著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学校現場ではめげない・くじけない・へこたれないことが何より大事!立ち直り力の育て方、学びませんか?
奈良県奈良市立明治小学校長中嶋 郁雄
2018/6/29 掲載
  • 著者インタビュー
  • 教師力・仕事術
 今回は中嶋郁雄先生に、新刊『教師のためのレジリエンス―折れない心を育てる、回復力を鍛える―』について伺いました。

中嶋 郁雄なかしま いくお

1965年、鳥取県生まれ。1989年奈良教育大学を卒業後、小学校の教壇に立つ。「子どもを伸ばすためには、叱り方が欠かせない」という主張のもと、「『叱り方』研究会」を立ち上げて活動を始める。教育関係者主宰の講演会、そして専門誌での発表が主な活動だったが、噂が噂を呼び、大学や一般向けにも「心に響く叱り方」といったテーマで、セミナーを行うようになる。
主な著書に、『その場面、うまい教師はこう叱る!』(学陽書房)、『教師の道標(みちしるべ) 名言・格言から学ぶ教室指導』(さくら社)、『叱って伸ばせるリーダーの心得56』(ダイヤモンド社)、『「しなやかに強い子」を育てる:自律心を芽生えさせる教師の心得』(金子書房)、『クラス集団にビシッと響く!「叱り方」の技術』『新任3年目までに知っておきたい子どもがまとまるクラスづくりの技術』『授業も学級経営もガラッと変わる!「3分間」時間術』『仕事に忙殺されないために超一流の管理職が捨てている60のこと』(以上、明治図書)など多数。

―本書のテーマは“レジリエンス”です。そもそもですが、“レジリエンス”とはなにか、教えてください。

 社会生活の中では、様々な課題に直面したり、ストレスを抱えたりします。このような自分にとって不利な状況から回復する力、逆境を跳ね返す力のことを「レジリエンス」と言っています。

―見通しの不透明な時代だからこそ、レジリエンスが必要なのですね。まさに、めげない・くじけない・へこたれない! これって、子どもだけでなく、大人である先生達にも必要だ、と中嶋先生はお考えだそうですが、それはなぜですか?

 最近の若い先生方は非常に優秀で、「自分はできるべき」「失敗してはいけない」と考えている人が多くいます。しかし、近年の教育現場は、保護者の過剰な要求や、教師を軽んじる子どもの増加などで、教師の威厳が失われています。理想に燃えて教壇に立ってひと月もすると、「できるべき」という理想と、「できない」自分がいる現実とのギャップに苦しむことになります。そもそも、最初からできる教師なんていません。何年も何十年も教師をしていても、できないことや分からないことがたくさんあります。それが当たり前なのです。「できなくて当たり前、だからこそ学ぶ」ことが、実は教師として最も大切な力だと思います。今の若い先生方には、できない自分を受け入れる強さと、失敗や挫折から学び続けるしなやかさを身に付けてほしいと思います。

―Chapter2-5は、主に子どものための場面別・レジリエンスの鍛え方、となっています。若い先生が見逃しがち・指導で苦手さを覚えがちなことがあれば教えてください。

 「こんなクラスにしたい」「こんな学力を身に付けさせたい」と、先生方は様々な方法で子どもを指導していることでしょう。そこで最も大切なのが、「教師の熱意や姿勢」といった、具体的な指導の核になる考え方です。子どもの「レジリエンス」を高めるためには、教師自身がどんなときも物事を前向きに捉え、逆境を跳ね返すしなやかさを持ち合わせておかなくてはなりません。子どものレジリエンスを鍛えるためには、教師自らがレジリエンスを鍛える姿勢を示すことが必要です。

―Chapter6-7では、先生のための場面別・レジリエンスの鍛え方をご紹介いただいています。保護者対応に関しては、チームで取り組むといった意識が醸成されつつあるように思いますが、対・同僚に関してのレジリエンスというのはめずらしいように思います。なぜこの章を入れようと思われたのでしょうか。

 30年間、学校現場で働いた経験から、「どんなに子どもの指導がうまくいかなくても、どんなに保護者との間に大きなトラブルがあったとしても、職員室が安心できる場であれば、課題に立ち向かう力は沸いてくる」と実感しているからです。つまり、同僚と良好な人間関係を築くことが、教師の力量を磨く機会を保障することになるということです。ですから、同僚の良いところを見たり、気になるところはサラリと流したりすることのできる力や、同僚の言動を好意的に受け止める力が、今後もさらに必要になると思います。

―最後に、レジリエンスという考え方をうまく活用して、たとえ挫折しても回復できる、強くしなやかな心を育てたい・持ちたいとお考えの読者の先生方に向けてのメッセージをお願いします!

 子どもを教え育てるということは、子どもが暮らす社会の中で、その子が充実した生活をし、将来幸せな人生をおくるために必要な力を身に付けさせることです。そのためには、厳しく指導し否定することも必要です。危険な遊びをすれば、「ダメだ」と厳しく禁じ、あいさつができなければ、「人としてなっていない」と否定し、人の話を聞いてしっかり勉強するようにしつける…。「もう無理だ」と、投げ出しそうになったら、叱咤してでも辛抱強くやらせ、怠け心に負けないように励まし続ける。最後の最後まで子どもの力を信じて待つ…。それが、子どもが持っている本来の力を引き出すことになるのです。だからこそ、今どきの子には、ちょっとやそっとのことでは挫けない強さや、挫折から立ち直る力が必要になります。その力である「レジリエンス」を鍛えるのは、他ならぬ教師です。ますます変化の激しい世の中で生きていく子どもたちのために、強くしなやかな心を育てようではありませんか。

(構成:林)

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