著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「養護」の専門職として仕事スキルを高めよう
金沢大学人間社会研究域学校教育系准教授森 慶惠
2020/3/27 掲載
 今回は森慶惠先生に、新刊『養護教諭 仕事スキル大全』について伺いました。

森 慶惠もり よしえ

愛知教育大学養護教諭養成課程卒業後、名古屋市立小学校に、養護教諭として着任。養護教諭という仕事の魅力、面白さ、可能性を堪能し、途中、大学院で学びながら、31年間小中学校に勤務。
その後「後輩の養護教諭養成に携わりたい」と鈴鹿大学こども教育学部を経て、2020年4月より、金沢大学養護教諭特別別科准教授に着任。
現在の研究テーマは、健康情報リテラシー教育。落ち込みやすい反面、子どものように「未来の自分を信じる」呆れるほどポジティブな面も。

―本書は、『養護教諭 仕事スキル大全』というタイトルの通り、養護教諭の仕事をするうえで欠かせないポイントが網羅されている1冊だと思います。まずは、本書のねらいと特徴、活用方法について教えてください。

 養護教諭は、同職種の先輩や仲間からその場で具体的に教えられたり、学んだりする機会が限られ、新卒であっても、自分で考えて判断し、専門職として山積する課題に対応することが求められています。「どうしよう?」と迷ったとき、隣の学校の養護教諭に尋ねるような気持ちで本書を開き、日々の執務のヒントにしていただけたら嬉しいです。本書の提案は、唯一無二の「正解」ではありません。本書が皆さんの執務のさらなるバージョンアップのきっかけになりますように!

―第3章では、4月から3月、そして通年と、その月ごとの仕事内容とポイントが書かれています。新年度に本書を手にされる方も多いと思うのですが、4月にまず何をすればよいのか、あらためて教えてください。

 4月は学校保健活動のスタート、保健室開きとも言えます。まずは、保健室を中心とする活動を通して、どのような子どもを育てていきたいのか、一年後のゴールとなる目標を立てましょう。そして、そのゴールに向かうために、養護教諭として大切にしたいことは何かを、一年間の初めに自分に問い掛けてみましょう。ゴールとそのための自分の指針を見据えることができれば、日々の執務の中で迷い、悩むことがあっても大丈夫!迷子になりませんよ。

―学芸会や運動会前など、イベントごとには心や体の調子を崩し保健室にやってくる子どもたちが急増すると聞きました。先生はそうした子どもたちに対して、どんなサポートを意識されていますか?

 近年、心の健康と「レジリエンス」の関係が注目されています。レジリエンスは、「困難に直面した際の適応や回復を導く能力」です。失敗してはいけないと思い詰めたり、思うようにできなかった時に過度に落ち込んだりする子どもの様子を見るたびに、大切なのは失敗しないことではなく、失敗してもそこから学んで立ち上がることだと改めて感じます。子どもたちが困難に直面したときこそ、養護教諭の出番です!まずは子どもの変化を見逃さず、子どもの心と体に寄り添い、人生にとって失敗は恐れるものではないことを示してあげたいと思います。様々な経験を重ねて、子どもたちの笑顔が輝くことを保健室からも応援しました。

―先生の取組で印象的なものの1つに「ほけんだより」があります。先生がほけんだよりを作成されるうえで大切にされていることなど是非教えてください。

 インターネットの普及により、誰もが、いつでも、様々な健康情報を手にすることができるようになりました。そのような中、その学校の養護教諭しか伝えられない情報を届けることを一番大切にしていました。養護教諭の目や耳で捉え、肌で感じた学校の様子や子どもの様子があふれている、そんな私にしか作成することができないほけんだより、他の学校では使用できないほけんだよりを作成することを目標に、毎月頭を悩ませていました。

―最後に、全国の養護の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 これまでの先輩や仲間の養護教諭への感謝と、後輩であるこれからの養護教諭の役に立ちたいという思いで本書に取り組みました。また、養護教諭の職務についての教科書は様々あるけれども、現場の実際の活動とそれらの知識をつないだり、すき間を埋めたりする本があったらと若手の頃に思ったことも執筆への背中を押しました。執筆を通して改めて、養護教諭の職務の素晴らしさと重要性を感じています。養護教諭の未来と可能性を心から応援しています!

(構成:中野)
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