著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
英単語は知らなくても読める!書ける!
神戸山手短期大学准教授村上 加代子
2018/2/8 掲載
 今回は村上加代子先生に、新刊『読み書きが苦手な子どものための英単語指導ワーク』について伺いました。

村上 加代子むらかみ かよこ

米国ウィスコンシン大学マジソン校卒。神戸山手短期大学准教授。
学習障害のある児童生徒対象の「チャレンジ教室」を主催。英語教科における特別支援やユニバーサルデザインの啓発活動に積極的に取り組んでいる。英語教育ユニバーサルデザイン研究会代表。教員間の情報交換のプラットフォームづくりを目指している。

―英語の「読み書きが苦手」な子どもたちはどんなところで困っているのでしょうか。

 日本の小・中学生はアルファベットといえば名前読み(Aをエイと読む)しか知りませんが、本来アルファベットはかな文字と同じように文字と音を対応させて読む表音文字です。学校では文字の音(おん)読み(Aを/a/と読む)を習っていないことから、なぜbookを/book/という音になるのかわからないまま丸暗記をします。暗記だけで1000語、2000語といった単語を覚えるのは本当につらいですよね。単語の暗記で躓くと、語彙、文法、読解といった上位の活動にも影響が出ます。

―本書が扱う指導法は、最新の研究に学んだものですが、教えるのが難しいということはないのでしょうか。

 本書は、フォニックスを知らない先生、音韻認識指導を知らない先生でもできる指導を、と願って作りました。それでもまだまだ音韻認識指導は見たことも聞いたこともないので「難しい」と感じる方もおられるかもしれません。ですが、音の指導は「足す」「割る」の2パターンしかありませんので安心してください。また、何よりも子どもの反応は正直です。ワークの順番通りに進めていくと、すぐに当たり前のような顔をしてどんどん単語を読んでいきます。「音から文字」、「文字から音」の変換スキルを一緒に身につけるつもりでぜひ試してみてください。

―音を「足す」「割る」指導について、もう少し詳しく教えていただけますか。

 文字と音を対応させるために必要なスキル獲得に特化した指導です。アルファベットの音(おん)を「足す」(/s/、/a/、/d/を足すと/sad/)、「割る」(/sad/を/s/、/a/、/d/の3つの音に分ける)といった操作ができるようにします。具体的には、手やマグネットを使って音(おん)を視覚的に示します。手やマグネットをくっつけたり、離したりして単語を作ったり、分けたりしていきます。
 実際に生徒達にこの指導をした後では、音素の混成や分解のスコアが伸びており、同時に、単語の読みと書き取りスコアも向上していました。慣れればすごくスムーズにできます! ぜひ試してみてください。

―小学校でも英語が教科化され、読み書きの指導が始まります。英語の読み書き指導の導入で最も大事なことは何でしょうか。

 今回のワークブックには含んでいませんが、小学生にとってアルファベットの文字の定着は、これから重い課題となるでしょう。特に小文字は左右上下の反転が起こりやすく、文字の特徴に合わせた指導の配慮等が必要です。漢字学習と同じように「書かせて覚えさせる」指導をすれば、予想している以上に子どもたちの負担になり、英語嫌いを作りかねません。小学校ではまず文字の指導と練習に十分な時間を取ること。そして多感覚を取り入れてイメージ(絵)や色、動きなどで楽しい活動から始め、アルファベットの音や形に慣れ親しむことが最初です。文字の書き順は決まっていませんし、書字の間違いを厳しくチェックしないことも大切です。

―最後に、英語の読み書き指導に取り組む全国の先生方にメッセージをお願いします!

 私はフォニックスの専門家でもなく、英語は暗記で覚えましたが、英語圏の様々なフォニックス教材を学ぶうちに「子どもが読んでいくうちに自然に読めるようになる」教材を日本の子どもたちにも作りたいと思うようになりました。本書に含まれている音韻操作や文字の操作は、本当に基本的なものですが、最後のリストにあるような単語が初見で読めるようになります。指導の負担をなるべく減らし「どの子もできるように」と、細かなステップを組んでいます。英単語は「知らなくても読める・書ける」を体験できる、はじめの一歩となりますように。

(構成:広川)
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