著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
1から始める中学校「特別の教科 道徳」の授業づくり
上越教育大学副学長林 泰成
2018/4/12 掲載
今回は林泰成先生に新刊『特別の教科 道徳の授業づくりチャレンジ 中学校』について伺いました。

林 泰成はやし やすなり

上越教育大学副学長

―小学校では平成30年から始まりましたが、中学校でも「特別の教科 道徳」が平成31年からスタートしますね! いったい何が変わるでしょうか。

 新学習指導要領のもとでは、どの教科・領域も「主体的、対話的で深い学び」が求められます。道徳科も同様です。そのためには、心情理解を中心とした学習ばかりでなく、問題解決的な学習や道徳的行為に関する体験的な学習を取り入れることが必要になってきます。また、評価が求められているという点も強調しておきたいと思います。数値による厳密な評価をするのではないですが、指導要録にも、記述によって評価の記録を残す必要があり、それが通知表にも反映されることになると考えられます。

―中学校の教師はどんな準備をしておくとよいでしょうか。

 小学校版の道徳科教科書は、8社から出版されましたが、思いのほか同じ定番教材が収録されています。検定を受けることから、各社とも、すでに評価の高いもの、文科省資料として出されたものなどが収録されているのです。ということは、中学校版でも、これまでに高く評価されている教材が再録される可能性が高いと判断できます。定番教材を用いた授業実践で腕慣らしをしておくとよいでしょう。

―本書には25事例掲載されているとのことですが、どんな事例が掲載されているのでしょうか。また、初めて本気で道徳にチャレンジする先生にオススメの事例はいずれになりますでしょうか。

 「九番バッター」や「風に立つライオン」、「とべないホタル」や「二通の手紙」など、よく知られた定番教材を用いた授業実践の例が25事例取り上げられています。これまで道徳授業にあまり熱心には取り組んでこなかったという先生方は、ぜひここで取り上げられている指導過程に従って、追試をしてみてください。ご自身の指導に自信をお持ちの先生方は、ぜひ自分なりの工夫を加えて、授業を展開し、本書に描かれている指導過程とどう違うのか検討し、リフレクション・スキルを磨いてください。皆さんがやっていて楽しい、あるいは、手ごたえがあると感じられるのが一番オススメです。「そんなことはやってみなければわからないよ」という声が聞こえてきそうですね。では、最初から、全部やってみましょう。

―本書の活用ポイントを教えてください。

 本書では、これまで高く評価されてきた定番教材を用いた授業例を紹介しています。こうした定番教材の多くは、さまざまな指導方法に耐えうる力を持っています。心情に焦点化すれば、豊かな情操を育むけれども、理詰めで考えさせれば、今度は、理性的能力を育むのに役立ったりします。本書に記されたとおりに実践するだけでなく、どんな活用が可能かということも考えながら、授業を構想してみてください。

―本書に興味を持ち、楽しく道徳の授業に取り組んでみたいとお考えになる先生にぜひメッセージとエールをお願いいたします。

 道徳は人間の生き方に関わるという点で難しい教科だと思います。しかし、それだけにいっそうやりがいのある教科でもあると言えます。教師が「こんな大人になってほしい」と願っていることを、ストレートに生徒たちに伝えることができます。多少の失敗はおそれずに、先生方の熱い思いを生徒たちに語ってください。熱が入りすぎた発言にはきっと生徒たちから熱い反応が起こることでしょう。それをまた真正面から受け止め、議論することで、「考え、議論する」新しい道徳授業が作られていくのだと思います。善い授業が創り上げられていくプロセスを楽しみながら、教科化に向けて研鑽を積んでいきましょう。

(構成:佐藤)

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