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- 学習指導要領・教育課程
教師の指示通りの受動的な学びで授業を展開すると、子どもには友だちの考えを聞く必要感が生まれないからです。
そういった授業では、子どもは自分の考えだけ説明して、それで満足をしています。聞いている子どもも、その説明への興味はありません。そんな中で「となり同士で説明し合いましょう」「グループで話し合いましょう」と、いくら指示をしても、形式的な話し合いが行われるだけです。
このように、「主体的な学び」が生まれていないのに、「対話的な学び」の場面を設定しようとしても、それは単なる発表会で終わってしまいます。
時系列で考えると、問題に対して本質を探る視点で見つめ、その後、統合的・発展的に考え、解決していくことになります。しかし、実際の問題解決では、「見方」と「考え方」が行ったり来たりしています。従って、この2つは同時進行で進むと考えることができます。つまり、「見方」と「考え方」を同時に働かせながら問題を解決していくのです。大切なのは、問題を解決する過程で、どのような「見方・考え方」を働かせているのかを顕在化することです。
教師から一方的に問いを投げかけるのではなく、しかけによって子どもから「なぜ?」を引き出します。その「なぜ?」を解決していく過程で、子どもたちは「昨日の〇〇の方法が使えないかな」「でも、それではうまくいかないよ」などと、自分の思いを表現し、お互いにそれを聞き合い、よりよい解決方法を話し合っていきます。表現し伝え合う必要感を子どもたちにもたせることが大切なのです。
この活動の延長線上に、ペア説明や学習作文などの振り返り活動が位置づくことが大切です。子どもが必要感をもち、これらの活動を行うことで、思考力・判断力・表現力は真に向上していくのです。
今回の学習指導要領の改訂に伴って一番重視すべきことは、子どもが問いを見いだし、その問いを子ども同士で解決していく授業をつくり上げることだと思います。そのために必要なことは、これまでに見られた問題解決型の授業に子どもを当てはめることではありません。形式に子どもを当てはめても、それは単なる教師の自己満足に過ぎません。それでは、学習指導要領改訂の趣旨とは真逆の授業になってしまいます。
子どもの問いを引き出す授業づくり、子どもの思いに耳を傾け、子どもの声で授業をつくり上げる授業構成力が大切です。そのための具体的なヒントや手立てが本書には散りばめられています。本書が、新しい学習指導要領に基づく算数の授業改善の一助になれば幸いです。