著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教師の手立て1つで、算数授業に本音の「対話」があふれだす!
北海道教育大学附属札幌小学校瀧ヶ平 悠史
2018/3/27 掲載

瀧ヶ平 悠史たきがひら ゆうし

 1980年 千葉県流山市生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。札幌市立西小学校、札幌市立日新小学校を経て北海道教育大学附属札幌小学校に勤務。単著に『14のしかけでつくる「深い学び」の算数授業』(東洋館出版社、2017)、共著に『平成29年版 学習指導要領改訂のポイント 小学校 算数』(明治図書出版、2017)、『「資質・能力」を育成する算数科授業モデル(小学校新学習指導要領のカリキュラム・マネジメント)』(大野桂 編著、学事出版、2017)、『子どもをアクティブにするしかけがわかる! 小学校算数「主体的・対話的で深い学び」30』(盛山隆雄ほか 編著、志の算数教育研究会 著、明治図書出版、2017)、『算数授業アクティブ化ハンドブック(算数授業研究シリーズ)』(全国算数授業研究会 編集、東洋館出版社、2016)他多数。児童書では、共著に『子供の科学 2018年1月号』(誠文堂新光社、2017)、『算数好きな子に育つ たのしいお話365』(日本数学教育学会研究部 著、子供の科学 編集、誠文堂新光社、2016)。

―本書は、子ども同士・子どもと教師の「対話」を中心に深めていく算数授業がテーマになっています。新学習指導要領でも「対話的な学び」は重要なキーワードとなっていますが、瀧ヶ平先生が授業の中で「対話」を重視されているのはなぜでしょうか?

 それは、「授業」を通して子どもの心を育てているからです。様々な知識やスキルを子どもに身に付けさせることはもちろん大切なことです。しかし、同時に、子どもたちがその学びの過程で「常に自分の思いや考えをもつこと」「それを互いに尊重し合うこと」「他者の考えに耳を傾け、その価値を感じること」が大切だと考えています。自分と他者とのかかわりを大切にして学ぶ「豊かな心」を育む授業、それが「対話」のある授業だと私は考えています。

―本書では、算数授業を「対話」を中心に深めていくために、子どもが働きかける「スキ間」をつくることが重要なポイントとして挙がっています。この「スキ間」とは何でしょうか? なぜ、「スキ間」が大切なのですか?

 授業の中で子どもが自ら問題や他者に働きかけたり、思考錯誤したりすることができる「時間」「空間」、それが本書で言う「スキ間」です。この「スキ間」の時間にこそ、子どもが自分の意志で考え、判断し、語り合う本物の「対話」が生まれると考えています。システマティックな授業や、たくさんのルールで固められた授業、教師の期待に応えなければならない無言の圧力がある授業では、子どもの本音は出てきません。子どもの本音を引き出せない授業に、本物の「対話」など生まれないのです。

―本書には、「対話」を通した算数授業づくりの15のポイントに加え、35もの具体的なアイデアが掲載されています。35のアイデアの中で、特に「これを取り入れてから、算数授業が大きく変わった」というものがあればご紹介いただけますでしょうか。

 アイデア1の「解けない問題にして提示する」と、アイデア17の「話を『黙って最後まで』聞かせない」でしょうか。教師も子どもも、「算数とはこういうものだ」「授業とは、こうしなければならない」と思い込んでいることは意外に多いものです。きっと、これらの手立てではそうした概念が大きく覆されるのではないでしょうか。教室の雰囲気が大きく変わり、「考えるプロセス」を大切にした学びの価値が、どの子にも見えてくると思います。

―いよいよ4月が目前となっています。新年度からは一方的な説明だけの授業から脱却し、生き生きとした「対話」を通して授業をつくっていきたい! と考えている読者の先生へ、アドバイスをいただけますでしょうか。

 大切なことは、授業を、子どもを「型」にはめないことです。授業が想定していた路線から外れたとしても、それを楽しむ教師の心、子どもに与える時間や場のゆとりをもってほしいと思います。また、教師が絶対的な価値を押し付ける「神様」のような存在では、子どもは自分の思いをなかなか口に出そうとはしません。子どもが「自由に思う、考える」ことを認め、価値付け、「対話」のあふれる授業を創っていきましょう。

―ありがとうございます。最後に、全国の先生方へメッセージをお願いいたします!

 この書籍には、私が大切にしている子ども観や授業観がたくさん詰め込まれています。手にとっていただいた全国の先生方にとって、明日からの授業を変えるきっかけとして、少しでも役立つものとなれば幸いです。ぜひ、私たち教師が評価されるための授業ではなく、本当の意味で、子どもの心と力を育む授業を、これからも一緒に創りあげていきましょう。

(構成:小松)

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