著者インタビュー
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よりよく「生きる・働く」ための特別支援教育のキャリア教育
元愛媛大学教授上岡 一世
2017/9/22 掲載
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上岡 一世うえおか かずとし

元愛媛大学教授。
1946年高知県生まれ。高知大学教育学部卒。鳴門教育大学大学院修了。
高知大学教育学部附属中学校教諭(特殊学級),愛媛大学教育学部附属養護学校教諭,愛媛大学教育学部助教授,愛媛大学教育学部教授,愛媛大学教育学部附属特別支援学校校長を歴任。
専門は特別支援教育。

―特別な支援を受ける子どもたちが、学校卒業後によりよく「生きる・働く」ために必要となる力とはどんな力でしょうか。

 子どもたちの学校卒業後の生活は、職場で働くことができるようになることが目標ではありません。いくら就職できても、家庭生活の質、地域生活の質、職業生活の質が低いのであれば、よりよく生きる・働く生活ができているとは言えません。言うまでもなく生活の質の高さは、できることやスキルを持っていることにより決まるのではありません。できることやスキルを引き出し、生かす内面の働きが重要です。意識してできる力、主体的にできる力、意欲的にできる力こそが、生きて働く力となることを理解しておく必要があります。
 

―特別な支援を受ける子どもたちが、学校卒業後によりよく「生きる・働く」ために学校でしておくべき教育はどのようなものでしょうか?

 これからの教育は、自立、社会参加、就労を目標とした教育を行うのではなく、人生の質を高めることを目標とした教育を行う必要があります。具体的には、自立、社会参加、就労を実現するための学校教育12年間の在り方を考えるのではなく、学校卒業後の人生の質を高めるためにはどういう学校教育12年間でなければよいかを考えるのです。 就労はもちろん重要です。しかしもっと重要なのは、学校卒業後に人としてよりよく生きる、働く生活ができるようになることです。職業生活は送っているが、生活の質が低い人がたくさんいます。これはこの教育が目指している教育ではありません。

―本書に、福井県立嶺南西特別支援学校のとても効果があった生活単元学習と作業学習の実践事例を掲載くださっているとのこと。どういった点が成功のカギとなったのでしょうか。

 今では、全国のほとんどの特別支援学校がキャリア教育を取り入れた実践を行なっています。しかしながら、キャリア教育を取り入れた授業とはどういう取り組みなのか、また、その成果を具体的に示すとなると、まだまだ多くの学校で苦慮しているのが現状です。そこで、筆者はキャリア教育を取り入れた授業のモデルを示すために、福井県立嶺南西特別支援学校の先生方と共に5年間にわたり授業の在り方を見直し、指導内容、指導方法の改善に向けた実践研究を積み重ねてきました。本書ではその成果モデルを掲載しました。本校では、子どもたちが教師に頼らず、役割、課題を主体的に果たすという、自ら学ぶ学習が当たり前のように展開しています。子どもたちの持つ力を引き出し、意欲的に取り組む授業を、是非参考にしてほしいと思います。

―学校を卒業後、子どもたちにはどんな生活を送ってほしいと考えていらっしゃいますか?理想の姿を教えてください。

 教育とは、人間が人間として人間らしく生きていくためにはどうすればよいかを考えることです。具体的には、自分を生かした生活、自分らしさを発揮した生活、自分を主体とした生活を実現するということになります。しかしながら、今の教育は、させられる生活、指示される生活、与えられる生活など指導者主導の生活が多く、子どもたちが生活の中で自分の存在を示したり、自分の存在を意識したりすることができにくい教育が当たり前のように行われています。筆者は、こういう生活を改めなければいけないと考えています。能力や障がいにかかわりなく、自分の存在を実感できる生活を実現することが、人生の質の向上につながる理想の生活と考えています。

―本書に興味を持ち、取り組んでみたいとお考えになる先生にぜひメッセージとエールをお願いいたします。

 次期学習指導要領は、キャリア教育のより一層の充実を求めています。言い換えれば、キャリア教育を取り入れた実践ができていなければ、次期学習指導要領には対応できないということになります。是非、本書を通して、今一度、特別支援教育にキャリア教育が取り入れられたことの意味とキャリア教育を取り入れると授業は、どこが、どのように変わらなければならないかを、把握、検討してほしいと思います。願わくば、本書に書かれていることを参考にして、実践を積み重ね、内面を育てる教育の重要性とその効果を、それぞれで実感してほしいと思います。

(構成:佐藤)

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