著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学びの文脈を創る国語授業のアクティブ・ラーニングとは?
大妻女子大学准教授樺山 敏郎
2016/7/12 掲載

樺山 敏郎かばやま としろう

公立小学校教諭、教頭、教育委員会指導主事を歴任後、2006年4月より9年間、文部科学省国立教育政策研究所学力調査官兼教育課程調査官として小学校国語を担当。2015年4月より大妻女子大学家政学部児童学科准教授。

―本書は「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」という三つの学びの過程を重視しています。三つの学びについて簡単に教えてください。

 次期学習指導要領改訂において示される資質・能力を子供たちに育むために、指導方法の不断の見直しの視点として示されたものであります。三つの学びについては、個別の検討とともに、これらの有機的な関係付けや統合を図ることが重要です。とりわけ、「深い学び」をどのように実現させていくかが鍵です。国語科では、先行き不透明な未来を生きる子供の視座に立って良質な課題を設定し、それを探究していこうとする子供たちの意欲をより一層高め、習得した知識や技能を活用して思考力、判断力、表現力を育成する指導の在り方を検討していくことが求められます。

―本書のPart3からPart5では三つの学びを実現する実際の授業づくりの具体例が示されています。この部分の活用方法を教えてください。

 本書は、小学校国語科におけるアクティブ・ラーニング型の授業の創造のために、学校現場の悩みに応えるように構成しました。その悩みとは、Part3からPart5に示した五つの小見出しになります。目次を参照していただくとお分かりかと思います。各小見出しについての基本的な考え方について述べたあと、実践レベルでの具体的な指導のポイントを分かりやすく示しました。各学年や各単元に合わせて、それらのポイントを参考にすることができるものと思います。

―本書はアクティブ・ラーニング型授業に取り組む先生方に向けたスタートブックになっています。アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善のためにはどのような意識が必要でしょうか。

 アクティブ・ラーニングは、平成20年版学習指導要領において一丁目一番地とされた、言語活動の充実の延長戦上にある理念であります。まずは言語活動の充実を更に工夫改善することにより、自ずとラーニングはアクティブになることが期待されます。しかし、留意すべきはその質の向上です。子供たちの主体的かつ協働的な学びを重視しつつ、教科等の本質に迫る深い理解につながる言語活動や学習活動になっているかのリフレクションが重要です。見通しや振り返りについても、形骸化していないでしょうか。私は昨今、各地の国語科の授業参観を通して、特に教えることと考えさせることの均衡について課題を感じています。そのことについては、本書pp.50−51に私見を述べていますので参考にしてください。

―本書で大切にしている三つの学びの過程は、国語以外の教科でも応用できるのでしょうか。

 三つの学びの過程の中で、とりわけ対話的な学びについての基本的な考え方は、国語科以外の教科等でも活用していただけるものと思います。本書pp.76−93で示したとおり、子供同士の話合いをどのように活性化させるか、質の高い話合いの実現に何が必要なのかなどについては、本来言語に関する能力を育成する基幹教科としての国語の役割が大きく左右します。それは汎用的な能力であり、各教科等の指導と補完していくことが重要であります。国語科は今後も引き続き言語生活に生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる言葉の力を身に付けることが重要です。

―最後にアクティブ・ラーニングに取り組む全国の先生方に、メッセージをお願いします!

 私は、アクティブ・ラーニングに必要な視点としている三つの学びの過程を統合することを狙って、「学びの文脈を創る」という用語を使っています。文脈とは、文中の語の意味や文章中の文と文との続きぐあいのことを指しますが、「学び」という概念で捉えた場合、それは学びの連続性や発展性のことであります。学びの文脈を創るには、子供たちの意識の中に分かりたいという知的な欲求やできるようになりたいという願望、他者に伝えたいという表現意欲を学びの基軸とした適切な目標や課題が設定されているか、その達成や課題解決のために自立・協働・創造を志向する学びが実現しているかなどについて検討することが大切です。ぜひ、生涯にわたって学び続ける子供たちに質の高いアクティブ・ラーニングを実現できるように本書を活用してくださると幸いです。

(構成:木山)
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