著者インタビュー
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発達に遅れや偏りがある子のための算数ワーク
発達支援教室ビリーブ代表加藤 博之
2018/7/12 掲載
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加藤 博之かとう ひろゆき

筑波大学大学院教育研究科修了。埼玉県内の小学校・特別支援学校及び昭和音楽大学の専任教員を経て、現在、発達支援教室ビリーブ代表。文教大学非常勤講師。学校心理士。ガイダンスカウンセラー。認定音楽療法士。

―本書は『学びと育ちのサポートワーク』のシリーズの7巻『算数「生活に役立つ力」の実力アップ編』として刊行されていますが、本書のねらいをどうぞ教えてください。

 本書は、発達に課題のある子どもたちがつまずきやすい小学校中学年以降の算数学習に焦点をあてています。この段階になると、抽象的なイメージ操作を用いる課題が増えるため、問題解決を行う前提としてしっかりとした基礎を身につける必要があります。その際、ただ易しい問題から順に解いていくだけでは、子どもたちの興味を長続きさせることはできません。まずは、具体的な操作をたっぷり行い、その上で、日常生活に結びついた馴染みのある内容を、視覚的な援助(絵、図、表など)を得ながら、段階的に挑戦していきます。この過程こそが、「生活に役立つ」算数力を高めていくのです。
 

―算数では特に「生活に役立つこと」を大切にされているように感じましたが、本書で身につけた力は具体的にどのように生きてくるものでしょうか?

 例えば、かけ算式をいくらスムーズに解くことができても、いざ買い物などの実際場面で使えなければ宝の持ち腐れになってしまいます。実践力を身につけるために、本書ではワークと実践をいったりきたりすること、あるいは一度解けた問題でも切り口を変え新しい課題として再挑戦することなどを重視しています。それにより身についた柔軟性は、日常生活(買い物、交通機関の利用)にも大いに役立つものと考えています。

―先生は本書で紹介くださっているワークを子どもたちの学習で実際に活用されていますが、学習場面での子どもの様子などエピソードがあれば教えていただけないでしょうか。

 子どもの中には、文章題を読んですぐに「これはたし算、それともひき算?」と聞いてくるケースが見られます。内容よりも、とにかく早く解きたいと思うからです。それでは、本物の力は身につきません。本書では、どの課題においても単純に計算するのではなく、式に至るまでの過程を重視しています。解答に到達するまでの過程をいろいろな工夫で楽しめるようにしたのです。その結果、子どもたちはかけ算やわり算の関係性や利便性を実感し、文章題への苦手意識の克服、図表に親しみ読み取りが上手になる、などの様子が見られるようになってきました。また、ゲームの時、自ら点数表をつけるなどの行動も見られるようになっています。

―本書のワークでは解説部分にワークだけで完結するのではなく関連してどんな活動を行うとよいかも示してくださっていますが、その例を1つ紹介いただけないでしょうか。

 例えば「おつりはいくら」の問題文に取り組む前に、買い物ごっこを十分に行います。お客さん役はもちろんのこと、お店側の役も演じることで、いろいろなお金のやりとりを経験することができます。また、お店の種類も八百屋、本屋、おもちゃ屋など、売る物の種類によって値段や文化が違うということを肌で実感することができました。結果的に、計算力を身につけただけでなく、「いくら出せば足りるか」というお金の感覚や「足りなかったとき相手にどう伝えるか」というコミュニケーション力まで高めることができたのです。これこそがまさに「生活に役立つ力」であると考えています。

―最後に、発達の遅れや偏りがある子への指導にかかわる先生にメッセージをお願いします。

 子どもは、「その子に合ったことをする」「好きな相手と好きなことをする」ことで伸びると言われています。「このことを身につけさせなければ」という「させる」という気持ちは、いくら善意であっても子どもの心には響くことはありません。それどころか、子どもたちが活動する際の「わくわく感」を失わせてしまうことが多いのです。ワークは「解かせるもの」ではなく、子どもとの関係作りに役立つもの、子どもたちと楽しい時間を過ごすための貴重なツールなのです。是非とも、「好きな人と好きなことをする時間」を目指してください。

(構成:佐藤)

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