- 著者インタビュー
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今、教育界は大きな転換点に来ていると言えます。従来のような教科ごとに指導内容を定め、それぞれに力をつけていくという発想から、教科を越えた汎用的な力をつけることに主眼が置かれてきています。子どもの学びにおいて必要な「言葉の力」は、教科を越えて思考する、表現する場で必要ですし、仲間や先生と対話するコミュニケーションの場においても「言葉の力」は欠かせません。国語科をゼロから学ぶことは、教科の中で「言葉の力」を育てていくために国語科をあらためてゼロから見直すことでもありますし、教科を越えた学びの場で発揮できる「言葉の力」をどのように育てるべきかを考えることでもあります。
人に届く声で音読できたり、人の話を一生懸命に受け止めようと耳を澄ましたりできる、言語活動の基礎基本です。例えば、人に挨拶をするときも、相手に聞こえない声では挨拶をしたことになりません。音読も、クラスみんなに聞こえる声が出せることが必要です。
私たちは普段、当たり前のように言葉を使って生活していますが、授業の中でそれを少し自覚するだけで、声の大きさが変わったり、人の話を聞こうと思って聞けたりできるようになります。こうした子どもの姿を褒めながら、教室を学びの場にしていくために必要な力を身につけさせていくことを「足腰を鍛える」と表現しています。
アクティブ・ラーニングは、子どもを学びの主役にすることを、今まで以上に意識することが必要です。とくに国語科は、学習のめあてを立てる段階から、子どもが受け身になりがちです。子ども達に、学習の目的意識をもたせること、そのために、子どもから問題が発見できるとか、課題が設定できるという力をつけていくことが大切になっていくと考えています。
もう一つは、子どもの学び手としての意識を高めることです。授業の後の振り返りを、子どもの言葉で書かせる時間を確保し、その時間に子どもにどのような学びがあり、何に気づけたのか、あるいは、自分は何を頑張ったかを、子どもに振り返らせるようなメタ認知の場をつくっていくことが大切だと思います。
文章を丸ごと読む読み方を、ぜひ試してみてください。ポイントは、「数える」ことと「選ぶ」ことです。「数える」ことで、文章の大枠が見えてきます。また、「選ぶ」ことで、文章の中でのそれぞれの役割が浮かび上がってきます。
これは物語文でも説明文でも使えます。たとえば、『大きなかぶ』の物語では、「お話に出てくる人は何人でしょう?」と1年生に尋ねてみてください。3人、6人、7人と答えがバラバラになります。ズレができた方が、本当はどれが正解か、を求めてもう一度読みたいという問題意識が生まれ、文章をあらためて丸ごと読み返します。これは、「登場人物とは」という学習の一コマです。
このような読み方を、1年生から6年生まで系統的に積み重ねると、長文を短時間で丸ごと読むことのできる力を身につけさせることができます。
教育には不易と流行があります。とくに言葉の学びには、不易の部分は大切ですので、若手の先生もベテランの先生も、本書を通して、言葉の力をつけるための不易の部分を読み取っていただければと思います。一方で、新しい時代の教育に即した授業づくりも必要ですから、これからどのような意識や構えで、新しい授業をつくればよいのか、そのためのヒントが見つかればいいなと思います。
言葉の力は、学びの場における思考にも、表現にも、コミュニケーションにも欠かすことができません。子どもの学びを充実させ、子どもに未来を生き抜くための言葉の力をつけるために、本書が少しでも役立てればと願っています。