著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもの背景を知ること、それが支援の第一歩です
北海道教育大学教育学部釧路校講師戸田 竜也
2015/9/11 掲載

戸田 竜也とだ たつや

北海道教育大学教育学部釧路校講師。
1976年北海道生まれ。日本福祉大学卒業。埼玉大学大学院教育学研究科修了。2007年より現職。専攻は特別支援教育、教育福祉。北海道公立学校スクールカウンセラー、釧路市教育委員会特別支援教育専門家チーム巡回相談員として、小・中・高校を訪問してカウンセリング及びカンファレンスを実施している。

―「特別な教育的ニーズ」をもつ子どもとは、障害のある子どもたちのことをさすのでしょうか。

 「特別な教育的ニーズ」をもつ子どもとは、障害のある子どもを含みますが、それに限定されるものではありません。本書では、障害の他、病気、不登校、貧困、虐待、社会的養護、家族問題を抱える子どもたちの事例を取り上げていますが、このような状況にある子どもたちを広く含む概念です。この子どもたちは、何らかの支援がなければ教育・学校から排除される可能性があり、その「ニーズ」をしっかり捉えることが学校には求められています。

―スクールソーシャルワーカー等と連携して対応すべきケースであっても、自校に専門員が配置されていないことも多いと聞きます。そのようなとき、学級担任はまずどうすればよいのでしょうか。

 まず、特別支援教育コーディネーターや学年団等、職場の同僚にケースの内容を伝えて「複数の教員で情報を共有する」ことが大切です。ケースによっては、担任1人で対応するには限界があり、また判断を誤ってしまう可能性もあります。同僚は、担任が気づかなかった子どもの別な一面を知っていたり、過去に類似のケースに対応した経験をもっているかもしれません。学校内の複数の目と手によってケースに取り組むことが、子どもにとっても、学校にとってもよりよい対応を生み出す原動力になります。

―先生は、スクールカウンセラーとして毎週小・中学校をまわっていらっしゃるそうですね。その中で現場の先生からよく受ける質問と、それに対するアドバイスをぜひ教えていただけますか。

 授業中に落ち着きがない子ども、精神的に不安定な子ども等、先生方から見て「気になる」言動がある子どもについて「どのように理解したらよいか」という質問が多く寄せられます。言動の背景にある「子どもなりの理由」がわからずに、対応方法にも悩まれています。本書でも示しましたが、子どもの言動の背景には多様な要因が考えられ、またそれらが複合的に重なり合っている場合もあります。子ども理解の仮説を立てて支援を試みることから対応が始まりますが、くわしくは本書を参考にしてください。

―本書では、学校外の専門家との連携や協働に関してもくわしくまとめられていますね。外部との連携や協働を効果的なものにするために、日ごろ心がけておくべきことなどありますでしょうか。

 地域にある専門機関の種類や学校環境等によって異なりますが、専門機関の担当者と「顔の見える関係」をつくっておくことが効果的な連携・協働を生み出します。「児童相談所の福祉士」から「児童相談所の福祉士の○○さん」、「保健師」から「保健師の○○さん」というように、職名だけではない「人と人とのつながり」をつくっておくことによって、ちょっとしたことでも互いに連絡を取り合い相談することができ、また緊急時にスムーズに連携・協働が図れるようになります。

―最後に、全国の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 私はスクールカウンセラーや巡回相談員として学校を訪問しながら、「無限界性」と表現されるような状況下で日々懸命に働いている先生方の応援ができないかと考えてきました。本書は、微力ではありますがそのような先生方を応援し、結果として子どもの最善の利益が保障されること、インクルーシブ教育が進められることを願い刊行しました。
 本書を教育実践を進める上での参考にしていただければ幸いです。

(構成:木村)
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