著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
入門期教材だからこそ、楽しく力の付く授業づくりを目指した“たしかな教材研究”をしよう!
立石 泰之ほか
2016/6/4 掲載
 今回は立石泰之先生・川上由美先生に、新刊『国語科重要教材の授業づくり たしかな教材研究で読み手を育てる「おおきなかぶ」の授業』について伺いました。

立石 泰之たていし やすゆき

1972年、福岡県春日市に生まれる。東京学芸大学卒業。福岡県公立小学校教諭、広島大学附属小学校教諭を経て、現在、福岡県教育センター指導主事。全国大学国語教育学会、日本国語教育学会会員。全国国語授業研究会理事。

川上 由美かわかみ ゆみ

1986年、広島県府中市に生まれる。広島大学教育学部卒業。青年海外協力隊、広島大学附属小学校講師、広島県公立小学校教諭を経て、現在、山口県公立小学校教諭。

―本書は、昨夏ご好評をいただいた「国語科重要教材の授業づくり」シリーズの続編です。重ねてにはなりますが、本シリーズのねらいを改めて教えていただけますか。

立石:次期学習指導要領の改訂が目前に迫る中、育成すべき資質・能力新たな学習指導の在り方が問われています。しかし、どんな状況でも、授業を構成する要素が「子ども」と「教師」と「教材」であり、教師に教材研究する力が求められることには変わりありません。そして、長く教科書に掲載されている文学教材には、教材として愛される理由があります。本シリーズでは、それらを“重要教材”と位置づけ、その教材としての価値を教師自身が読み解き、子どもたちの読む力を高める実践へとつなげられるよう構成しました。
 一つの教材の教材研究、実践をとおして、教材に対する見方や授業づくりのポイントなどを参考にしていただければと思います。

―今回の重要教材は、一年生で学習する「おおきなかぶ」です。ズバリこの教材の魅力はなんでしょうか。

川上:小学校に入学して間もない子どもたちが、共通して学習する教材(※注)がなぜロシアの民話なのでしょう。それは、この「みんなでかぶを抜く」という単純なストーリーの中に、入門期の子どもたちに学ばせたい文学教材のエッセンスが凝縮されているからです。その一つ目が、「繰り返しと変化」があること、二つ目が、「リズムのよさ」、三つ目が、「物語が感じさせるテーマ性」です。本書では、その魅力について一つひとつ丁寧に分析しました。

―一年生初期の物語文ということで、『そんなに難しい教材文ではないのでは…』と思う先生もいらっしゃるかもしれません。入門期の教材研究について、川上先生はどのようにお考えですか。

川上:教材研究とは、「教材の分析・解釈」と「指導方法の構想」のことです。教材に何が書かれているのかがわかればいい、というわけではありません。
 入門期という子どもたちの発達段階を理解した上で、教材の特性を踏まえ、何をどのように考えさせていくのか、を考えることが大切です。
 確かに、入門期の教材には難しいことばも出てきませんし、複雑な展開もありません。それでかえって「何を教えていいのか分からない」「指導書通りにやればいい」と安易に考えがちですが、まずは教師が、子どもの発達段階をしっかりととらえ、目の前の子どもたちが楽しく力を付けられる授業を目指して、教材研究をしていきたいですね。

―入門期だからこそ身に付けたいことはなんでしょうか。とりわけ、この「おおきなかぶ」でつけたい力について、教えてください。

川上:入門期の子どもたちは、文字のまとまりをことばとして認識したり、文章からイメージを広げたりすることが十分にはできません。そこで、入門期の文学の授業では、イメージをつくり、広げさせることが大切です。
 「おおきなかぶ」では、この教材の特性を生かし、「ことばの響きやリズムを感じる力」と「文脈から様子や状況、気持ちなどを想像する力」を育みたいと考え、授業を構想しました。

―教材研究力を高めてよい授業づくりをしたいと願う読者の先生方に向けて、メッセージをお願いいたします。

立石:「教材研究力を高める」には、教材に対する見方・考え方を磨くこと見出した教材の特性と子どもたちの状況、そして指導目標から適切な学習活動を設定するバランス感覚を磨くことが必要だと考えます。しかし、それは一朝一夕に高められるものではありません。
 先生方が「教材研究力を高める」経験を積み重ねられる中で、本シリーズの中に述べました私たちなりの「答え」が、その一助となれば幸いです。

※現行の平成27年度版教科書では、光村図書・東京書籍・教育出版・学校図書・三省堂の5社すべてに「おおきなかぶ」は掲載されています。

(構成:林)
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