著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教育現場発信の「幼児と保育者の心のかよい合い」による集団づくり
広野幼稚園園長吉村 裕
2018/2/20 掲載
 今回は吉村 裕先生に、新刊『幼稚園 365日の集団づくり 日常保育編・年間行事編』について伺いました。

吉村 裕よしむら ゆたか

1935年京都府生まれ。学校法人広野学園理事長、社会福祉法人広野保育所理事長、広野幼稚園園長。一般企業へ就職の後、1963年広野幼児園着任から、全国各地の幼稚園並びに幼児教育を徹底して視察。その数50数園。1981年、園長就任とともに、年間・月間カリキュラムの検討会議を充実させ、本書の中核を成す「デイリープログラム(指導案)」を教育・保育充実の根幹に据える。また、“子どもの心”を理解するために日常のさりげない子どもたちの“言葉と行動”を収集、その数は6000を超える。82歳の現在も現役として活躍中。本書『幼稚園 365日の集団づくり 日常保育編・年間行事編』を丸山克俊氏と共同編著。

―本書は、幼稚園1年間365日の集団づくりのポイントを、「日常保育編」「年間行事編」の2冊にわかりやすくおまとめいただいています。まず、本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書は、私たちの園で35年間積み上げてきた「ある日(期間)の日常保育」並びに「年間行事」についての“指導案”(2ページ)、約30年間収集してきた保育現場での“天使のひと言&子どもの行動”(1ページ)、そして、よりよいクラス運営(集団づくり)に日々努力している先生方の“保育日誌”(1ページ)を項目毎に4ページにまとめました。興味、関心がある項目からお目通しください。

―編著者でいらっしゃる吉村先生が園長をされている広野幼稚園では、日常の保育や行事について「デイリープログラム」という形で、長年積み重ねられてきた“指導案”がありますね。本書でも具体的に紹介されていますが、この「デイリープログラム」について教えてください。

 この「デイリープログラム」は、本園の教育・保育の質を高めたいという一念で作成してきました。各先生たちは折にふれて、本書の各項目にあるようなテーマで作成されている「デイリープログラム」を読み込んで教育・保育にあたります。終了後は、少々の改訂を加え(いわば事後指導案です)次年度につなげていきます。本園で長年務めていただいたたくさんの先生方の後輩へのメッセージであり、特に、経験の浅い先生方でも“一定水準の教育・保育”を展開できることも魅力です。

―本書の大きな特徴の一つに、子どもたちがふとつぶやいた“天使のひと言”があります。本書では感動した子どもたちの声と行動としてまとめられており、おもしろく、楽しく、かつホッとする内容が詰まっていますが、このような子どもの声を集めようと思われたきっかけを教えてください。

 幼児教育に携わる人々の永遠の課題は、“子どもの心を探る”ことだと思います。ある年のこと、私が先生方に「感動した子どもたちの声と行動」を収集しようではないかと提案しました。これに応えた先生方の熱意と意欲は素晴らしく当初は爆発的に集まり、平成4年から6年間は、毎年一冊の本にしました。今日まで約30年にわたって6000有余、“残すに足る”と信じたものを記録してきました。ささやかな努力が結晶し報われた感じです。

―本書の中には、子どもたちの笑顔あふれる魅力的な写真が、豊富な資料とともに紹介されていますが、この間の活動において、先生が大切にされているものは何でしょうか。

 子ども時代は誰にでもあります。そして、このかけがえのない幼児期に、どのような教育を受けたかということはとても大切です。全国津々浦々どこの幼稚園・保育所等も同様だと思いますが、私たちは幼児教育のプロフェッション(専門職)としての「考え方や生き方」を大切にし、常に子どもたちの“心のステージ”に寄り添いながら、様々な工夫をしてきました。本書でその一端をご紹介できたことは望外の喜びです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 わかっているようでわからないのが子どもです。子どもたちの広い心の世界をどのように理解できるのか日々模索しています。私たちはまさにプロフェッションとして、その努力を怠ってはならないと自戒しています。日々の保育、そして、成長のホップ、ステップ、ジャンプにもつながる年間行事を通して、教育・保育の内容や方法を吟味して、一日一日を誠実に過ごさなければならないと思います。本書がそのために少しでもお役に立てれば幸いです。

(構成:及川)

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