保一元化”への道筋が出来た、ともされるが、利用料などの規定は従来のままで、今のままでは混乱するのでは、との声もあがっている。

 少子化の原因は産婦人科医・産院の減少、保育園の不足だけでは勿論ないが、激変する社会情勢に法制度・対応が追いついていないとの感も否めない。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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