著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アクティブ・ラーニングにつながる読書活動・言語活動の秘訣とは?
佐賀県唐津市立木小学校長古川 元視
2015/9/24 掲載

古川 元視ふるかわ もとみ

佐賀県唐津市立木小学校長。佐賀県公立小学校教諭、佐賀県教育庁学校教育課指導主事、文部科学省地方教育行政実務研修などを経て、平成23年度から現職。国立教育政策研究所「全国的・総合的学力調査」企画委員、及び「全国学力・学習状況調査問題」作成・分析委員などを歴任。現在は“子どもを主体とした学校創り・楽しくて力が付く授業づくり”を中核にして、実践を重ねている。

―本書には新しい読書活動が提案されていますが、サブタイトルにある「文章と本をつなぐ」とはどういうことを示しているのでしょうか。

 アクティブ・ラーニング時代を迎えて、読書活動も改革していく必要があります。自ら調べ、考えを高めるために読書活動を多様化する一方で、定着を図るために厳選することも重要です。
 単元展開は、読書プロセスに応じて、読書目的(学習課題)や読書(学習)計画を立て、検索・選書・解釈・活用をしたり、製作・交流・評価をしたりすることが求められます。したがって、教材文だけではなく、目的に応じて多様な本(資料)を使うことが重要です。例えば、

  • 同一作者や著者の本を読む
  • 同一のテーマの本を読む
  • シリーズを読む
  • 同じ構造の本を読む

などです。本書ではそのような文章と本の多様なつなぎ方を提案しています。

―また、文章と本をつなぐ授業にするために教師が意識しなくてはならないことはどんなことですか。

 単元を構想する時に、従来は、教材文だけを教材研究していました。それが、教材文はもちろん、使う本までの教材研究を行うことが必要になってきます。本といっても、教科書以外の資料になりますから、学校図書館等の本、リーフレットやパンフレット、映像など多様な資料が対象になります。それらから、指導目標にあった本を選択していくのです。ですから、教師も生活の中にある多様な本に関心を持つ必要があります。

―本書には学校図書館の活用法の他、言語活動で使えるワークシートが多く収録されています。効果的な使い方を教えて下さい。

 従来のワークシートは、穴埋めであったり、吹き出しであったりして、アクティブ・ラーニングの観点からすると、不都合な面が多くありました。そこで、編集者である井上一郎先生が提唱されている3種類のワークシートを基本に考えました。
 3種類のワークシートとは、

  • 思考操作や言語操作が可能なワークシート
  • 基本的な知識や技能を整理したポイントシート
  • 単元や単位時間の中で身に付いた力を振り返るチェックシート

です。それらをできるだけ多く収録しました。この3種類の観点ごとに、収録しているワークシートを見ていただくと、ワークシートを作成するポイントが明らかになってくると思います。

―授業の後も子どもが自ら本を手に取るようにするために、教師はどんな環境を準備すればいいのでしょうか。

 教室の学級文庫を充実させたり、学校図書館などの本を教室に持ってきたりして、いつでも子どもたちが本を手にするという環境を作ることが大切です。また、学校図書館を子どもたちが主体的に読書をする、調べることができるように改造することも重要です。(詳細は、井上一郎編著『思考力・読解力アップの新空間!学校図書館改造プロジェクト 図書館フル活用の教科別授業アイデア20』をご覧ください。)

―最後に、全国で国語を教える先生に向けてのメッセージをお願いいたします。

 これから、アクティブ・ラーニング時代を迎えます。求められる読解力や読書活動が大きく変わってきています。従来のように、教室や教科書に閉じるような授業ではグローバルな能力は身に付きません。教科書の文章を生かしながら、本へとつないでいく読書活動を展開することで、読解力を育成する必要があります。
 本書は、そのような課題に正面から応えたものです。多くの先生方が本書を手に取り、授業が改善され、子ども一人一人に確実に力が身に付くことを願っています。

(構成:木山)
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