著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「はてな?」を追究する授業で、教師も子どもも社会科好きに!
立命館小学校教諭柳沼 孝一
2016/1/25 掲載
  • 著者インタビュー
  • 社会
 今回は柳沼孝一先生に、新刊『小学校社会の授業づくり はじめの一歩』について伺いました。

柳沼 孝一やぎぬま こういち

1966年福島県生まれ
上越教育大学学校教育学部卒業
会津若松市謹教小学校(1988年〜)
著書に『授業の工夫がひと目でわかる! 小学校社会科板書モデル60』(明治図書)

―本書の第1章の「とにかく社会科が大好きだ!」という章題は印象的です。授業がうまくなるにはその教科のことを好きになることは重要だと思いますが、柳沼先生ご自身は、社会科のどんなところがお好きなのでしょうか。

 「はてな?」を追究していく中で人の熱き思いや知恵に出会えることが、社会科の醍醐味でもあり、私が大好きなところです。
 3年「古い道具と昔のくらし」の学習で「湯たんぽ」を取り上げました。それは「呼吸する湯たんぽ」という宣伝広告を目にしたのがきっかけです。「湯たんぽが呼吸する? なぜ? どうして? 生産者に会ってみたい! 追究してみたい!」。私は、さっそく名古屋市にあるT会社を訪ねました。そして、働く方々の熱き思いや知恵に心動かされ、教材化がスタートしたのです。この一連の物語があるからこそ、社会科が大好きなのです。

―本書では、社会科の授業をしていくうえで、「まずはこれだけ押さえよう」ということがいくつか示されています。その中の1つとして、「はてな?」が生まれる瞬間を授業につくることがあげられていますが、そのためには具体的にどうすればよいのでしょうか。

 「はてな?」には、“知っているつもり”から生まれるものと、“はじめて知ったこと”から生まれるものがあります。つまり、既知と未知からの「はてな?」です。
 既知からの場合、子どもはよく「知ってる!」と言います。しかしそれは、「知っている」だけで「分かっている」わけではないのです。そこで、認識のズレに気づかせるはたらきかけから「はてな?」を生み出しましょう。
 一方、未知からの場合は、「あっ!」と驚く事象提示から「えっ、どうして?」を引き出すはたらきかけがポイントになります。例えば「ビール一杯30万円」の看板を提示し「あっ!」と言わせます。「どこにあるのかな?」というはたらきかけから、交通事故がいちばん多い交差点に目を向けさせます。「看板が立つ交差点にはなぜ交通事故が多いのか?」「交差点に交通事故を防ぐ工夫はあるのか?」といった追究が生まれるでしょう。

―本書でも「新聞術」が詳しく紹介されていますが、社会科では授業で新聞づくりをすることが多いと思います。ズバリ、新聞づくりを成功させるための指導のコツを教えてください。

 新聞づくりを成功させるコツは「型」を教えることです。私の場合は、新聞社の定石に基づいた「型」を教えます。具体的には次のように指導します。

@新聞社の定石に基づいたレイアウト(割り付け)用紙を用いて、「型」を学ぶ。
A手本となる社会科新聞を読んで、文字や内容の「読みやすさ」「おもしろさ」を学ぶ。
B手本をまねて書いてみる。

 「型」が身につけば、新聞づくりの回を重ねるごとにオリジナリティが生まれてきます。新聞づくりの定石という「型」が身について、その子なりの「型破り」な新聞ができるのです。

―本書では、詳細な具体例とともに、板書案から指導案をつくることが提案されています。それはなぜでしょうか。

 福島大学附属小学校勤務時に、多くの教育実習生とかかわりました。その実習生の授業指導をきっかけに板書案から指導案をつくるようになりました。
 実習生は多くの時間をかけて指導案をつくります。実習授業では、目の前の子どもの見方や考え方よりも指導案優先になりがちです。いわゆる教師主導型の授業です。教師主導型から子ども主体のアクティブな授業へ転換するにはどうしたらよいか。実習生と共に悩みました。その答えが「板書案から授業案へ」でした。
 授業構想時に学級の子ども一人ひとりを思い浮かべながら「あの子だったらこう考えるだろう」「ここではこれを押さえた」といったことを黒板に書いては消し、書いては消し…の作業を繰り返します。最終の板書案には、ねらいに迫る道筋が「子どもの見方や考え方」で紡がれ、黒板一枚が「学びの物語」となって表されます。板書案ができれば、あとは指導案として文字に起こすだけです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 本書執筆時に教職28年目を迎えました。幸せなことに、学級担任を28回連続でさせていただいています。28回の出会いで、教え子たちからは星の数以上のことを学ばせてもらいました。まだまだ、子どもたちとの学び合いは続きます。
 本書は、大好きな子どもたちと大好きな社会科を柱に学級担任を続ける中で拾い集めた宝物を書き表したものです。本書を「子ども大好き!」「社会科大好き!」と笑顔いっぱいで子どもたちに対峙する先生方の傍に置いていただければうれしいです。

(構成:矢口)
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