著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
新学習指導要領の趣旨を生かして「考え、議論する道徳」をつくる!
山口県山口市立上郷小学校長坂本哲彦
2018/4/9 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程
今回は坂本哲彦先生に、新刊『小学校 新学習指導要領 道徳の授業づくり』について伺いました。

坂本 哲彦さかもと てつひこ

山口県山口市立上郷小学校長。
山口大学大学院修了。山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭山口県教育庁指導主事、山口県内公立小学校教頭、校長を経て、現職。
『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』作成協力者、日本授業UD学会理事、教師の“知恵”.net事務局、やまぐち道徳教育サークル代表。

―本書では、「特別の教科 道徳」を進めていくために押さえておきたい点を、具体例を交えながらご解説いただいております。4月からいよいよ全面実施となりますが、まずは何から取り組めばよいでしょうか。

 「量的確保と質的転換」という言葉があります。まずは、「量的確保」です。そこで、年間指導計画にしたがって、毎週、道徳科授業を行うことを楽しみましょう。楽しみ方の基本は、二つです。一つは、本年度から使用が始まった教科書にしっかり目を通して、教師自身が道徳的価値について思いを巡らせることです。もう一つは、教材の理解や活用の仕方について教師同士で意見を交わすことです。双方を日常的に行うことで楽しい道徳科授業の基盤ができると考えます。

―本書の中でもたびたび出てくるキーワード「考え、議論する道徳」ですが、具体的にどのような授業を目指していけばよいか教えてください。

 目標にも書かれている「物事を多面的・多角的に考える」ことができる授業が「考え、議論する道徳」の基本です。そのために参考となるのが、文部科学省が例示している「読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習」「問題解決的な学習」「道徳的行為に関する体験的な学習」です。これらは、指導の型を示しているわけではありませんから、それぞれのよさを組み合わせながら、よりよい授業をつくり出していくのがよいでしょう。

―本書の第5章では評価や指導計画について、事例をもとにご解説をいただいております。評価に不安を抱えている方も多いようですが、どのような点が押さえておくべきポイントか、あらためて教えてください。

 最も重要なのは、道徳科における子どもの学習状況を評価するということです。一つは、児童が道徳的価値やそれらに関わる諸事象について他者の考えや議論にふれながら、児童が自律的に思考する中で、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているかを評価します。もう一つは、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかを評価します。「多面的・多角的な見方」「自分自身との関わり」の二つがキーワードです。

―ところで、先生は、校長先生でいらっしゃいますが、授業をたくさんされていらっしゃいますね。先生ご自身が、道徳授業づくりで大切にされていることや、学校経営上で大切にされていることを教えてください。

 自分自身が道徳授業づくりで大切にしていることは、児童と一緒に考える、ということです。児童へ発問する事柄は、大人である教師にとっても考える価値のある内容です。ですから、児童の発言にはっとさせられ、学ばされることもあります。学校経営上で大切にしていることは、道徳科の学びが、多くの学校で目標とされている道徳的な側面(例えば、優しい子とか、温かい子などの児童像)に大きな役割を担っているということです。道徳科をしっかり行うことは、学校づくりの基盤だと考えます。

―最後に、これから「考え、議論する道徳」をさらに進めていこう!という読者の先生方にメッセージをお願いします。

 繰り返しになりますが、道徳科の授業を児童と一緒に楽しむことが一番です。わかりきったことを尋ねるのではなく、教師自身も考えたくなるような発問をして、共に学ぶことがよいと考えます。この本を読んで、それを一層促進してください。

(構成:茅野)
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