著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
たった1つのスイッチで広げる子どもの世界
国立特別支援教育総合研究所総括研究員金森 克浩
2014/11/28 掲載

金森 克浩かなもり かつひろ

国立特別支援教育総合研究所 教育研修情報部 総括研究員。

―本書は「マジカルトイボックス」での活動から生まれたとのことですが、「マジカルトイボックス」とはどのような団体なのでしょうか。

マジカルトイボックスというのは東京都立けやきの森学園の前身である「東京都立府中養護学校」で行われた保護者と教員の有志の研究会が始まりです。「障がいが重くてもコミュニケーションしているはず、何とかそれを豊にできないだろうか」という考えのもとにAAC(拡大代替コミュニケーション)の考えを広く普及させようと始まったボランティア団体です。現在の活動の様子は以下のWebサイトをご覧下さい。

―先生が工夫しておつくりになったスイッチやおもちゃを手にした子どもたちの様子を教えてください。

マジカルトイボックスで大切にしているのは「できる」「わかる」「楽しめる」です。子どもたちがスイッチトイで遊ぶことで自分が「できる」事を実感し、外へ働きかけることが「わかり」他の人とのコミュニケーションを「楽しめる」ようにすることです。
スポンジボールを飛ばすおもちゃにスイッチを付けてピッチャーの役をやってもらった生徒がいます。しかし、彼はそのボールを自分の方に向けて投げてスイッチを操作し、自分の身体に当たると、とても大きな声で笑って喜んでくれました。外界に働きかけることがなかなかできない彼がこんなに笑うことはありませんでした。能動的な活動をどう作っていくかがスイッチトイのポイントだと思います。

―「改訂版」とのことですが、前作から今回はどのような点を改訂されたのでしょうか。

子どもたちが楽しめるおもちゃも、長く売られることはなかなかなく、前述のスポンジボールのおもちゃのように、すぐに手に入らなくなる物も多くあります。そこで、前作で載せていた機器の中で、いまは手に入れることがむずかしい物を削除しました。その代わりに、最近流行になっているタブレット端末に関係する入力装置や補助装置などを追加しています。

―本書でぜひおすすめ!と思われる作品をどうぞ教えてください。

信州スイッチラボの杉浦先生が開発した「コトダマ」ですね。
スイッチという概念を破って、転がるだけで音が出るおもちゃです。支援機器でも、スイッチ玩具でもよく使われる物は作りがシンプルです。そうすることで使う人のイメージが広がりますし、様々な場面での利用方法が生まれてきます。信州スイッチラボでも定期的に製作会をしていますのでこちらのWebサイトもぜひご覧下さい。

―最後に本書に興味をもってくださった全国の先生方へメッセージをお願いします。

本書はマジカルトイボックスの活動から生まれました。できるだけわかりやすいように書いていますが、やはり具体的な作り方や使い方についてはイベントに参加してもらうのが1番です。年に2回のイベントを開いていますので、ぜひ時間を作ってご参加下さい。イベントの案内はWebに載っています。

(構成:佐藤)

コメントの受付は終了しました。