著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「見る力」は「学びの力」
オプトメトリスト奥村 智人
2018/3/2 掲載

奥村 智人おくむら ともひと

キクチ眼鏡専門学校卒業。米国パシフィック大学オプトメトリー修士課程、教育学修士課程修了。子どもの視覚能力の評価、視覚トレーニングを実施するとともに、視覚発達と学習についての研究を行っている。現在、大阪医科大学LDセンターに勤務。American Academy Optometry認定オプトメトリスト(FAAO)、College of Optometrists in Vision Development認定オプトメトリスト(FCOVD)、特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)。

―奥村先生は「オプトメトリスト」でいらっしゃるとのことですが「オプトメトリスト」とはどんな資格なのですか?

 オプトメトリスト(optometrist)とは発達障害の視覚の問題を含む様々な視覚の問題についてサポートをする資格です。
 日本では公的資格として認められていませんが、オプトメトリストが国家資格となっている国は45か国以上あります。教育制度も構築され、国によっては高い社会的地位が確立されています。とくにアメリカでは100年以上の歴史があり、オプトメトリストが提供するビジョントレーニングも一般的なリハビリテーションや療育として広がりをみせています。

―「見る」力につまずきがあると、学校生活ではどんなことに支障がでてくるのでしょうか?

・眼球の動きが不器用で黒板を写すのが苦手
・空間や形を捉える力が弱く、漢字の書き間違いが多い
・視覚的な情報を手や体の動きを連動する力が弱く、書いた文字の形が崩れ、枠からはみ出してしまう
などのつまずきが表れます。

―視力が悪くなると眼鏡をかけますが…「見る」力につまずきがある子はどうしたよいのでしょうか?

 見る力の弱さに対してはビジョントレーニングが有効な場合が あります。子どもたちにビジョントレーニングを実施する場合、発達に合わせた楽しく取り組める内容にすることが必要 です。
 本書では、レベルの調整や楽しく取り組むための工夫を盛り込んでいますので、ぜひ参考にしてください。また、本書では見る力が弱い子どもへの合理的配慮についても解説しています。

―本書にはたくさんのトレーニングが紹介されていますが、オススメのトレーニングを1つ紹介ください。

 様々なタイプの子どもたちにウォーミングアップ的な活動としてビー玉キャッチがお勧めです。本書ではT〜Wに分けて様々なレベルのビー玉キャッチを紹介しています。目の動きがスムーズにできない子、目と手を上手く連動して動かせない子、体を動かすタイミングがうまく合わせられない子など様々な状態の子どもたちの基礎的な練習になります。
 本書に掲載しているQRコードやアドレスからアクセスいただき、インターネット上で指導場面の動画を見ることができます。やり方をすぐに理解いただけると思います。

―ビジョントレーニングに取り組んでみようと思われている先生に、一言エールをお願いします。

 発達や認知の視点で子どもたちの学力を見てみると、文字や鉛筆の勉強の前に、目や体を動かす活動が必要な子どもたちがいることがわかります。ビジョントレーニングは、「注目して見ること」「見て理解すること」「見て操作すること」を通して、子どもたちの発達を支えます。ぜひ、子どもたちの見る力に注目してビジョントレーニングや合理的配慮を行ってください。見る力が弱い子どもたちの笑顔ややる気を引き出す第一歩です。

(構成:佐藤)

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