著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アクティブ・ラーニングの視点で授業改善し、深い学びを実現しよう!
岐阜大学教育学部英語教育講座教授巽 徹
2016/8/18 掲載
今回は巽徹先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校英語科の授業プラン』について伺いました。

巽 徹たつみ とおる

岐阜大学教育学部英語教育講座教授。
埼玉県公立中学校の英語科教員を経て、英国教員資格QTS(Qualified Teacher Status)取得。英国デボン州Tavistock College勤務の後、2007年より岐阜大学教育学部勤務。専門は英語教育学。文部省研究開発校、岐阜県英語教育強化地域拠点事業等の運営指導委員として、小中高の英語教育改善に取り組む。

―アクティブ・ラーニングの本には類書もありますが、本書はどのような定義でALの実践を紹介していますか?

 英語科におけるアクティブ・ラーニングを考えるとき、本書では、次の3つの視点で英語の学びを見直し、改善しようとしています。

  1. 英語を使いながら定着・発展を目指す、言葉の習得過程を大切にした「学び」の過程が実現できているか。
  2. 他者との協働により、英語への気づきや理解が深まったり、英語の技能が上達したりするような対話的な「学び」が実現できているか。
  3. 学習者が英語で何ができるようになるか見通しを持って学習に能動的に取り組み、学習活動を振り返って次につなげる、主体的な「学び」の過程が実現できているか。

 これらの視点に立った実践を本書ではアクティブ・ラーニングと考えています。

―本書は理論編の1章、学年別授業実践編の2章、評価編の3章で構成されています。それぞれどのように活用できるでしょうか?

 1章では、とかくアクティブ・ラーニングというキーワードだけが先行し、英語授業におけるアクティブ・ラーニングとはどうしたらよいかがあいまいである現状から脱して、どのような学びを目指すのかを簡潔に述べています。
 2章の実践編では、先の3つの視点に立った優れた実践を積まれている先生方の授業を「学習場面」「技能」の側面からそれぞれの特徴をとらえて具体的に示しました。これらの実践例から、帰納的にアクティブ・ラーニングとは?ということを考えていただけるように、実際のワークシートや生徒の作品・感想等も含めて紹介してあります。
 3章の評価編では、学習のねらいに合わせた評価方法の例として、「パフォーマンス評価」「Can-Doリストの形での学習到達目標」「ルーブリックの活用」「ポートフォリオの活用」などについて取り上げてあります。

―学年別の実践編にはどのような事例が紹介されていますか?

「自律的学習者を育成し、スピーチにつなげる音読活動」(1年)
「小学校との合同授業の取組み」(1年)
「ピクチャーカードを活用したアクティブ・リスニング」(2年)
「ワード・サーチによるアクティブ・リーディング」(2年)
「教科書を何度も繰り返し活用するラウンド制」(3年)
「既習言語材料・学習内容を活用させるDiscussion」(3年)

など、生徒が能動的に学ぶための実践例を幅広く紹介しています。

―アクティブ・ラーニングの授業改善のために、教師は日々どのようなことを心がける必要があると、先生はお考えになりますか?

 教師は、英語の知識や技能を生徒がどのように身につけていくかという学びの過程をいつも考えておく必要があると思います。そして、それぞれの学びの場面を生徒主体の学びの場に変えていくために、どのような工夫が可能なのか常に考えたいと思います。実はこの工夫を思いつくのがとても大変なのですが、同時に楽しみでもあります。

―最後に小学校英語の教科化も正式に決まりましたが、中学校で英語を教えている先生方に一言メッセージをお願いします!

 小学校で慣れ親しんだ英語を上手に生かしながら、生徒が「英語でこんなことができるようになった」と実感する場面が多く持てるような授業づくりを先生方と一緒に考えていきたいと思います。

(構成:木山)
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