著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
マンガでわかる!特別支援教育のキーワード
医療法人理事 SSTofASD研究会代表大西 潤喜
2016/7/2 掲載
今回は大西潤喜先生に、新刊『マンガでがってん!はじめての特別支援教育ガイド』について伺いました。

大西 潤喜おおにし じゅんき

愛媛県公立学校教員(小・中学校勤務)
愛媛大学教育学部聴覚言語障害児教育課程(非常勤講師)
愛媛県教育委員会 指導主事(四国中央市教育委員会派遣)
四国中央市 発達支援室長
四国中央市 発達支援センター所長を経て
現在、医療法人理事 SSTofASD研究会代表

―本書は、大西先生が特別支援教育の研修会などで先生方が困っていらっしゃること、知っておいていただきたいと感じられたことなどを中心におまとめくださったかと思います。特に本書で先生が大切にされたことは何でしょうか?

 大切にしたいのは「サイエンスとアート」のバランスです。ここでのサイエンスとは、法令や制度や検査を根拠とした知識で、アートとは、個々の発達特性や環境要因や感情といった不確かなものを見極める熟練した技術です。このサイエンス(知識)とアート(技術)の一方が強かったり欠けたりすると教育効果は半減します。そこで、本書では基本となるサイエンスとアートを視覚的な事例や道徳資料で提示し、初めて特別支援教育に接する先生が気軽に読めるよう工夫しました。

―本書でキーワードとしてあげてくださっている「個別支援計画」の重要性を教えてください。

 私は教育行政職として、四国中央市発達支援センターで個別支援計画を創設し8年間運用に携わりましたが、その中で何より重要だと感じたのは「本人のニーズを計画に反映すること」と「支援をつなぐこと」でした。本人の願いや悩みや希望を理解していないと支援の方向性を誤ったり、二次障害をつくったりすることになります。ですから、個別支援計画を作成する支援会議の意義はとても大きいと思います。また、私がセンターで担当した生徒が、小学校・中学校・高校と個別支援計画を引継ぎ就職しました。個別支援計画の作成には時間と労力を要しますが、長期間正しい理解と適切な支援を継続することで、生徒の人権が守られ進路を保障することができたと思います。

―先生は障害のある子に向けて「イラストを使った指導・サポート」を提唱されておりますが、これはどのようなものですか? 本書サポートサイトhttp://www.meijitosho.co.jp/249918#supportinfoでは、たくさんのイラストが用意されていますがこれはどのように使うのでしょうか?

 これは通級指導教室を担当していた時にSSTや言語学習の個別指導用に作成した教材です。以下は、簡単な展開例です。

@子どもの発達課題(SST/言語学習)と学ばせたいスキル(挨拶・謝罪・叱責/構文・文法)に適したイラスト場面(学習・運動)を選びます。子どもの生活体験と結びつく設定が大切です。
A指導者が一人の登場人物Aを担当し、その吹き出しに学習課題に導くための言葉や思いを書きます。(Aの発話は事前記入も可)
BAの発話に対して、子どもが他の登場人物Bの言葉や思いを考えます。指導者は会話がねらいにそった内容になるよう展開します。
C指導者は、登場人物AとBの会話や気持ちや立場の変化を通して、子どもに学ばせたいスキルや課題を整理しながら指導します。
Dイラスト学習を子どもの生活体験に置き換えた指導をします。

※イラストは、本書の5つのワーク<統語面の指導、語用面の指導、言語的な推論学習、自他の感情を推測する学習、登場人物の性格を推測する学習>と併用します。

―同じ学校・教室にいる子どもたちへは、障害の特性をどのように教えていけばよいのでしょうか?

 対応は、障害特性や対象となる学年により異なりますが、まず周りの子どもたちの発達段階(理解力・心の育ち)を見極めて、指導形態が学年集会・学級指導・特別活動・道徳・個別指導のどれが良いのか考えます。しかし、いずれの場合も障害を感じ取る「子どもの感受性」に響くことができるかどうかが指導のポイントになります。日頃、障害のある子どもと一緒に生活する中で、周りの子どもたちが障害を肯定的に捉え、個性として認め合える教育環境が作れているか否かが重要になります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 私は、特別支援教育で学びたい知識や身につけたい技術があると、夜行バスに乗って休日の学会や研修会に参加しました。それは、不安な気持ちで子どもと向き合う自分が情けなかったからです。それでも、指導効果が乏しく障害の改善も見られない時などは、ストレスからチックになったり落ち込んだりしたものです。特別支援教育には、これが絶対という教科書や指導法はありませんので、一人一人の子どもに合った方法を教師が試行錯誤しながら見つけるしかありません。でも、そんな苦労が特別支援教育の魅力であり醍醐味だと思えるようになると幸せなのかもしれません。

(構成:佐藤)
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