著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
感じて・考えて・伝え合う![特別支援教育]教科学習
茨城大学教育学部附属特別支援学校 副教務主任廣木 聡
2015/12/11 掲載
今回は、ご執筆いただいた茨城大学教育学部附属特別支援学校から、廣木聡先生に、新刊『<特別支援教育>1から始める教科学習 「感じる・考える・伝え合う」授業づくり』について伺いました。

廣木 聡ひろき さとし

茨城大学教育学部附属特別支援学校 副教務主任 兼 研修部長
1971年生まれ
1996年 千葉大学大学院文学研究科行動科学専攻 修了
1997年 茨城県立水戸養護学校
2000年 茨城県立大宮高等学校
2003年 茨城県立水戸聾学校
2009年 茨城大学教育学部附属特別支援学校
【研究分野】
特別支援学校における授業実践研究
特別支援学校,特別支援学級におけるICT活用実践研究
通常学級にいる配慮が必要な子供たちへのICT活用実践研究

―本書は,特別支援学校で「感じる・考える・伝え合う」教科の授業づくりについてまとめられていますが,「感じる・考える・伝え合う」授業とは具体的にどのようなものでしょうか?

皆さんが美しい写真を見た時,心が揺り動かされ,その写真の背景に思いを巡らせ,その気持ちを誰かに伝えたいと思うのではないでしょうか。そんな感覚や思考,言葉のやり取りを子供たちに促し,生きる力の育成につなげる授業を,私たちは「感じる・考える・伝え合う」授業だと考えています。本書では「子供たちの心を揺り動かすような場面設定や教材の工夫をし,子供たち自身がその場面の進展や問題解決のために試行錯誤して,友達や教員とやり取りをする。」そのような授業例を,パレットのようにたくさん紹介しています。

―なぜ,今「感じる・考える・伝え合う 授業づくり」なのでしょうか?

近年の本校の子供たちを見ていると「指示を待って行動することが多い。」「読み書き計算はできるが生活に結びつかないことが多い。」そのような傾向があります。子供たちが生きる力を学び取ってほしいと,教員みんなで議論して考え出した結果が「感じる・考える・伝え合う」授業です。感覚やイメージを伴いながら学んだことを生活の中で活用し,主体的に行動できることが大切で,それが生きる力につながると考えました。前述のような子供たちの傾向は,多くの特別支援学校でも課題となっているようです。本書がその解決の一助となれば幸いです。

―本書では数々の楽しい指導例(展開例)も取り上げられていますが,特におススメの活動をいくつか紹介ください。

「全部です。」と言いたいところですが,それではお答えになりませんので,本校の特徴的な取り組みを紹介させていただきます。平成26年度は「感じる・考える・伝え合う 授業づくり」の実践研究対象を小学部,中学部,高等部ともに体育で統一しました。年間通して,研修会や相互授業参観を行い,茨城大学の先生を始め,障害児教育や体育を専門とする先生方からアドバイスをいただきながら,各部の教員が意見交換をしてより高いレベルの授業実践を目指しました。その時の授業実践がそのまま本書で紹介されております。4つの体育の授業例がおススメです。

―発達段階表などの資料も充実しているようですが,その活用方法をどうぞ教えてください。

アセスメント表にざっと目を通して,どのように子供たちが発達していくのかをつかむとよいかと思います。現在の姿だけでなく,前後の様相を知ることは授業づくりに大変役に立ちます。アセスメント表に○や△をつけていくとその子のおおまかな発達段階が見えてきます。すでにできている項目も,まだできていない項目も考えながら,学習課題や教材を工夫すると子供たちがのってくる授業になるでしょう。本書の授業例には,始めに対象となる発達段階が明記されておりますので参考にされてください。

―最後に障害のある子への指導に取組まれているいる全国の先生方へメッセージをお願いいたします。

本校では,本書のタイトルになっている「感じる・考える・伝え合う 授業づくり」のテーマのもと,子供たちの成長を願い,私たち教員が一丸となって授業づくりの実践研究を重ねてまいりました。本書は,本校教員の熱い話し合いの結晶であり,全国で特別支援教育に携わっておられる先生方へのご提案でもあります。ご一読いただき,忌憚のないご意見ご感想をお寄せいただければ幸いです。知的好奇心を刺激し子供たちが夢中になるような,本当の意味での楽しい授業づくりに一緒に取り組んでいきましょう。

(構成:佐藤)

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