著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
発問、板書、教材まで!1年間の英文法指導が丸ごとがわかる!
岐阜大学教育学部准教授瀧沢 広人
2023/2/27 掲載

瀧沢 広人たきざわ ひろと

1966年東京都東大和市に生まれる。埼玉大学教育学部小学校教員養成課程卒業後、埼玉県公立中学校、ベトナム日本人学校、公立小学校、教育委員会、中学校の教頭職を経て、現在、岐阜大学教育学部准教授として小・中学校の英語教育研究を行う。

―本シリーズでは、中学校1〜3年の1時間ごとの授業の流れを板書例とともに紹介しています。英文法指導の時間に絞って学習活動例を掲載しているのはなぜですか。

 本シリーズのテーマは、「365日の全授業」です。本来は、教科書を用いた授業も提案すべきですが、教科書が改訂され、題材が変わると、新鮮さが感じられなくなることもあります。社会や理科、数学等の教科であれば、教科書が変わっても、ほぼ単元の学習内容は変わらずに済むのですが、英語についてはどうしても、題材に寄り添う面があります。
 ただ、英語授業でも、変わらずに指導できる分野があります。それが英文法です。まして、私たちが英語を身に付ける上で、英文法の理解と定着は必須です。
理解させるためには、実際に生徒に言語使用の機会を与え、言語活動の中で文法指導する必要があります。
 また、指導したら即、英語が身に付くということはありません。定着させるためには、繰り返しが必要です。そこで本書では、理解させる学習活動と、定着活用を目指すための復習・活用するためのページを設け、先生方が幅広く英文法指導ができるよう指導アイデアをご紹介しています。

―教師の発問や生徒とのやり取りの例が具体的に詳しく掲載されていることも本書の特長の1つです。本書をどのように活用してほしいと思いますか。

 まず、アイデアは無いところから生まれないと常々思います。今あるアイデアを自分なりに、多少変えてみたり、目の前の生徒に合わせて変えてみたりするところに、私たちの新しいアイデアが生まれると考えるのです。また、何もないところから考えると時間もかかりますが、アイデアが目の前にあると、新たな発想が浮かびやすくなります。本書は、強力な執筆陣の下で作成に至りました。アイデアだけでなく、どのように授業展開をすればよいのか、指導の流れについても学んでいただけたらと思います。先生方の新たなアイデアにつながるヒントになれば幸いです。

―さらに本書には、すべてのワークシートや活動で使えるアクティビティシートがダウンロードできる購入者特典つきとのことですが、この教材作成の際に大切にしたことはありますか?

 文法を指導する際、どうしてもアクティビティシートが必要となります。そこで、ダウンロード資料としてシートのデータを提供することにしました。
 実は、これらの資料もアイデアです。それらの指導ネタをそのまま活用することもできますが、先生方の発想で、修正して利用することもできます。また、シートには、各先生方の日頃の指導技術が詰まっています。生徒の興味関心を引くネタをどのように取り上げ、それをどのように授業化しているかが、垣間見られるかと思います。お時間のあるときに、ダウンロードされ、教材研究に、ご活用いただければ幸いです。

―本書の1年編には小学校の復習単元が7つも収録されています。中学1年で英語授業が本格化し、戸惑う生徒も多いようですが、そんな時にもこの1冊が役立ちそうですね…。

 教員にとっても、生徒にとっても、小中連携は重要課題です。教員にとっては、小学校で、どのようなことを学んできているのか、また、どのように英語を学んできているかを知ることは、中学校英語への接続を考えた際に、とても大切だと思うのです。また、生徒にとっては、小学校で学んできたことを土台に、中学校での学習に新鮮な気持ちで接することと思います。その時に、既に英語に苦手意識をもっている生徒については、よい学び直しの機会となるようにしなくてはいけません。また、英語が好きと感じている生徒については、さらに英語を学ぶことが好きと感じさせるよう、「聞く・話す」の実際のコミュニケーションを重視した小学校英語のよい流れを引き継ぐようにしたいです。そのための小中連携です。ここにあげた項目は、小学校で学習してくるポピュラーな基本表現をとりあげています。この単元のアイデアが生徒にとってスムーズな接続につながることを期待しています。

―最後に全国の中学校で英語を教える先生方に一言メッセージをお願いします。

 あるラジオ番組で、元サッカー選手へのインタビューがあり、その中で「緊張はしないのですか」と尋ねられている場面がありました。その元選手は、「もちろん緊張しますよ」と答え、「え。〇〇さんでも緊張するのですか」と聞かれると、「緊張しなくなったらおしまいだと思うのです。適度な緊張は必要です」と言っていました。
 実は、私は毎回、セミナー前に緊張するのです。いつまでたっても、緊張する自分がいるのです。でも、元サッカー選手のその一言で、「ああ。緊張して当然なんだ。確かに緊張していたほうが、慎重になるしなあ。」と勇気づけられました。やはり、プロという第一線で活躍していた人の言葉は、深いなあ…と思いました。(ただ、適度な緊張という言い方をしていましたが…。)
 ということで、そろそろあちこちで対面でのセミナーが再開し始めました。どうか緊張している私を見て下さい(笑)。

(構成:木山)
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