著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
深い教材研究と授業構想が、授業の質を高める!
筑波大学附属小学校教諭加藤 宣行
2020/3/9 掲載

加藤 宣行かとう のぶゆき

筑波大学附属小学校教諭、筑波大学・淑徳大学講師。
スタントマン、スポーツインストラクター、公立小学校教諭を経て現職。
日本道徳基礎教育学会事務局長
KTO道徳授業研究会代表
光文書院道徳教科書「ゆたかな心」監修

―本書は『加藤宣行の道徳授業』シリーズ第4弾です。今回の書籍のテーマについて教えてください。

 今回のテーマは「教材研究&授業構想」です。誰だってよい授業がしたいと思うでしょう。そのためにはしっかりとした授業構想を立てる必要があります。そして、そのためには、その前に、借り物ではない教材研究が必要です。それなしには教材のもつよさを生かしきることができないと言っても過言ではないでしょう。ですから、この2つをセットにして書かせていただきました。先生方に真の道徳授業力をつけていただきたい、そんな思いで設定したテーマです。

―本書には、今までのシリーズでは語られることのなかった、授業づくりの裏側が紹介されていると感じます。本書にも書かれていますが、先生が授業を行う前に、どのように授業づくりを構想するのか、あらためて教えていただけますか。

 本書にも書きましたが、これまであまり深く語ることのできなかった部分まで踏み込んで書かせていただきました。なぜ今まで語らなかったかというと、私自身の思いが強くなってしまうからです。けれど、今回は、前のシリーズで一般的なことは語らせていただいてきたので、それを受けて加藤はどのように考え、授業を構想したかにふれたのです。私が授業を構想するときのスタンスは、「一(いち)教師」としてではなく、「教師加藤」として目の前の子どもたちに何がしたいのか、する必要があるのかを、指導書に頼ることなく自分自身で考え、「こういうこときはこうするもの」という一般常識を離れて構想するということです。ですから、時には「そんなのありなの?」と思われるかもしれませんが、それでいいと思っています。そうでなければ、納得のいく授業はつくれないと思いますので。

―「教科書が配布されてから、指導書通りの授業が増えた」という声を聞くことが増えた気がします。教材研究をする際に、どのように指導書を活用すればよいでしょうか。

 はっきり申し上げて、指導書をそのまま使うという発想は私にはありません。あくまでも参考として傍に置き、主導権は自分がもっていることが重要です。そうしないと、自分の授業になりません。自分の授業にならなければ、授業の結果から学ぶことができません。指導書はバイブルではないのです。多面的・多角的な観点を得て、自らの授業展開に幅をもたせてくれるものとして活用しましょう。時に、「指導書にはこうあるけれど、自分はそれには倣わず、違う展開を試みる」というのも「活用法」のひとつです。

―先生は本書の中で「『構想』を超えたところに新しい授業がある」と書かれています。「これは子どもが構想を超えてきた!」というエピソードがあれば、教えていただけますか。

 それはいくらでもありますね(笑)。
 こちらとしては「構想を超えてくる」ところまで「構想」に入れているのですが、それをも上回る子どもたちのパワー、発想の柔軟さ、きらきらした初々しい心に心洗われたり、「へぇ〜!」となったり、授業って楽しいと思う瞬間です。例えば……

【正直、明朗の授業】
 私が担任した2年生の子どもたちとの授業でした。「自分の心に正直になると自分が好きになって、自然に笑顔になるね」というような話をうなずきながら聴いていたとき、H君が「先生、先生も今、笑顔だよ」と言ったのです。思わず鳥肌が立ちました。なんだろう、「ああ、今自分も子どもたちと同じように素直な気持ちでいられるんだなあ」と感じさせてもらった瞬間でした。

【役割の授業】
 専科の6年生です。役割を果たすというのは、与えられた役割を責任をもって最後までやり遂げることと捉えていた子どもたちが、授業を進めるにつれて考えを変えていきます。そしてついには、「先生、役割を果たすというのは、役割にとらわれずに自分ができることをすることだ」と発言しました。「役割を果たすとは、役割にとらわれないこと」。矛盾するけれど、なんと魅力的な言葉でしょう。

 きりがないので、ここまでにします。本編にもいろいろ紹介しているので、お楽しみに。

―最後に、これから「考え、議論する道徳」をさらに進めていこう!という読者の先生方にメッセージをお願いします。

 せっかくの道徳教科化、そして深く考え議論する授業を、工夫して展開しましょうというチャンスをもらったのですから、楽しんで、自分にしかできない授業を目指しましょう。このような授業をつくるためには、ただマニュアルを待っているだけではだめです。できません。エッセンスを感じ取り、消化吸収してください。そして、あなたにしかできない授業を模索していきましょう。その過程にこそ、宝物がたくさん生まれてきます。功を焦らず、目の前の子どもたちを見据えて、お互いがんばりましょう。これはという実践ができたら、記録を取っておくといいと思いますよ。そしてぜひ私にも教えてください。

(構成:茅野)
特集 「特別の教科 道徳」
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