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授業は、一言で表すと「学び力」をアップさせるためにあります。「学び力」をもう少し詳しく言うと、「認識する力」や「思考する力」を身に付けていくことです。これらの力を日々伸ばしていくのにとても大切なのが「発問」です。つまり「発問」は、子どもたち一人ひとりの「わかる」「できる」「考える」力を育むための大変重要な鍵を握っているのです。
私たち教師は、子どもたちの「学び力」を高めるために、さまざまな働きかけをしています。私は、その働きかけ全てを「発問」だととらえています。教師は、子どもを動かそうとするとき、必ずといってよいほど声を発します。その教師の投げかけを四つの「発問」に分類し、効果的な「発問」ができるように実践しています。大まかな授業の流れに合わせて、四つの「発問」について紹介します。
まずは「話題提示的発問」。子どもにやりたい・考えたいと思わせるときに使う「発問」です。
つぎに「指示的発問」。子どもが主体的に動けるようにするための「発問」です。
三つ目は「確認的発問」。子どもが思考する上で、重要な情報を押さえるときに発する「発問」です。
最後に「思考促進的発問」。子どもを深い思考の世界に誘っていく「発問」です。
「発問」は、「学び力」をアップさせるためにあると先ほど述べました。そのためには、子どもがフルに考えたり説明したり書いていたりしなくてはなりません。「発問」が有効に働いているかどうかは、子どもの表情や動きを見ていればわかります。
例えば、国語の物語の授業で考えてみましょう。
「はい、○○ページを開けてください。今日は、この場面を読んでいきますよ。」
このような投げかけで、何人の子がページを開いてくれるでしょうか。おそらく「早く開きなさい。開いていないのは、あなただけですよ。」と思わず注意してしまう方向にいってしまうでしょう。
私は、次のような「確認的発問」をしていきます。
「さあ、これから『モチモチの木クイズ』をするよ。きのうの場面から出すよ。では、第一問!!」
こんなふうに働きかけるだけで、子どもたちの瞳は輝き出します。やりたい気もちを高めることができれば、どんどん子どもたちは考えはじめます。表現し出します。子どもが動くか動かないかが、「発問」の善し悪しを決定づけます。
「発問」をするときにまず考えておかなければならないのは、子どもにやりたい・考えたいという気もちをもたせることができるか、このことを常に意識しておく必要があります。そのために教材研究の過程で、発問を吟味し前もって準備しておきます。その上で、タイミングを見計らいながら出すようにしていきます。機械的に「発問」をしてはいけません。子どもの表情を見ながら、「いま出せば子どもは動き出す」という瞬間をとらえて「発問」するようにします。
そのタイミングの一例を紹介しましょう。物語「おてがみ」の授業シーンです。玄関の前で二人が腰を下ろしている挿絵を黙って貼ります。
「あっ、一番最初に出てきたやつだ。」「そうだ、そうだ。」
子どもがつぎつぎにつぶやきはじめます。動き出してきた証拠です。でも、ここではまだ「発問」しません。十分に課題意識が生まれていないからです。少し間を取ってから、最後の場面のやはり二人が腰を下ろしている挿絵を貼ります。
「同じ絵でしょ?」「最後のだよ」「教科書見てよ。やっぱり最後だよ」
最初と最後の挿絵が同じか違うかを考えはじめた瞬間をとらえて「発問」します。
「さすがだね、全く同じなのによくわかったね。」「えっ、先生違ってるよ」「どこがですか?」
こうしたやりとりを通じて、子どもたちは、思考の翼を拡げていくのです。
子どもにとって、学校生活の中の大半を占めているのが授業です。この時間が充実するかしないかは大きな問題です。教師が、教材研究で「発問」内容を吟味・検討し、実際の授業の中で、子どもの動きを見ながら「発問」すれば、必ず子どもたち一人ひとりの「学び力」は、飛躍的にアップしていきます。教師も子どももわくわくする授業を一緒に創り出していきましょう。