著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
大きなやりがいにつながる校長職の“差がつく”仕事の心得
奈良県公立小学校長中嶋 郁雄
2023/2/21 掲載
 今回は中嶋郁雄先生に、新刊『校長1年目に知っておきたい できる校長が定めている60のルール』について伺いました。

中嶋 郁雄なかしま いくお

1965年鳥取県生まれ。1989年奈良教育大学卒業後、小学校の教壇に立つ。「子どもを伸ばすためには、叱りが欠かせない」という主張のもとに「『叱り方』研究会」を立ち上げて活動を始める。教育関係者主催の講演会、そして専門誌での発表が主な活動だったが、噂が噂を呼び、大学や一般向けにも「心に響く叱り方」といったテーマでセミナーを行うようになる。新聞や経済誌などにも「叱り」について意見を求められるようになる。

―学校にたった一人だけの校長先生。先生ご自身も「校長先生」として日々奮闘されていらっしゃると思いますが、担任・主任・副校長との違いの中で先生がもっとも実感したことがあれば教えてください。

 学校運営に関わる全責任を負うという重圧です。校長になり立ての頃は分からなかったのですが、校長という立場で児童や保護者のトラブルに対峙する経験を重ねるにつれて、校長職が大変な重圧を背負っていることを実感するようになりました。思い返せば、教頭職にあった時は、「最終責任者は校長」という安心感に包まれて仕事をしていたと思います。校長は、子どもを守り学校を守り職員を守る最後の砦です。安心感の中で子どもや職員が学校生活を送ることができるように、自分に与えられた役割を全うするという覚悟は、校長職にある者にしか芽生えないものだと思います。
 

―本書では、校長先生のマインドセットとして60個のルールを挙げてくださっていますが、とりわけこれは大切だと先生がお考えのことはなんでしょうか。

 本著の中から選ぶのは難しいのですが、校長として

  1. 「教育者であることを忘れない」
  2. 「校長職は孤独であると覚悟を決める」
  3. 「勤務する学校一番の愛校者を目指す」

の3つを大切にしています。
 まず、1ですが校長は学校の教師をまとめ、それぞれの教師の特性を生かして学校経営を行わなければなりません。個性とプライドの塊のような教師を束ねるために必要なことは、教育者として教師に語ることだと思います。
 2については、決断に際して異なる意見を持つ職員から反発されることもあるでしょう。評価者・指導者として距離を置かれる立場でもあります。そのような職に就いたという覚悟で日々を過ごすことが大切と思います。
 3については、勤務校を好きになることが、学校を変える原動力であり、仕事の充実感を得ることにもなります。

―コロナ対策、GIGAスクール構想を筆頭に、学校現場の忙しさは言うまでもありませんが、そのような中で、学校のトップである校長先生にはどのような役割が求められているでしょうか。

 リーダーシップにも、様々なタイプがあると思います。カリスマ的に集団をぐいぐい牽引していくタイプのリーダーもいれば、個々の構成員の関係を調整しながら集団をまとめていくタイプのリーダーもいます。戦国時代にも様々なタイプのリーダーがいたように、現在の学校にも、様々なタイプのリーダーが必要だと思います。
 大切なことは、学校のリーダーである校長が、自分がどのタイプのリーダーを目指すのかを理解して学校経営を行うことではないかと思います。そのために、自分の性格や適性を客観的に把握する必要があります。自分の強みを生かしたリーダーシップを発揮することが、大変革時代の学校現場の課題を解決することにつながるのではないでしょうか。こからの校長は、「自分理解」をしっかり行い、周囲に自分という人間を理解してもらう努力をすることが、今まで以上に大切だと思います。

―校長先生ならではの大変さがあるかと思いますが、一方で、校長先生でなければ体験しえない喜び、もあるかと思います。中嶋先生ご自身の思い出深いエピソードなどがあれば教えていただけますか。

 校長は、毎日教室で子どもと生活を共にすることはできません。それでも、学校を見回っていると、「あっ、校長先生!」「校長先生が来た!」と、子ども達が注目してくれ親しく声を掛けてくれます。それに応じ返すと、何とも嬉しそうな笑顔を向けてくれます。これは、校長だからこそ経験できる喜びだと感じます。こちらは意識していないけど、子どもにとって「校長先生」は特別な人なのだと感じる瞬間です。そう考えると、子ども達の期待に違わないように自分をしっかり磨いていかなければと身が引き締まります。

―最後に、この春、新校長として赴任する読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 学校で起こる様々なトラブル対応に、日々神経を削る思いをすることもあるでしょう。職員との関係に悩む日が来るかもしれません。しかし、自分自身の教育信念に従って学校の舵取りを行うやり甲斐は、校長職でなければ経験することはできません。校長職を経験することで、視野も広がり新たなステージに立って教育について考えることができるようになるはずです。人としての成長も期待できると確信しています。管理職を避ける人の多い時代に、大変な職責を担う覚悟をされた校長先生方の、学校教育に対する情熱に敬服いたします。日本の教育のために共にがんばりましょう。

(構成:林)
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